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理由で解く 柔道整復師

QJ27P030 一般臨床医学

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午後 問30
問題
胃潰瘍の圧痛点はどれか。
選択肢
1 オトガイ点
2 ボアス点
3 ランツ点
4 ムンロー点
解答
正解2(ボアス点)
解説

胃潰瘍の圧痛点はボアス(Boas)点で、第10〜12胸椎棘突起の左側(左傍脊柱部)にあります。背部に圧痛が出るという点が、腹部にある虫垂炎の圧痛点との大きな違いです。

内臓からの痛覚は内臓求心性線維を通って脊髄に入りますが、そこで同じ脊髄分節に入ってくる皮膚や筋からの体性感覚と中枢で混線するため、脳は病変から離れた体表の痛みとして認識します(関連痛、収束投射説)。胃潰瘍で背部に圧痛が現れるのもこの機序によるもので、その部位が第10〜12胸椎棘突起の左側=ボアス点として教科書上定義されています。十二指腸潰瘍では同じ高さの右側に出ることが多く、左右で使い分けます。なお、脊髄分節の番号と椎骨・棘突起の高位は一致しないため(脊髄分節は同じ番号の椎体より高い位置にあります)、圧痛点の位置を分節番号からそのまま導くことはできません。「なぜ背中が痛むのか」という関連痛の機序と、「圧痛点がどこにあるか」という定義は切り分けて押さえ、腹部の圧痛点(虫垂炎のマックバーネー点・ランツ点・ムンロー点、胆嚢のマーフィー徴候)と混同しないよう、臓器ごとに位置をセットで整理しておきます。

✓ 2. 正しい
ボアス点
第10〜12胸椎棘突起の左側にある背部の圧痛点で、胃潰瘍で陽性となります(十二指腸潰瘍では右側)。心窩部痛や背部痛を訴える患者でこの部位に圧痛を認め、さらに黒色便・吐血・食後増悪する心窩部痛などを伴う場合は、背部への施術で改善を図るのではなく、消化器内科への受診を勧めます。
✗ 1. 誤り
オトガイ点
下顎のオトガイ孔部にあり、三叉神経第3枝(下顎神経)の枝であるオトガイ神経の出口にあたります。三叉神経痛で圧痛をみる顔面の圧痛点(眼窩上切痕・眼窩下孔・オトガイ孔)のひとつで、消化器疾患とは関係しません。顔面の発作性電撃痛を認める場合は脳神経内科・歯科口腔外科への受診を勧めます。
✗ 3. 誤り
ランツ点
左右の上前腸骨棘を結ぶ線を3等分し、その右1/3の点で、急性虫垂炎の圧痛点です。胃潰瘍ではなく右下腹部の病変を示します。ここに圧痛と反跳痛、筋性防御を認める場合は急性腹症を疑い、速やかに医療機関へつなぎます。
✗ 4. 誤り
ムンロー点
臍と右上前腸骨棘を結ぶ線の中点で、これも急性虫垂炎の圧痛点です。同じ線の外側1/3がマックバーネー点で、いずれも右下腹部にあり、胃潰瘍の圧痛点ではありません。虫垂炎は心窩部痛から始まり右下腹部へ移動するという経過をたどるため、初診時の心窩部痛だけで胃疾患と決めつけず、時間経過と圧痛部位の移動を確認します。
ポイント
  • ボアス点=第10〜12胸椎棘突起の左側で胃潰瘍。十二指腸潰瘍では同じ高さの右側。位置は体表所見の定義としてそのまま覚える。
  • 背部に痛みが出るのは関連痛(内臓求心路と体性感覚が同じ脊髄分節に収束するため=収束投射説)。
  • 脊髄分節の番号と椎骨・棘突起の高位は一致しない(分節は同番号の椎体より高位)。圧痛点の位置を分節番号から演繹しないこと。
  • 右下腹部の3点(マックバーネー点・ランツ点・ムンロー点)はいずれも急性虫垂炎。位置の違いで区別する。
  • オトガイ点は顔面の三叉神経第3枝の圧痛点で、腹部疾患とは無関係。
  • 心窩部痛+背部左側の圧痛に黒色便・吐血・体重減少が加わるときは、施術より先に消化器内科の受診を勧める。
比較表
圧痛点部位示す病態
ボアス点第10〜12胸椎棘突起の左側(十二指腸潰瘍では右側)胃潰瘍
マックバーネー点臍と右上前腸骨棘を結ぶ線の外側1/3急性虫垂炎
ランツ点左右の上前腸骨棘を結ぶ線の右1/3急性虫垂炎
ムンロー点臍と右上前腸骨棘を結ぶ線の中点急性虫垂炎
オトガイ点下顎のオトガイ孔部(顔面)三叉神経痛(第3枝)
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