学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §18 各論(脱臼) 頭部・体幹 / QJ28P096

理由で解く 柔道整復師

QJ28P096 柔道整復理論

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問96
問題
顎関節前方脱臼で正しいのはどれか。
選択肢
1 関節円板は関節窩より逸脱する。
2 下顎頭は関節結節の後方に位置する。
3 外側翼突筋は弛緩する。
4 顔面神経麻痺を合併する。
解答
正解1(関節円板は関節窩より逸脱する。)
解説

顎関節前方脱臼では、下顎頭が関節結節を越えて前方へ移動し、下顎頭に付着する関節円板も一緒に下顎窩(関節窩)から前方へ逸脱する。

顎関節は蝶番運動と滑走運動を組み合わせた特殊な関節で、大きく開口すると下顎頭は下顎窩から前方へ滑り出て、関節結節の頂上付近まで移動する。ここを越えたところで咬筋・側頭筋などの閉口筋が急に収縮すると、下顎頭は結節の前方に引き込まれたまま戻れなくなる。これが前方脱臼で、大あくび、長時間の歯科治療、嘔吐などが引き金になる。関節円板は下顎頭の周囲と外側翼突筋上頭に結びついて下顎頭と一体に動くため、下顎頭が前方へ抜ければ円板も下顎窩から外れる。臨床像は開口したまま閉じられない弾発性固定、オトガイの前方突出、耳の前方(下顎窩部)の陥凹で、両側性なら正中偏位はなく、片側性なら健側へ偏位する。咬合は、下顎が前下方へ転位するため上下歯列が離開し、前歯部が大きく開いたままになる(前歯部開咬)。整復は両母指を下顎の臼歯部に当てて下方へ押し下げ、緊張した筋を伸ばしてから後方へ導く(ヒポクラテス法)。整復後は再脱臼しやすいので、包帯で開口を制限し、大あくびや硬い物の丸かじりを数週間避けるよう具体的に指導する。

✓ 1. 正しい
関節円板は関節窩より逸脱する。
関節円板は下顎頭と結合して一体に動くため、下顎頭が関節結節を越えて前方に転位すると、円板も下顎窩から前方へ逸脱する。整復では下顎頭を下方へ引き下げてから後方へ導くことで、円板も一緒に元の位置へ戻る。
✗ 2. 誤り
下顎頭は関節結節の後方に位置する。
「前方脱臼」の名のとおり、下顎頭は関節結節を越えて前方に位置する。関節結節の後方=下顎窩の中は下顎頭が本来いる場所で、そこに留まっているなら脱臼していない。耳の前を触ると本来下顎頭がある部分が陥凹し、その前方に骨性の膨隆を触れる。
✗ 3. 誤り
外側翼突筋は弛緩する。
外側翼突筋は下顎頭と関節円板を前方へ引く筋で、脱臼時は緊張・攣縮した状態にある。この緊張と閉口筋の収縮が下顎頭を結節の前方に固定するため、そのまま後方へ押しても戻らない。まず下顎を十分に押し下げて筋の緊張を解いてから後方へ誘導する、という整復手順の根拠がここにある。
✗ 4. 誤り
顔面神経麻痺を合併する。
顎関節前方脱臼で顔面神経麻痺を合併するのが通例ということはない。位置関係でいえば、顔面神経本幹は茎乳突孔から出て下顎頸の後方を通り耳下腺へ入るので、顎関節にはむしろ近接している(側頭枝は頬骨弓を越えて顎関節の直前を走る)。それでも前方脱臼で麻痺を来さないのは、下顎頭が神経から遠ざかる前方へ移動するからで、後方の神経を圧迫する方向には転位しないためである。顔面神経損傷を警戒するのは脱臼ではなく、下顎頸部(関節突起)骨折や関節部への直達外力を受けた場合、および同部の手術のときである。前方脱臼で実際に注意すべきは習慣性脱臼への移行と、整復操作時の術者の母指の保護(歯列で挟まれないようガーゼなどで覆う)である。
ポイント
  • 前方脱臼=下顎頭が関節結節を越えて前方へ。関節円板も下顎頭とともに下顎窩から逸脱する。
  • 外側翼突筋は緊張・攣縮している。だから「下方へ押し下げてから後方へ」の順で整復する(ヒポクラテス法)。
  • 両側性は開口位で正中偏位なし、片側性は健側へオトガイが偏位する。
  • 弾発性固定、下顎窩部の陥凹、閉口不能、流涎、会話困難が典型所見。
  • 咬合は前歯部が離開する(前歯部開咬)。下顎が前下方へずれるため上下歯列は離開し、近づくとすれば臼歯部側で、前歯は開いたまま閉じられない。「開咬=前歯が開く」の向きを取り違えない。
  • 顔面神経本幹は茎乳突孔(下顎窩のすぐ後方)から出て下顎頸の後方を通るため顎関節に近い。ただし神経障害が問題になるのは前方脱臼ではなく、下顎頸部骨折・関節部への直達外力・同部の手術のとき。
  • 整復後は包帯で開口制限を行い、大あくび・硬い物の丸かじりを避けるよう指導する。反復するようなら医科(口腔外科)への紹介を検討する。
比較表
項目両側性前方脱臼片側性前方脱臼
頻度多い比較的少ない
オトガイの位置正中のまま前方へ突出健側へ偏位
咬合下顎が前下方へ転位して開口位に固定され、上下歯列は離開し閉口できない。前歯部が大きく開いたままの前歯部開咬となり、上下が近づくとすれば臼歯部側で、前歯が接触することはない患側の臼歯部が開き、咬合がずれる(オトガイは健側へ偏位)。前歯部も患側寄りで離開する
陥凹両側の耳前部患側の耳前部のみ
整復両側同時、または片側ずつ患側を下方へ押し下げてから後方へ
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