学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §25 臨床実地問題 / QJ27P064

理由で解く 柔道整復師

QJ27P064 整形外科学

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午後 問64
問題
30歳の男性。6か月前から運動で軽減する腰痛があり、腰椎の背屈制限を伴っている。この患者にみられる所見はどれか。
選択肢
1 腱付着部炎
2 間欠性跛行
3 関節内石灰沈着
4 腸骨翼形成不良
解答
正解1(腱付着部炎)
解説

30歳という若年発症、6か月以上続く腰痛、そして動くと軽くなるという経過は、機械的な腰痛ではなく炎症性腰背部痛の型である。腰椎の後屈制限を伴う点も合わせて強直性脊椎炎を考え、みられる所見は腱付着部炎。正答は1。

強直性脊椎炎は仙腸関節から始まって体軸関節に炎症が及ぶ脊椎関節炎で、若年男性に多くHLA-B27との関連が強い。病態の中心は腱・靱帯・関節包が骨に付着する部位に起こる炎症、すなわち腱付着部炎(enthesitis)である。炎症が起きた付着部は修復の過程で骨化し、椎体の辺縁に靱帯骨棘(syndesmophyte)を形成する。これが上下の椎体を橋渡しするように連なると脊柱の可動性が失われ、進行例では竹の節のような竹様脊柱となる。本症例の腰椎後屈制限は、この可動域低下の初期像として説明できる。臨床的には安静で悪化して動き出すと楽になること、夜間から明け方に痛みが強いこと、朝のこわばりが30分以上続くことが特徴で、休むと軽くなる機械的腰痛とちょうど逆になる。ここで注意したいのは、鑑別の決め手は年齢そのものではなく「持続期間」と「安静・運動との関係」の組合せだという点である。機械的腰痛の側にも腰椎椎間板ヘルニアのように20〜40歳代を好発年齢とする疾患があり、若いからといって機械的腰痛を除外できるわけではない。本症例で炎症性と判断できるのは、6か月という持続に加えて運動で軽減するという向きがそろっているからである。長く「ただの腰痛」として扱われて診断が遅れやすい疾患なので、この型の腰痛に気づいたら徒手療法だけで完結させず、リウマチ科など専門医の評価につなぎ、並行して姿勢保持と脊柱・胸郭の可動域を保つ運動を続けることが大切である。

✓ 1. 正しい
腱付着部炎
強直性脊椎炎の病態そのものにあたる所見である。脊柱や仙腸関節の靱帯付着部のほか、アキレス腱の踵骨付着部や足底腱膜の起始部に好発し、踵の痛みとして自覚されることが多い。炎症のあとに修復性の骨化が進んで靱帯骨棘ができ、脊柱の可動域が段階的に失われていく。踵の痛みと若年発症の腰痛が同じ患者に併存していれば、この疾患を強く疑う手がかりになる。
✗ 2. 誤り
間欠性跛行
腰部脊柱管狭窄症(および下肢動脈の閉塞性疾患)でみられる所見である。脊柱管狭窄では歩き続けると下肢のしびれや脱力が強まって歩けなくなり、前屈姿勢や座位でしばらく休むと回復してまた歩けるようになる。つまり症状は運動(歩行)で増悪し休息で軽快するのであって、運動そのもので腰痛が軽減している本症例とはちょうど逆である。好発年齢も中高年で、30歳発症・6か月持続という経過にも合わない。なお本症例の腰椎後屈制限は炎症による可動域そのものの低下であり、狭窄症で後屈により脊柱管が狭まって神経症状が誘発されるのとは別の現象である。後屈が絡むという表面的な共通点で両者を結びつけないよう区別しておきたい。
✗ 3. 誤り
関節内石灰沈着
ピロリン酸カルシウム結晶沈着症(偽痛風)などでみられる所見で、膝の半月板や手関節の三角線維軟骨が石灰化してX線に写る。高齢者に急性の単関節炎として発症するのが典型である。強直性脊椎炎でみられる骨化は靱帯・付着部が骨に置き換わる靱帯骨棘であって、関節内に結晶が沈着する変化ではない。
✗ 4. 誤り
腸骨翼形成不良
軟骨無形成症などの骨系統疾患でみられる骨盤X線所見で、腸骨翼が小さく角ばり、骨盤入口部が狭くなる。出生時から存在する形態異常であり、成人になって6か月前から始まった炎症性腰痛の所見にはならない。強直性脊椎炎の骨盤X線で追うのは、仙腸関節の骨びらん・骨硬化から関節裂隙の狭小化、さらに強直へ至る変化である。
ポイント
  • 炎症性腰背部痛を疑う型:40歳未満の発症、3か月以上持続、安静で悪化し運動で軽減、夜間〜早朝の痛みと30分以上の朝のこわばり。
  • 年齢単独では鑑別できない。椎間板性腰痛(腰椎椎間板ヘルニアなど)は20〜40歳代が好発で、機械的腰痛=中高年とは限らない。決め手は安静・運動との関係と、痛みの持続期間、朝のこわばりが30分以上続くかどうかである。
  • 強直性脊椎炎の本態は腱付着部炎。踵(アキレス腱付着部・足底腱膜)の痛みが併存しやすい。
  • 付着部の炎症→修復性骨化→靱帯骨棘→竹様脊柱、という流れで脊柱の可動域が失われる。腰椎後屈制限はその初期像(炎症による可動域低下そのものであり、狭窄症で後屈により神経症状が誘発されるのとは別物)。
  • 評価は指床間距離、シェーバー(Schober)試験、胸郭拡張差など。HLA-B27陽性率が高い。
  • 間欠性跛行(腰部脊柱管狭窄症)との切り分けは「運動で増悪し休息で軽快」か「運動で軽減」かの向きで行う。脊柱管狭窄症が中高年に好発する点は補助的な手がかりとして併せてみる程度にとどめる。
  • 紛らわしい所見の持ち主:間欠性跛行=腰部脊柱管狭窄症、関節内石灰沈着=偽痛風(CPPD)、腸骨翼形成不良=軟骨無形成症。
  • 疑ったら施術で完結させずリウマチ科等につなぎ、並行して姿勢保持と可動域維持の運動を継続する。
比較表
炎症性腰背部痛(強直性脊椎炎など)機械的腰痛(椎間板性・脊柱管狭窄など)
発症年齢40歳未満の発症が多い椎間板性は20〜40歳代、脊柱管狭窄症は中高年と幅がある(年齢だけでは鑑別できない)
経過3か月以上かけて緩やかに持続動作を契機に急性発症することが多い
安静安静で悪化する安静で軽減する
運動動き出すと軽減する動くと悪化する(狭窄症では歩行で増悪し、前屈・座位での休息で軽快=間欠性跛行)
朝のこわばり30分以上続くあっても短時間
随伴所見仙腸関節炎、付着部炎(踵の痛み)、ぶどう膜炎、炎症性腸疾患下肢の神経根症状、間欠性跛行
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