学習トップ理由で解く 柔道整復師一般臨床医学 ▸ §21 臨床実地問題 / QJ28P045

理由で解く 柔道整復師

QJ28P045 一般臨床医学

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問45
問題
56歳の女性。8か月前から徐々に歩行時の疲れやすさを自覚し、1か月前から階段を昇れなくなり、洗髪時に腕を挙げるのが難しくなった。胸腹部に異常を認めない。上眼瞼部に浮腫性の淡い紫色の紅斑を認める。血液検査でクレアチンキナーゼ(CK)が1870U/L(基準 30~140)であった。最も考えられるのはどれか。
選択肢
1 結節性多発動脈炎
2 皮膚筋炎
3 強皮症
4 ベーチェット(Behçet)病
解答
正解2(皮膚筋炎)
解説

上眼瞼の浮腫性紫紅色紅斑(ヘリオトロープ疹)と、近位筋優位の筋力低下、著明なCK上昇がそろっており、皮膚筋炎が最も考えられる。

「階段が昇れない」「洗髪時に腕が挙げられない」という訴えは、いずれも大腿四頭筋・腸腰筋や三角筋といった近位筋の筋力低下を意味する。遠位筋が主に侵される末梢神経障害では、つまずきやすい・箸が使いにくいといった訴えになるため、この区別が診断の第一歩になる。CK1,870U/L(基準30〜140)という高値は筋線維の破壊を示し、筋炎の存在を裏づける。ここに上眼瞼の浮腫性紫紅色紅斑が加われば皮膚筋炎に特徴的な組合せとなる。手指の関節背面の角化性紅斑(ゴットロン徴候)、爪囲紅斑、V徴候・ショール徴候も併せて確認したい。皮膚筋炎は成人例で悪性腫瘍を合併する頻度が高く、間質性肺炎の合併は予後を左右するため、疑った時点で速やかに医療機関へつなぐことが最も重要な対応となる。柔道整復の施術対象となる運動器の愁訴と紛らわしいが、左右対称で近位優位の筋力低下と皮疹があれば、筋・骨格の局所治療ではなく医科受診を勧める。

✓ 2. 正しい
皮膚筋炎
上眼瞼の浮腫性紫紅色紅斑はヘリオトロープ疹と呼ばれる本症に特徴的な皮疹である。これに近位筋優位の筋力低下とCK高値が加わる組合せは皮膚筋炎を強く示唆する。成人例では悪性腫瘍の合併検索と間質性肺炎の評価が必須となるため、専門医への紹介を急ぐ。
✗ 1. 誤り
結節性多発動脈炎
中型動脈の壊死性血管炎で、発熱・体重減少・関節痛などの全身症状に加え、多発単神経炎、腎障害、高血圧、皮膚の網状皮斑や結節を呈する。神経障害は左右非対称で「どの神経が侵されたか」に沿った分布をとり、対称性・近位優位の筋力低下やヘリオトロープ疹は特徴ではない。
✗ 3. 誤り
強皮症
レイノー現象で始まり、手指から進む皮膚硬化、指尖潰瘍、嚥下障害、間質性肺炎を特徴とする。皮膚は「硬くなる」のであって浮腫性の紫紅色紅斑ではなく、CKが1,000U/Lを超えるような著明高値も典型ではない。
✗ 4. 誤り
ベーチェット(Behçet)病
再発性の口腔内アフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、結節性紅斑などの皮膚症状、ぶどう膜炎(前房蓄膿)を四主症状とする。症状が再発と寛解を繰り返す点も本例の経過と異なり、CK著明高値や近位筋の筋力低下は特徴ではない。
ポイント
  • 近位筋優位の筋力低下(階段昇降・上肢挙上の困難)+CK高値+特徴的皮疹=皮膚筋炎。
  • ヘリオトロープ疹(上眼瞼の浮腫性紫紅色紅斑)とゴットロン徴候(手指関節背面の角化性紅斑)が二大皮膚所見。
  • 成人発症例では悪性腫瘍の合併検索が必須。間質性肺炎の合併が予後を左右する。
  • 近位筋優位=筋原性、遠位筋優位=神経原性という大まかな仕分けが診断の入口。
  • この所見の組合せを認めたら局所の施術に留まらず、速やかに医療機関の受診を勧める。
比較表
疾患皮膚所見筋・神経所見その他
皮膚筋炎ヘリオトロープ疹、ゴットロン徴候近位筋優位の筋力低下、CK著明高値悪性腫瘍・間質性肺炎の合併
結節性多発動脈炎網状皮斑、皮下結節多発単神経炎(非対称)発熱・腎障害・高血圧
強皮症皮膚硬化、指尖潰瘍筋症状は軽度レイノー現象、嚥下障害、間質性肺炎
ベーチェット病結節性紅斑、痤瘡様皮疹特徴的な筋症状なし口腔・外陰部潰瘍、ぶどう膜炎
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