学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §20 各論(脱臼) 下肢 / QJ28P098

理由で解く 柔道整復師

QJ28P098 柔道整復理論

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問98
問題
股関節後方脱臼の合併症で誤っているのはどれか。
選択肢
1 大腿骨頭壊死
2 大腿骨頸部骨折
3 大腿神経損傷
4 外傷性股関節炎
解答
正解3(大腿神経損傷)
解説

誤っているのは3です。股関節後方脱臼で問題になる神経損傷は坐骨神経であり、大腿神経ではありません。

股関節脱臼の大半は後方脱臼で、股関節屈曲・膝屈曲位の大腿長軸に強い軸圧が加わったとき(自動車のダッシュボード損傷など)に、骨頭が寛骨臼の後方へ抜けます。患肢は屈曲・内転・内旋位で弾発性固定され、短縮がみられます。後方に転位した骨頭のすぐ近くを坐骨神経が走るため、その圧迫・牽引による麻痺(下腿外側・足背の感覚障害、下垂足)が代表的合併症です。大腿神経は骨盤前面の腸腰筋上を走るので、後方脱臼で直接損なわれる位置関係にはありません。

なお前方脱臼は恥骨上(腸恥)脱臼と閉鎖孔脱臼の2型に分かれます。共通するのは外転・外旋で、屈曲か伸展かは型によって異なり、恥骨上型は伸展位、閉鎖孔型は屈曲位をとります。「前方=屈曲」と一義に覚えず、共通項(外転・外旋)と型で変わる要素(屈曲/伸展)を分けて整理してください。

✓ 3. これが誤り(答え)
大腿神経損傷
後方に抜けた骨頭が傷つけるのは後方を走る坐骨神経です。大腿神経は前方を走るため、後方脱臼の代表的合併症にはあたりません(前方脱臼では大腿血管・神経への影響が問題となります)。
✗ 1. 合併しうる(答えではない)
大腿骨頭壊死
関節包を通る血管や円靱帯からの骨頭の血行が絶たれるため、整復が遅れるほど壊死の危険が高まります。数か月から数年後に発症することがあり、長期の経過観察が必要です。
✗ 2. 合併しうる(答えではない)
大腿骨頸部骨折
脱臼を起こすほどの強大な外力では、寛骨臼後縁骨折・骨頭骨折・頸部骨折を伴う脱臼骨折となることがあります。
✗ 4. 合併しうる(答えではない)
外傷性股関節炎
関節軟骨の損傷や骨頭壊死を経て変形性股関節症へ進み、疼痛と可動域制限を残すことがあります。

対応としては、骨頭壊死の危険を下げるため整復の緊急性が高いことを前提に、坐骨神経支配領域の感覚・運動を整復前後で記録し、速やかに医師へつなぎます。

ポイント
  • 股関節脱臼は後方脱臼が大多数。屈曲・内転・内旋位で弾発性固定される。
  • 前方脱臼は恥骨上(腸恥)脱臼と閉鎖孔脱臼に分かれる。共通するのは外転・外旋で、恥骨上型は伸展位、閉鎖孔型は屈曲位と、屈曲/伸展は型によって異なる。
  • 合併しやすい神経損傷は坐骨神経(下垂足、下腿外側〜足背の感覚障害)。
  • 大腿神経は骨盤前方を走るため、後方脱臼の典型的合併症ではない。
  • 骨頭壊死は整復までの時間に左右される=緊急性が高い。寛骨臼後縁・骨頭・頸部の骨折を伴う脱臼骨折や、後の外傷性股関節炎(変形性股関節症)も合併しうる。
比較表
項目後方脱臼前方脱臼
頻度多い(大多数)まれ
肢位屈曲・内転・内旋外転・外旋(恥骨上型は伸展位、閉鎖孔型は屈曲位)
受傷機転屈曲位での軸圧(ダッシュボード損傷)股関節外転・外旋の強制(伸展位で受ければ恥骨上型、屈曲位で受ければ閉鎖孔型)
神経・血管坐骨神経損傷大腿神経・大腿血管への影響
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