学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §18 各論(脱臼) 頭部・体幹 / QJ26P089

理由で解く 柔道整復師

QJ26P089 柔道整復理論

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午後 問89
問題
胸鎖関節前方脱臼で正しいのはどれか。
選択肢
1 肩に対して後方への介達外力によって発生する。
2 筋緊張を避けるため頭部を健側に傾ける。
3 鎖骨中央部骨折との鑑別が必要となる。
4 変形を残すと大きな機能障害がみられる。
解答
正解1(肩に対して後方への介達外力によって発生する。)
解説

胸鎖関節前方脱臼は、肩に加わった後方への介達外力で鎖骨内端が前方へ押し出されて生じる。直達外力よりも介達外力によるものが多い。

胸鎖関節は体幹と上肢をつなぐ唯一の関節でありながら関節面の適合が悪く、関節円板と周囲靱帯(前・後胸鎖靱帯、肋鎖靱帯など)で支えられている。肩の外側から後方へ押される、あるいは転倒して肩の後面を打つと、鎖骨は第1肋骨あたりを支点にてこのように動き、内端が前上方へ飛び出す。これが前方脱臼である。患者は胸鎖乳突筋の緊張を和らげるため頭部を患側に傾け、患側の上肢を健側の手で支える姿勢をとる。整復自体は比較的容易だが整復位の保持が難しく、亜脱臼位が残ることが少なくない。ただし残存変形による機能障害は軽度にとどまることが多いため、無理に完全整復を追わず、機能回復を優先した固定と経過観察を行う。後方脱臼では大血管・気管の圧迫という重篤な合併があるため、呼吸苦や嚥下障害の有無は必ず確認する。

✓ 1. 正しい
肩に対して後方への介達外力によって発生する。
肩を後方へ押しつける外力が鎖骨を介して伝わり、第1肋骨を支点に内端が前方へ持ち上げられる。前方脱臼の典型的な発生機序である。
✗ 2. 誤り
筋緊張を避けるため頭部を健側に傾ける。
傾けるのは患側。患側に傾けると胸鎖乳突筋が短縮して弛緩し痛みが和らぐ。健側に傾けると同筋が引き伸ばされて疼痛が増強するので逆である。
✗ 3. 誤り
鎖骨中央部骨折との鑑別が必要となる。
鑑別すべきは同じ部位に変形・圧痛が出る鎖骨近位端(胸骨端)の骨折である。中央部(中1/3)骨折は変形の位置が明らかに異なり、鑑別対象にはならない。
✗ 4. 誤り
変形を残すと大きな機能障害がみられる。
整復位の保持は難しいが、亜脱臼位が残っても上肢の機能障害は軽度で済むことが多い。整容面の訴えに配慮しつつ、機能を優先した対応を選ぶ。
ポイント
  • 前方脱臼は肩への後方向きの介達外力で発生し、鎖骨内端が前上方へ突出する。
  • 患者は胸鎖乳突筋を緩めるため頭部を患側へ傾ける(患側に傾けるのが自然な逃避肢位)。
  • 鑑別は鎖骨近位端(胸骨端)骨折。中央部骨折とは変形部位が異なる。
  • 整復は容易でも保持が困難。残存変形による機能障害は軽度で、機能優先の固定と経過観察でよい。
  • 後方脱臼では気管・大血管圧迫の危険があるため、呼吸・嚥下状態の確認と速やかな医療機関搬送を行う。
比較表
項目胸鎖関節前方脱臼胸鎖関節後方脱臼
鎖骨内端の位置前上方へ突出後方へ陥凹(触れにくい)
主な合併の危険少ない(整容上の変形)気管・大血管の圧迫(緊急性が高い)
整復後保持困難だが機能障害は軽度整復後は比較的安定するが要精査
鑑別すべき骨折鎖骨近位端(胸骨端)骨折
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