学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §25 臨床実地問題 / QJ27P058

理由で解く 柔道整復師

QJ27P058 整形外科学

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午後 問58
問題
6歳の男児。ガワーズ徴候陽性で、両側の下腿三頭筋は肥大している。病状が進行するとみられる所見はどれか。
選択肢
1 下肢深部腱反射亢進
2 分回し歩行
3 外眼筋麻痺
4 呼吸量減少
解答
正解4(呼吸量減少)
解説

ガワーズ徴候陽性と下腿三頭筋の仮性肥大がそろう6歳男児は、Duchenne型筋ジストロフィーを考える。進行すると呼吸筋が侵され、肺活量など呼吸量が低下する。

Duchenne型筋ジストロフィーは、筋線維膜を裏打ちするジストロフィンが欠損し、収縮のたびに膜が壊れて筋の壊死と再生を繰り返す疾患である。やがて再生が追いつかなくなり、筋は脂肪と線維組織に置き換わる。骨盤帯など近位筋から侵されるため、床から立ち上がるときに自分の体を手でよじ登るガワーズ(登攀性起立)徴候、動揺性歩行、腰椎前弯の増強が現れる。下腿三頭筋が太く見えるのは筋力があるからではなく、脂肪・結合組織の増生による仮性肥大である。10歳前後で歩行が困難となり、車椅子生活に移ると脊柱側弯が進み、肋間筋と横隔膜の筋力低下に胸郭変形が加わって拘束性換気障害となる。心筋にもジストロフィンが必要なため心筋症を合併し、呼吸不全と心不全が予後を左右する。定期的な肺活量・心機能の評価、呼吸理学療法、装具や姿勢管理、非侵襲的換気の導入時期の検討を多職種で継続していく。

✓ 4. 正しい
呼吸量減少
進行期には肋間筋・横隔膜といった呼吸筋自体が障害され、さらに側弯と胸郭の変形が加わって肺が十分に広がらなくなる。その結果、肺活量が低下する拘束性換気障害となり、咳の力も弱まって喀痰排出が難しくなる。呼吸機能の推移を定期的に測り、呼吸リハビリテーションや排痰補助、非侵襲的陽圧換気の導入を先手で計画することが生活の質と予後を支える。
✗ 1. 誤り
下肢深部腱反射亢進
腱反射の亢進は錐体路(上位運動ニューロン)が障害されたときの所見である。本症は筋そのものが壊れていく筋原性疾患なので、反射弓の出力側である筋が萎縮し、腱反射はむしろ減弱して最終的に消失する。病的反射も陰性で、この点が痙性麻痺との鑑別点になる。
✗ 2. 誤り
分回し歩行
分回し歩行は痙性片麻痺で下肢が伸展位に固定され、振り出せない下肢を外側に円を描くように回して出す歩き方で、脳血管障害などの上位運動ニューロン障害が背景にある。本症で特徴的なのは、左右に体幹を振って歩く動揺性歩行(アヒル歩行)と、腰椎前弯を強めて体幹を後ろに反らせる姿勢である。中殿筋を含む骨盤帯の筋力低下から生じると理解すると覚えやすい。
✗ 3. 誤り
外眼筋麻痺
本症では外眼筋や膀胱・直腸の括約筋は比較的保たれ、眼球運動障害や眼瞼下垂は特徴とされない。外眼筋の麻痺が前面に出るのは重症筋無力症や慢性進行性外眼筋麻痺(ミトコンドリア病)などで、疾患の入り口が異なる。「近位筋から侵され、外眼筋は残る」という分布の型で整理する。
ポイント
  • ガワーズ徴候+下腿三頭筋の仮性肥大+幼児期発症の男児=Duchenne型筋ジストロフィー(X連鎖劣性、ジストロフィン欠損)。
  • 筋原性疾患なので腱反射は減弱〜消失。亢進は上位運動ニューロン障害の所見。
  • 歩行は動揺性(アヒル)歩行と腰椎前弯増強。分回し歩行は痙性片麻痺。
  • 近位筋から侵され、外眼筋・括約筋は比較的保たれる。
  • 進行期は呼吸筋障害+側弯による拘束性換気障害で肺活量が低下し、心筋症も合併する。呼吸・心機能の定期評価が要。
比較表
所見Duchenne型筋ジストロフィー(筋原性)上位運動ニューロン障害(痙性麻痺)
深部腱反射減弱〜消失亢進
病的反射陰性陽性(バビンスキー徴候など)
筋緊張低下亢進(痙縮)
歩行動揺性(アヒル)歩行、腰椎前弯増強分回し歩行、はさみ足歩行
筋の外観下腿三頭筋の仮性肥大、近位筋の萎縮廃用性の萎縮が主
進行期の問題拘束性換気障害・心筋症拘縮・変形、原疾患による
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