学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ27P110

理由で解く 柔道整復師

QJ27P110 柔道整復理論

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午後 問110
問題
30歳の男性。スキー滑走中に転倒し、ストックのストラップに右母指が引っ掛かり受傷した。来所時右母指に疼痛、腫脹がみられた。最も困難な動作はどれか。
選択肢
1 キーボードを叩く。
2 鍵を回す。
3 ボールを握る。
4 瓶の蓋を開ける。
解答
正解2(鍵を回す。)
解説

ストックのストラップに母指が引っ掛かって受傷したという機転は、母指が橈側へ強制的に外転され、MP関節の尺側側副靱帯が損傷したこと(いわゆるスキーヤー母指)を示します。この靱帯は側方つまみの支点となるため、「鍵を回す」動作が最も困難になります。

ストラップに母指が引っ掛かったまま転倒すると、母指MP関節に大きな橈側外転(過外転)の力が加わり、これを制動している尺側側副靱帯が損傷します。断裂端が母指内転筋腱膜の上に翻転して挟まるステナー病変になると自然治癒が期待しにくく、不安定性が残ります。尺側側副靱帯は、母指を示指の橈側に押しつけてつまむ動作で母指が橈側に逃げないよう支える役割を担っているため、損傷するとつまみ力が発揮できず疼痛も強く出ます。処置としてはMP関節を軽度屈曲位でサムスパイカ型に固定して外転ストレスを避け、不安定性が大きい場合は手術適応の判断のため速やかに整形外科へ紹介します。

✓ 2. 正しい
鍵を回す。
鍵をつまんで回す動作は側方つまみ(キーピンチ)そのもので、母指を示指の橈側面に押しつけながら回旋の力を加えます。このとき母指MP関節には橈側方向の外力がかかり、損傷した尺側側副靱帯が直接引き伸ばされるため、4つの中で最も困難かつ疼痛が強い動作となります。
✗ 1. 誤り
キーボードを叩く。
手指を軽く屈伸させるだけの動作で、母指MP関節に側方への力はほとんど加わりません。腫脹による違和感は生じ得ますが、尺側側副靱帯に選択的なストレスがかからないため、最も困難な動作とはいえません。
✗ 3. 誤り
ボールを握る。
手指全体で包み込む握力把持(パワーグリップ)が中心で、母指は内転方向に働きます。尺側側副靱帯を引き伸ばす橈側外転ストレスは相対的に小さく、側方つまみほどの選択的な負荷にはなりません。
✗ 4. 誤り
瓶の蓋を開ける。
手掌全体で蓋を包んで前腕の回旋で力を伝える動作が主体で、母指単独の側方つまみに比べるとMP関節尺側への負担は限定的です。痛みは出ますが、キーピンチである鍵を回す動作ほど困難にはなりません。
ポイント
  • スキーのストックやストラップによる母指の受傷は、まず母指MP関節尺側側副靱帯損傷(スキーヤー母指)を疑う。
  • 受傷機転は母指の強制的な橈側外転。制動している尺側側副靱帯が破綻する。
  • 断裂端が母指内転筋腱膜上へ翻転するステナー病変は自然治癒しにくく、手術が検討される。
  • 尺側側副靱帯は側方つまみ(キーピンチ)の支点。鍵を回す、紙をつまむなどの動作でつまみ力低下と疼痛が出る。
  • MP関節を軽度屈曲位でサムスパイカ型に固定して外転ストレスを避け、不安定性が大きければ整形外科へ紹介する。
比較表
動作母指の使い方MP関節尺側側副靱帯へのストレス
鍵を回す側方つまみ(キーピンチ)+回旋トルク
瓶の蓋を開ける手掌全体での把持+前腕回旋
ボールを握る握力把持(パワーグリップ、母指は内転方向)小〜中
キーボードを叩く手指の軽い屈伸ほぼなし
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