学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ27P102

理由で解く 柔道整復師

QJ27P102 柔道整復理論

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午後 問102
問題
70歳の女性。石につまずき、手関節を軽度背屈位・過度回内位で手を衝いた。手関節の近位2cm付近に限局性圧痛がみられ腫脹著明で、同部位の幅も著しく増大していた。整復後の固定肢位はどれか。
選択肢
1 前腕回内位、手関節軽度掌屈位、軽度尺屈位
2 前腕回内位、手関節軽度背屈位、軽度橈屈位
3 前腕回外位、手関節軽度掌屈位、軽度橈屈位
4 前腕回外位、手関節軽度背屈位、軽度尺屈位
解答
正解4(前腕回外位、手関節軽度背屈位、軽度尺屈位)
解説

手関節軽度背屈位・過度回内位で手を衝いた機序と、手関節近位2cm付近の限局性圧痛・著明な腫脹・同部の幅(横径)の増大から、橈骨遠位端の屈曲型骨折(スミス骨折)と判断する。整復後の固定肢位は前腕回外位・手関節軽度背屈位・軽度尺屈位である。

固定肢位を決める原則はただ一つ、「遠位骨片が転位した方向へ戻らない肢位に置く」ことである。屈曲型では遠位骨片が掌側へ転位するため、手関節を掌屈させると転位を助長してしまう。そこで手関節は軽度背屈位に保つ。前腕の肢位は、遠位骨片の回旋転位を戻す向きで決める。屈曲型では遠位骨片が回内方向へ回旋転位するので、前腕を回外位に置いてこれを戻す。伸展型(コーレス骨折)では逆に遠位骨片が回外方向へ回旋転位するため、前腕回内位で固定する。ここを「受傷時に強制された方向と反対の肢位にする」と覚えると誤る。伸展型も前腕回内位で手を衝くのが典型でありながら固定は回内位であり、判断の根拠は受傷肢位ではなく遠位骨片の回旋転位の向きだからである。軽度尺屈位は、橈骨の短縮と遠位骨片の橈側転位を防ぐためのもので、伸展型・屈曲型に共通する。高齢者では固定期間中に手指・肘・肩を積極的に動かすよう指導し、関節拘縮やCRPS(複合性局所疼痛症候群)、肩手症候群の発生を防ぐ。腫脹が強い時期は循環と感覚を確認し、締めつけが強ければ巻き直す。

✓ 4. 正しい
前腕回外位、手関節軽度背屈位、軽度尺屈位
掌側への転位を戻さないための軽度背屈位、遠位骨片の回内転位を戻す回外位、橈骨短縮と橈側転位を防ぐ軽度尺屈位。屈曲型骨折の整復位を保持する三要素がすべてそろっている。
✗ 1. 誤り
前腕回内位、手関節軽度掌屈位、軽度尺屈位
これは伸展型(コーレス骨折)の固定肢位である。本症例は遠位骨片が掌側へ転位する屈曲型なので、掌屈位に置くと掌側転位を助長して再転位を招く。
✗ 2. 誤り
前腕回内位、手関節軽度背屈位、軽度橈屈位
軽度背屈位は適切だが、回内位が誤り。屈曲型の遠位骨片はもともと回内方向へ回旋転位しているため、回内位に置くとその転位を戻せず再転位につながる(回内位固定は、遠位骨片が回外転位する伸展型のもの)。さらに橈屈位は橈骨の短縮と遠位骨片の橈側転位を助長するため不適切である。
✗ 3. 誤り
前腕回外位、手関節軽度掌屈位、軽度橈屈位
回外位は適切だが、掌屈位は掌側転位を、橈屈位は橈側転位と橈骨短縮をそれぞれ助長する。三要素のうち二つが逆向きで、整復位を保持できない。
ポイント
  • 固定肢位は「遠位骨片が転位した方向へ戻らない肢位」に置く。これがすべての判断の軸になる。
  • 前腕の肢位は遠位骨片の回旋転位で決める。屈曲型=回内転位→回外位固定、伸展型=回外転位→回内位固定。
  • 「受傷時に強制された方向と反対にする」という覚え方は誤り。伸展型も前腕回内位で手を衝くが固定は回内位である。
  • 屈曲型(スミス骨折)=遠位骨片は掌側転位。固定は前腕回外位・手関節軽度背屈位・軽度尺屈位。
  • 伸展型(コーレス骨折)=遠位骨片は背側転位。固定は前腕回内位・手関節軽度掌屈位・軽度尺屈位。
  • 軽度尺屈位は両型に共通。橈骨の短縮と遠位骨片の橈側転位を防ぐ目的。
  • 高齢者では固定中から手指・肘・肩の自動運動を指導し、拘縮やCRPSを予防する。
比較表
項目伸展型(コーレス骨折)屈曲型(スミス骨折)
受傷機序手関節背屈位で手をつく(前腕回内位のことが多い)手関節軽度背屈位・過度回内位で手をつく、または手背を衝く
遠位骨片の転位背側・橈側・短縮掌側・橈側・短縮
遠位骨片の回旋転位回外転位回内転位
外観フォーク状変形掌側凸の変形(鋤状変形)
前腕の固定肢位(=回旋転位を戻す向き)回内位回外位
手関節の固定肢位軽度掌屈位・軽度尺屈位軽度背屈位・軽度尺屈位

※前腕の固定肢位は受傷肢位から決まるのではない。伸展型では受傷機序も固定肢位も回内位で一致してしまうため、「受傷方向の反対に固定する」と覚えると破綻する。根拠は遠位骨片の回旋転位を戻すことにある。

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