学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ27P104

理由で解く 柔道整復師

QJ27P104 柔道整復理論

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午後 問104
問題
15歳の男子。陸上100m走でスタートと同時に左股関節に疼痛が生じた。単純エックス線写真(別冊 No. 4)を別に示す。膝屈曲位で制限される股関節運動はどれか。
図
選択肢
1 屈曲・外転・外旋
2 屈曲・内転・内旋
3 伸展・外転・外旋
4 伸展・内転・内旋
解答
正解1(屈曲・外転・外旋)
解説

15歳という骨成長期に、100m走のスタートという股関節を強く屈曲・外転させる動作と同時に発症した股関節痛。上前腸骨棘の裂離骨折が典型的で、ここに付着する縫工筋の作用方向、すなわち股関節の屈曲・外転・外旋が疼痛のため制限される。

成長期では骨突起(骨端核)が軟骨を介して骨盤本体につながっており、その結合部は筋腱そのものより弱い。そのため全力の筋収縮が加わると、腱が断裂する代わりに骨突起が引きはがされる。これが裂離(剥離)骨折で、どの骨突起が剥がれるかは、どの筋が強く働いたかで決まる。上前腸骨棘には縫工筋と大腿筋膜張筋が付着する。縫工筋の股関節における作用は屈曲・外転・外旋(さらに膝屈曲)、大腿筋膜張筋の作用は屈曲・外転・内旋であり、外旋を担うのは縫工筋のほうである。設問の「膝屈曲位で」という条件は、二関節筋である縫工筋の膝関節側の作用を取り除いたうえで、股関節での作用だけを問う設定と読める。剥離した骨片に牽引力がかかる方向、すなわち上前腸骨棘に付く筋を収縮させる方向の運動が疼痛で制限されるので、屈曲・外転・外旋が答えとなる。対応は疼痛のない範囲での安静と免荷から始め、疼痛の消退に合わせて可動域、筋力、走動作の順に段階的に戻していく。骨片の転位が大きい場合は手術適応となるため、画像評価を含めて医師と連携する。

✓ 1. 正しい
屈曲・外転・外旋
屈曲・外転・外旋という組み合わせは、上前腸骨棘に付着する縫工筋の股関節作用そのものである。同じ骨突起には大腿筋膜張筋(屈曲・外転・内旋)も付くため、屈曲・外転はいずれの筋が収縮しても、外旋は縫工筋の収縮によって剥離部に牽引力がかかり、いずれの運動も疼痛で制限される。
✗ 2. 誤り
屈曲・内転・内旋
内転は恥骨・坐骨から起こる内転筋群の作用で、上前腸骨棘に付着する筋の働きではない。内旋は大腿筋膜張筋にも含まれるが、その大腿筋膜張筋は外転筋であって内転は行わない。したがってこの組み合わせは、上前腸骨棘の骨片に牽引力が加わる方向としてまとまらない。
✗ 3. 誤り
伸展・外転・外旋
股関節伸展は大殿筋やハムストリングスの作用である。ハムストリングス起始部である坐骨結節の裂離骨折であれば伸展方向の運動で疼痛が出るが、スタート動作と発症部位から想定される病態とは一致しない。
✗ 4. 誤り
伸展・内転・内旋
伸展・内転はいずれも上前腸骨棘に付着する筋の作用ではない。この方向の運動制限が主体となる病態は、本症例の年齢・受傷動作の組み合わせでは考えにくい。
ポイント
  • 成長期の裂離骨折は「どの筋が強く働いたか」で剥がれる骨突起が決まる。付着筋から逆算する。
  • 上前腸骨棘=縫工筋・大腿筋膜張筋。縫工筋=屈曲・外転・外旋(+膝屈曲)、大腿筋膜張筋=屈曲・外転・内旋。
  • 外旋を担うのは縫工筋。大腿筋膜張筋は内旋筋で外旋はしない。ここを取り違えない。
  • 剥がれた骨突起に付く筋を収縮させる方向の運動が、疼痛のため制限される。上前腸骨棘では屈曲・外転・外旋。
  • スプリントのスタートは上前腸骨棘、キック動作は下前腸骨棘、ハードル・開脚は坐骨結節が起きやすい。
  • 疼痛のない範囲での安静・免荷から始め、可動域→筋力→競技動作の順に段階的に復帰させる。転位が大きい例は医師へ紹介する。
比較表
裂離部位付着筋典型的な誘発動作制限されやすい股関節運動
上前腸骨棘縫工筋(+大腿筋膜張筋)スプリントのスタート屈曲・外転・外旋 ※
下前腸骨棘大腿直筋ボールを蹴る屈曲(膝伸展を伴う)
坐骨結節ハムストリングスハードル・開脚伸展(膝屈曲を伴う)
小転子腸腰筋急激な股関節屈曲屈曲
腸骨稜腹筋群体幹の急激な捻り体幹回旋(股関節運動ではない)

※上前腸骨棘の「屈曲・外転・外旋」は縫工筋の作用に基づく組み合わせ。同部に付く大腿筋膜張筋の股関節作用は屈曲・外転・内旋であり、外旋は含まない。

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