学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ27P105

理由で解く 柔道整復師

QJ27P105 柔道整復理論

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午後 問105
問題
19歳の男性。2か月前にスノーボード滑走中に右肩を衝いて転倒した。肩関節の動きは悪かったが放置していた。症状が一向に改善しないため来所した。初検時、頸部から肩甲部にかけての自発痛があり、肩関節自動運動は屈曲 90度、外転 80度に制限されていた。両手で壁を押し付けさせる動作をしたところ、図のような現象がみられた。最も考えられるのはどれか。
図
選択肢
1 鎖骨不全骨折
2 肩関節脱臼
3 棘上筋腱損傷
4 長胸神経麻痺
解答
正解4(長胸神経麻痺)
解説

両手で壁を押させたときに肩甲骨が胸郭から浮き上がる現象(翼状肩甲)がみられており、前鋸筋を支配する長胸神経の麻痺が最も考えられます。

前鋸筋は肩甲骨の内側縁を胸郭に押しつけて固定し、上肢を挙げる際には肩甲骨を上方回旋させて挙上の後半を担う筋です。この筋を支配する長胸神経(C5〜C7)が麻痺すると、肩甲骨を胸郭に押さえつけられなくなり、内側縁が翼のように背側へ浮き上がります(翼状肩甲)。また肩甲骨の上方回旋が得られないため、肩の屈曲・外転は90度前後で頭打ちになります。本症例の屈曲90度・外転80度という制限はこの機序でよく説明できます。長胸神経は転倒や牽引、圧迫で引き伸ばされて麻痺することがあり、受傷から時間が経っても挙上制限が改善しない経過とも合致します。壁押しテストは前鋸筋に負荷をかけて翼状肩甲を目立たせる誘発法です。神経麻痺が疑われる以上、医療機関での評価につなぎながら、肩甲帯周囲の拘縮予防と前鋸筋の再教育を進めます。

✓ 4. 正しい
長胸神経麻痺
前鋸筋の麻痺により肩甲骨を胸郭に固定できず、壁を押す動作で内側縁が浮き上がります。肩甲骨の上方回旋が失われるため挙上が90度前後で制限される点も本症例に一致します。
✗ 1. 誤り
鎖骨不全骨折
不全骨折であれば2か月を経て骨癒合が進み、疼痛も軽減しているのが通常です。壁を押した際に肩甲骨が浮き上がるという所見を説明できません。
✗ 2. 誤り
肩関節脱臼
脱臼が2か月続いていれば骨頭の位置異常、三角筋部の輪郭変化(肩峰下の空虚)、弾発性固定が明らかになるはずで、自動運動が屈曲90度まで可能という状態とは合いません。
✗ 3. 誤り
棘上筋腱損傷
大結節部の圧痛、外転60〜120度の有痛弧、ドロップアームサインなどが主体で、肩甲骨が胸郭から浮き上がる所見は生じません。壁押し動作での現象とは結びつきません。
ポイント
  • 翼状肩甲=前鋸筋麻痺(長胸神経C5〜C7の障害)のサイン。壁押しテストで誘発する。
  • 前鋸筋の役割は肩甲骨を胸郭に固定+上方回旋。麻痺すると挙上が90度前後で頭打ちになる。
  • 転倒・牽引・圧迫で長胸神経が引き伸ばされて発症しうる。
  • 肩甲骨の内側縁が背側へ浮くかどうかで、腱板損傷や脱臼と切り分けられる。
  • 神経麻痺を疑ったら医療機関での評価につなぎ、並行して拘縮予防と前鋸筋の再教育を行う。
比較表
病態主な所見肩甲骨の浮き上がり
長胸神経麻痺挙上90度前後で制限、壁押しで誘発あり(翼状肩甲)
鎖骨不全骨折鎖骨部の限局した圧痛、2か月で癒合なし
肩関節脱臼(陳旧性)骨頭位置異常、肩峰下の空虚、弾発性固定なし
棘上筋腱損傷大結節の圧痛、有痛弧、ドロップアームサインなし
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