学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ27P106

理由で解く 柔道整復師

QJ27P106 柔道整復理論

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午後 問106
問題
22歳の男性。サイクリングが趣味である。最近、右手の環指、小指のしびれを自覚し来所した。図の検査を実施し陽性であった。わずかであるが骨間筋と小指球筋に萎縮がみられた。また、前腕の感覚障害はみられなかった。他に考えられる所見はどれか。
図
選択肢
1 下垂指
2 祝祷肢位
3 スワンネック変形
4 鉤爪指変形
解答
正解4(鉤爪指変形)
解説

環指・小指のしびれに骨間筋と小指球筋の萎縮を伴う所見は、尺骨神経の障害を示します。サイクリングでハンドルにより手関節尺側が反復して圧迫される背景から、手関節部(Guyon管)レベルでの絞扼が考えられ、同じ手内在筋麻痺が進んだ結果として現れる所見は鉤爪指変形(鷲手)です。

尺骨神経は肘部管と手関節部(Guyon管)で絞扼を受けやすく、自転車では手関節の尺側をハンドルに長時間押し当てるため、豆状骨と有鉤骨鉤の間で神経が圧迫されやすくなります。ここで、前腕内側の感覚は尺骨神経ではなく前腕内側皮神経(腕神経叢内側神経束から直接分岐)が担っていることに注意が必要です。前腕の感覚障害がないという所見は、内側神経束・下神経幹・C8〜T1神経根といった尺骨神経より近位のレベルの障害を否定し、尺骨神経単独の障害であることを支持する所見であって、肘部管かGuyon管かを区別する所見ではありません(肘部管症候群でも前腕の感覚は保たれます)。肘部管とGuyon管の鑑別には手背尺側の感覚が有用で、尺骨神経手背枝は手関節よりも近位で分岐するため、Guyon管での障害では手背尺側の感覚が温存されます。骨間筋・小指球筋はいずれも尺骨神経(深枝)支配で、これらが痩せてくると環指・小指のMP関節を屈曲しIP関節を伸展させる力が失われます。その力学的バランスの崩れがそのまま形に出たものが鉤爪指変形です。対応としては、グリップ位置をこまめに変える・パッド付きグローブやハンドル高を調整するなどで手関節尺側への圧迫を減らし、しびれの持続や筋萎縮の進行がみられる場合は速やかに医療機関へ紹介します。

✓ 4. 正しい
鉤爪指変形
尺骨神経支配の骨間筋と第3・4虫様筋が麻痺すると、MP関節を屈曲しIP関節を伸展させる作用が失われます。拮抗する総指伸筋がMP関節を過伸展させ、深指屈筋がPIP・DIP関節を屈曲させるため、環指・小指が鉤爪状の肢位をとります。本例でみられる骨間筋・小指球筋の萎縮と同じ機序の裏返しであり、併せて認められる所見として最も自然です。
✗ 1. 誤り
下垂指
後骨間神経(橈骨神経深枝)麻痺でみられる所見で、MP関節の自動伸展ができなくなります。回外筋部での絞扼などが原因で、純粋な運動枝の障害のため感覚障害を伴わないのが特徴です。障害神経が異なり、環指・小指のしびれや尺側手内在筋の萎縮とは結びつきません。
✗ 2. 誤り
祝祷肢位
正中神経が近位で障害されたときに、握り込もうとしても示指・中指が伸びたまま残る肢位です。橈側指の屈曲に関わる筋の麻痺で生じ、しびれも母指〜環指橈側に出ます。本例のしびれの分布(環指・小指)や萎縮した筋の支配神経と一致しません。
✗ 3. 誤り
スワンネック変形
PIP関節が過伸展しDIP関節が屈曲する変形で、関節リウマチなどにより掌側板の弛緩と腱バランスの破綻が起こった結果みられます。末梢神経麻痺そのものによる肢位ではなく、関節・腱側のバランス破綻を背景に生じる変形であるため、本例のような神経支配に一致した筋萎縮・感覚障害の像とは成因が異なります。
ポイント
  • 環指・小指のしびれ+骨間筋・小指球筋の萎縮=尺骨神経障害を第一に考える。
  • 前腕の感覚が保たれるのは、前腕内側皮神経が尺骨神経とは別に腕神経叢(内側神経束)から分岐するため。この所見は尺骨神経より近位の腕神経叢レベル(内側神経束・下神経幹・C8T1)の障害を否定する。
  • 前腕の感覚は肘部管とGuyon管の区別には使えない。両者の鑑別は手背尺側の感覚でみる(手背枝は手関節より近位で分岐するため、Guyon管障害では温存される)。
  • 自転車では手関節尺側をハンドルに押し当て続けるため、豆状骨と有鉤骨鉤の間(Guyon管)で尺骨神経が圧迫されやすい。この受傷背景がGuyon管を推定する根拠になる。
  • 鉤爪指変形は「骨間筋・虫様筋の麻痺 → MP過伸展+PIP・DIP屈曲」という力のつり合いで理解する。尺側2指で目立つ。
  • グリップ位置の変更やパッドで圧迫を減らし、萎縮が進むようなら早めに医療機関へつなぐ。
比較表
変形・肢位関与する神経特徴
鉤爪指変形(鷲手)尺骨神経環指・小指のMP過伸展+PIP・DIP屈曲。骨間筋・小指球筋の萎縮を伴う
下垂指後骨間神経(橈骨神経深枝)MP関節の自動伸展不能。感覚障害を伴わない
下垂手橈骨神経(上腕部)手関節背屈不能+手背橈側の感覚障害
祝祷肢位正中神経(近位)握ろうとすると示指・中指が伸びたまま残る
スワンネック変形神経麻痺ではない関節リウマチなどでPIP過伸展+DIP屈曲
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