学習トップ理由で解く 柔道整復師一般臨床医学 ▸ §6 診察各論 触診 / QJ28P030

理由で解く 柔道整復師

QJ28P030 一般臨床医学

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問30
問題
腹部の触診で正しいのはどれか。
選択肢
1 胃癌では手で圧迫した時より放した瞬間に強い痛みを訴える。
2 健常者ではわずかに肝臓の上縁を触知できる。
3 汎発性腹膜炎では腹壁全体が板のように硬くなる。
4 胆嚢炎では左季肋部に強い圧痛がある。
解答
正解3(汎発性腹膜炎では腹壁全体が板のように硬くなる。)
解説

正解は3。汎発性腹膜炎では腹壁筋が反射的に強く緊張し、腹壁全体が板のように硬くなります(板状硬)。腹部触診の問題は「どの所見が、どの部位の、どんな病態を示すか」の3点セットで覚えます。

腹膜に炎症が及ぶと、その刺激で腹壁の筋が反射的に収縮して腹部を守ろうとします。これが筋性防御で、炎症が腹腔全体に広がった汎発性腹膜炎では腹壁全体が板のように硬くなります。同じ腹膜刺激徴候として、圧迫をゆっくり加えてから急に手を離すと痛みが強まる反跳痛(ブルンベルグ徴候)があり、これは腹膜炎や虫垂炎など炎症が腹膜に達したときの所見であって、特定の臓器の癌に固有のものではありません。触診では臓器の解剖学的な位置も重要で、胆嚢は右季肋部、脾臓は左季肋部、虫垂は右下腹部にあります。柔道整復師の施術中に、板状硬・反跳痛・持続する強い腹痛・発熱などに気づいた場合は、施術を中止して速やかに医療機関の受診につなげる判断が求められます。

✓ 3. 正しい
汎発性腹膜炎では腹壁全体が板のように硬くなる。
腹膜への炎症刺激で腹壁筋が持続的に反射性収縮を起こし、押しても沈まない板状硬(筋性防御の高度なもの)となります。消化管穿孔などで腹腔全体に炎症が広がった状態を示す重要なサインで、患者は膝を曲げて動かずにいることが多く、腹式呼吸も浅くなります。緊急手術を要することがあるため、直ちに医療機関へ搬送・紹介します。
✗ 1. 誤り
胃癌では手で圧迫した時より放した瞬間に強い痛みを訴える。
記載されているのは反跳痛(ブルンベルグ徴候)で、炎症が腹膜まで達したことを示す腹膜刺激徴候です。虫垂炎や腹膜炎で陽性となる所見であり、胃癌そのものに特徴的な触診所見ではありません。胃癌では心窩部の腫瘤を触れることや、進行例で左鎖骨上窩リンパ節腫大(ウィルヒョウ転移)を触れることがあります。
✗ 2. 誤り
健常者ではわずかに肝臓の上縁を触知できる。
肝臓の上縁は横隔膜に接して肋骨と肺に覆われているため、手で触れることはできず、位置は打診(濁音の上端)で判定します。触診で確認するのは下縁で、やせ型の人では深吸気時に右季肋下に1〜2cmほど触れることがあります。触知したら硬さ・辺縁の鋭さ・表面の性状・圧痛の有無を合わせて評価します。
✗ 4. 誤り
胆嚢炎では左季肋部に強い圧痛がある。
胆嚢は肝臓の下面、右季肋部(右上腹部)にあるため、圧痛が出るのは右季肋部です。右季肋部を圧迫しながら深く息を吸わせると、痛みのために吸気が途中で止まるマーフィー徴候が急性胆嚢炎の代表的所見です。左季肋部の圧痛や腫瘤は脾臓の病変を考えます。
ポイント
  • 板状硬(筋性防御が腹壁全体に及ぶ)=汎発性腹膜炎。緊急性が高く、直ちに医療機関へ。
  • 反跳痛(ブルンベルグ徴候)は腹膜刺激徴候であり、特定の癌の所見ではない。
  • 肝臓は下縁を触診し、上縁は打診で判定する。
  • 胆嚢は季肋部。マーフィー徴候=右季肋部圧迫+深吸気で吸気が止まる。
  • 触診所見は「所見名・部位・示す病態」の3点セットで覚えると取り違えない。
比較表
所見とり方・内容示す病態・部位
筋性防御・板状硬腹壁筋が反射的に緊張。高度になると腹壁全体が板状に硬い腹膜炎(汎発性では腹部全体)
反跳痛(ブルンベルグ徴候)ゆっくり圧迫し、急に手を離すと痛みが増す腹膜刺激徴候(虫垂炎、腹膜炎)
マーフィー徴候右季肋部を圧迫しながら深吸気させると痛みで吸気が止まる急性胆嚢炎(右季肋部)
マックバーニー点の圧痛右上前腸骨棘と臍を結ぶ線の外側1/3の圧痛急性虫垂炎(右下腹部)
肝下縁の触知深吸気に合わせて右季肋下で下縁をとらえる(上縁は打診)やせ型では1〜2cm触れうる。肝腫大では硬さ・辺縁を評価
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。