学習トップ理由で解く 柔道整復師必修問題 ▸ §9 上腕骨外科頸外転型骨折の診察および整復 / QJ28A005

理由で解く 柔道整復師

QJ28A005 必修問題

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午前 問5
問題
上腕骨外科頸外転型骨折の後でよくみられるのはどれか。
選択肢
1 骨化性筋炎
2 ズデック (Sudeck)骨萎縮
3 関節拘縮
4 阻血性壊死
解答
正解3(関節拘縮)
解説

上腕骨外科頸外転型骨折は高齢者に多く、骨癒合そのものは得られやすい一方で、固定と疼痛による肩の不動から関節拘縮を残しやすい。正答は3。

外科頸は大結節・小結節のすぐ遠位にあるくびれで、骨頭直下の解剖頸よりさらに遠位にあたる。骨頭を養う血行路は、前上腕回旋動脈から分かれた上行枝が結節間溝を上行し、解剖頸の高さで骨頭に入る経路が主体である。骨折線が外科頸にとどまる限り、この骨頭への進入部より遠位で折れることになるため骨頭側の血行は保たれやすく、阻血性壊死や偽関節は起こりにくい(血行が断たれるのは、進入部より近位で折れる解剖頸骨折)。なお前・後上腕回旋動脈の本幹そのものは外科頸の高さを走行しており(前上腕回旋動脈は外科頸の前面を横走し、後上腕回旋動脈は外側腋窩隙を通って外科頸後面を回る)、解剖学ではこの走行が問われる。転位の大きい外科頸骨折ではこれらの動脈が損傷されることもあるので、「外科頸なら血行は絶対に安全」と丸めて覚えないこと。実際に機能予後を左右するのは骨よりも肩関節周囲の軟部組織で、高齢者では固定期間中に関節包の癒着、腱板・三角筋の萎縮が短期間で進み、外転・外旋を中心とした可動域制限が残る。したがって固定中から手指・手関節・肘の自動運動を続け、疼痛が落ち着き次第、振り子運動など肩の運動を早期に開始して拘縮の芽を摘むことが治療の要点になる。

✓ 3. 正しい
関節拘縮
高齢者に多く、疼痛と固定によって肩が動かない期間が生じるため、関節包の癒着と筋萎縮から外転・外旋制限を残しやすい。この骨折で最も高頻度にみられる後遺症である。
✗ 1. 誤り
骨化性筋炎
筋内や関節周囲に大きな血腫を作る外傷、すなわち大腿部前面打撲や肘関節脱臼で典型的にみられる。上腕骨外科頸骨折で絶対に生じないわけではないが、代表的な後遺症とはいえない。
✗ 2. 誤り
ズデック (Sudeck)骨萎縮
現在は複合性局所疼痛症候群として扱われる病態で、コーレス骨折など前腕遠位端骨折や下腿・足部の外傷後に多い。強い疼痛、腫脹、皮膚色調・発汗の変化、X線での斑状骨萎縮が特徴。
✗ 4. 誤り
阻血性壊死
骨頭への血行路が骨折線で断たれる場合に問題となるもので、上腕骨では骨頭への血管進入部より近位で折れる解剖頸骨折が該当する。より遠位で折れる外科頸骨折では骨頭側の血行が保たれやすい。上肢・下肢では手舟状骨、距骨頸部、大腿骨頸部内側骨折が壊死の代表例。
ポイント
  • 外科頸は大結節・小結節のすぐ遠位のくびれで、骨頭直下の解剖頸よりさらに遠位。骨頭への栄養血管の進入部(解剖頸の高さ)より遠位で折れるため血行が保たれ、骨癒合は良好で壊死は起こりにくい。
  • 解剖の設問では別扱い。前上腕回旋動脈は外科頸の前面を横走し、後上腕回旋動脈は外側腋窩隙を通って外科頸後面を回る。動脈本幹は外科頸の高さを走ることと取り違えない。
  • 問題になるのは軟部組織。高齢者では固定中に急速に肩関節拘縮が進む。
  • 外転型では外転・外旋方向の可動域制限が残りやすい。
  • 固定中から手指・手関節・肘の自動運動を行い、疼痛に応じて振り子運動など肩の運動を早期に開始する。
  • 阻血性壊死は解剖頸骨折、ズデック骨萎縮はコーレス骨折とセットで区別する。
比較表
合併症典型的に起こる外傷機序のポイント
関節拘縮上腕骨外科頸骨折(高齢者)疼痛と固定による不動→関節包の癒着・筋萎縮
骨化性筋炎大腿部前面打撲、肘関節脱臼筋内血腫の器質化・骨化
ズデック骨萎縮コーレス骨折、下腿・足部外傷疼痛と自律神経の関与による斑状骨萎縮
阻血性壊死上腕骨解剖頸、手舟状骨、距骨頸部、大腿骨頸部内側骨折線が骨頭・骨片への栄養血管の進入部より近位を通り血行を断つ
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