学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ28P108

理由で解く 柔道整復師

QJ28P108 柔道整復理論

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問108
問題
15歳の男子。柔道の試合中に強引に背負い投げをかけた際、肩関節外転外旋が強制され肩関節を脱臼した。初めての脱臼だという。整復固定後、この患者への説明として適切なものはどれか。
選択肢
1 「自分で固定を外して入浴可能です」
2 「明日から肩の可動域訓練を行います」
3 「競技復帰は3週後とします」
4 「再発する可能性があります」
解答
正解4(「再発する可能性があります」)
解説

柔道の背負い投げで外転・外旋が強制された初回の肩関節前方脱臼。整復・固定を終えた直後にまず共有すべきなのは「再発しうる」という見通しで、正解は4

外転・外旋の強制は前方脱臼の典型的な受傷機転で、上腕骨頭が関節窩の前下方へ押し出される過程で関節唇・関節包が関節窩前下縁から剥がれる損傷(バンカート損傷)を残しやすい。受け皿の前下方が壊れたままだと、同じ肢位で再び外れやすくなるため、10代の初回脱臼は再発率が高いことが知られている。だからこそ最初の説明では、①再発しうること、②固定と段階的な運動療法を守ることが再発を減らす手段であること、③万一外れたら自分で戻さずすぐ来所すること、までをセットで伝えたい。整復後は内転・内旋位を基本におおむね3週間の固定を行い、その後に可動域訓練・筋力強化と進め、柔道のような接触競技への復帰は数か月単位で計画する。反復するようなら手術適応の判断のために医師の診察を勧める。

✗ 1. 誤り
「自分で固定を外して入浴可能です」
自己判断で固定を外すと、腕が体幹から離れて外転・外旋が入り、修復途上の前方の関節包・関節唇に再び張力がかかる。入浴は固定を着けたままシャワーや清拭で対応し、どうしても外す必要があるときは、肘を体幹につけたまま前腕を支える方法を施術者が実演して指導する。
✗ 2. 誤り
「明日から肩の可動域訓練を行います」
損傷部が落ち着かないうちに肩を動かすと再脱臼を招きやすい。固定期間中は手指・手関節・肘の自動運動と肩周囲の等尺性収縮でこわばりと筋萎縮を防ぎ、肩の可動域訓練は固定終了後に、屈曲・内旋から始めて外転・外旋を最後に回す順序で進める。
✗ 3. 誤り
「競技復帰は3週後とします」
3週は固定期間の目安であって競技復帰の目安ではない。固定終了後に可動域・筋力を回復させ、組み手や受け身の動作が痛みなくできることを確認しながら段階的に戻すため、接触競技では通常もっと長い期間を要する。期限を先に約束せず、到達目標で区切る説明をしたい。
✓ 4. 正しい
「再発する可能性があります」
若年者の外傷性前方脱臼は、関節窩前下縁の軟部組織損傷が残るため再発率が高い。再発しうることと、その確率を下げるために固定・運動療法・復帰時期の順守が意味を持つことを最初に伝えておくと、患者が指示を守る動機づけになる。
ポイント
  • 肩関節前方脱臼の受傷肢位は外転・外旋。背負い投げ・投球・受け身の失敗が典型。
  • 再発の解剖学的な理由は関節窩前下縁の関節唇・関節包の剥離(バンカート損傷)が残ること。
  • 年齢が若いほど再発率が高い。10代の初回脱臼は特に注意して説明する。
  • 固定は内転・内旋位でおおむね3週。固定中も手指・肘の運動と等尺性収縮は続ける。
  • 復帰は期間ではなく到達目標で判断。再脱臼したら自分で整復せず受診・来所を必ず伝える。
比較表
時期目安やること避けたいこと
固定期受傷〜約3週内転・内旋位での固定、手指〜肘の自動運動、肩周囲の等尺性収縮自己判断で固定を外す/外転・外旋位をとる
可動域回復期固定終了後屈曲・内旋から段階的に拡大、外旋は最後に痛みを押しての他動的な外旋強制
筋力強化期可動域回復後腱板・肩甲骨周囲筋の強化、フォームの見直し筋力が戻る前の実戦的な負荷
競技復帰期数か月単位受け身・組み手動作の確認、段階的復帰期間だけを根拠にした一律の復帰
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