学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §19 各論(脱臼) 上肢 / QJ27P087

理由で解く 柔道整復師

QJ27P087 柔道整復理論

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午後 問87
問題
手のPIP 関節脱臼で正しいのはどれか。
選択肢
1 掌側脱臼が多い。
2 浅指屈筋腱断裂では DIP 関節を屈曲できない。
3 正中索の損傷の場合は屈曲位で固定する。
4 ボタン穴変形は徐々に発生する。
解答
正解4(ボタン穴変形は徐々に発生する。)
解説

ボタン穴変形は受傷直後には現れず、側索が掌側へすべり落ちるにつれて数日から数週かけて完成します。正しいのは4です。

PIP関節の背側では、総指伸筋腱から続く中央索(正中索)が中節骨底に付き、その両側を側索が走っています。中央索が切れても、はじめのうちは側索が関節の背側を通っているため指はある程度伸ばせ、見た目の変形も目立ちません。ところが、両側の側索を背側でつなぎとめている三角靱帯が伸張・破綻すると、側索が関節の回転軸より掌側へずれ落ち、それまで伸ばす働きをしていた側索がPIP関節を屈曲させる腱に変わります。さらに横支持靱帯が拘縮(短縮)して側索を掌側の位置に引きとどめるため、変形は元に戻らなくなります。同時に側索はDIP関節を引き上げるので、PIP屈曲・DIP過伸展というボタン穴変形が徐々に出来上がります。つまり初検で「伸ばせる」ことは中央索損傷を否定する根拠になりません。疑った時点でPIP伸展位固定を保ち、DIP関節は自動運動を許して側索の掌側移動を防ぎながら経過を追うのが要点です。

✓ 4. 正しい
ボタン穴変形は徐々に発生する。
変形の完成には、三角靱帯が伸びて側索が掌側へすべり落ちる過程が必要で、受傷直後ではなく数日から数週かけて明らかになります。だからこそ初期に見逃さない固定が大切になります。
✗ 1. 誤り
掌側脱臼が多い。
多いのは背側脱臼です。指が過伸展を強制されて掌側板が断裂し、中節骨が背側へ移動します。掌側脱臼はまれで、中央索を損傷しやすく整復も難しくなります。
✗ 2. 誤り
浅指屈筋腱断裂では DIP 関節を屈曲できない。
浅指屈筋は中節骨底に停止するのでPIP関節を屈曲させます。断裂で屈曲できなくなるのはPIP関節です。DIP関節を屈曲させるのは末節骨底に付く深指屈筋で、検査では隣の指を伸展位に押さえたままPIPを曲げさせて浅指屈筋を単独で調べます。
✗ 3. 誤り
正中索の損傷の場合は屈曲位で固定する。
固定はPIP伸展位です。屈曲位で固定すると側索がいっそう掌側へすべり、ボタン穴変形を助長します。PIPを伸展位に保ちつつDIPの自動屈伸を促すことで、側索を背側に引き戻す方向に働かせます。
ポイント
  • PIP関節脱臼は背側脱臼が大多数。過伸展強制+掌側板断裂が典型。
  • 中央索(正中索)断裂の直後は指を伸ばせることがある。伸展できる=損傷なし、ではない。
  • 背側の三角靱帯が伸張・破綻すると側索が関節の回転軸より掌側へすべり、伸展装置が屈曲力に変わってボタン穴変形(PIP屈曲・DIP過伸展)が完成する。
  • さらに横支持靱帯が拘縮して側索を掌側に保持するため、変形は固定化する。靱帯の役割を取り違えない。
  • 中央索損傷を疑ったらPIP伸展位固定+DIPの自動運動。屈曲位固定は避ける。浅指屈筋=PIP屈曲、深指屈筋=DIP屈曲。
比較表
ボタン穴変形スワンネック変形
PIP関節屈曲位過伸展位
DIP関節過伸展位屈曲位
主な破綻部位中央索断裂+三角靱帯の伸張による側索の掌側移動(横支持靱帯の拘縮が変形を固定)掌側板のゆるみ、側索の背側移動
初期対応PIP伸展位固定PIP軽度屈曲位で過伸展を止める
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。