学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ26P109

理由で解く 柔道整復師

QJ26P109 柔道整復理論

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午後 問109
問題
21歳の男性。柔道の乱取り中、相手に技をかけた時に自らもバランスを崩して転倒し、畳に指先を突き受傷した。疼痛が軽度であったので指先をテーピング固定して練習を継続したが、次第に力が入りにくくなり、痛みも強くなったため中断した。この時の患部の写真(別冊No. 3)を別に示す。中指DIP関節の伸展は不能であるが、PIP関節の屈伸は可能である。考えられるのはどれか。
図
選択肢
1 指伸筋腱断裂
2 PIP関節背側脱臼
3 浅指屈筋腱断裂
4 正中索断裂
解答
正解1(指伸筋腱断裂)
解説

突き指の後にDIP関節だけが自分で伸ばせず、PIP関節は屈伸できる――この所見の組み合わせは、指伸筋腱のいちばん末梢である終止腱が断裂するか、その付着部である末節骨底背側が骨ごと裂離した槌指(マレットフィンガー)に一致します。したがって考えられるのは「指伸筋腱断裂」です。

指の伸筋腱は指背腱膜となり、中節骨底に停止する正中索と、両側の側索が合流して末節骨底に停止する終止腱に分かれます。終止腱が断たれる(あるいはその付着部が裂離する)と末節を起こす力が失われ、深指屈筋に引かれてDIP関節が屈曲位に下垂し、自動伸展は不能・他動伸展は可能という所見になります。一方で正中索は無傷なのでPIP関節の伸展も屈曲も保たれ、障害はDIP関節に限局します。写真(別冊No.3)は手を側方からとらえた側面像で、中指はMP関節・PIP関節の伸展を保ったまま末節だけがDIP関節で掌側へ折れ、指尖が垂れ下がっています。PIP関節部には階段状変形も著明な腫脹もみられません(他指は屈曲位で重なって写ります)。この「PIPは伸びているのにDIPだけが落ちる」姿勢が槌指変形であり、設問の記載どおりの所見です。ただし写真から読み取れるのは肢位までなので、視診・触診ではこれに加えてDIP関節背側の腫脹・皮下出血・圧痛、とくに末節骨底背側の骨性の圧痛(骨性槌指を示唆)と、他指と比べた指先の姿勢を確かめます。DIP関節が伸展位に保たれないまま競技を続けると断端が離開して治癒せず、次第に伸展不全と疼痛が進むため、「痛みが軽い=軽症」とは限らないのが槌指の要注意点です。

✓ 1. 正しい
指伸筋腱断裂
指伸筋腱の最末梢=終止腱が断裂するか、その付着部である末節骨底背側の裂離骨折を伴う骨性槌指となった状態で、DIP関節の自動伸展が不能になり、PIP関節の運動は正常に残ります。設問の「中指DIP関節の伸展は不能、PIP関節の屈伸は可能」に完全に一致します。腱性か骨性かは外見や自動運動の所見では区別できないため、X線で確認します。固定はDIP関節を伸展位(軽度過伸展まで)に保ち、6〜8週間の連続固定を行うのが原則で、国家試験で問われるのもこのDIP関節の肢位です(「DIP関節伸展位で固定する」が正しく、「DIP関節を軽度屈曲位で固定する」は誤り)。一方でPIP関節の扱いは成書によって一様ではありません。伸筋腱(側索)の緊張を緩める目的でPIP関節を軽度屈曲位に含めて固定する方法が記載されることがある一方、近年はPIP関節の拘縮を避けるためPIP関節を固定に含めず自動運動を行わせる方法(Stack副子など)が広く行われています。どちらを採るにせよ、押さえるべき原則は「DIP関節は伸展位を保ち、途中で外さない」ことです。骨片が大きいもの、末節骨の掌側亜脱臼を伴うものは手術適応の検討が必要になるため、早期にX線評価を受けられるよう医療機関へつなぐことが大切です。
✗ 2. 誤り
PIP関節背側脱臼
中節骨が基節骨に対して背側へ転位する損傷で、掌側板の損傷を伴い、PIP関節部の階段状変形と腫脹が目立ち、弾発性固定によって屈伸が著しく制限されます。本例はPIP関節の屈伸が可能で、写真でもPIP関節部に階段状変形や著明な腫脹はみられず、障害がDIP関節の伸展だけに限られている点が合いません。またPIP関節の脱臼が起きても、終止腱が保たれていればDIP関節の伸展は通常可能です。
✗ 3. 誤り
浅指屈筋腱断裂
浅指屈筋は中節骨の掌側に停止し、PIP関節を屈曲させる筋です。ただし単独で断裂しても、PIP関節を越えて走行する深指屈筋が屈曲を代償するため、PIP関節を曲げること自体は可能で、失われるのは「DIP関節を伸展位に保ったままPIP関節だけを曲げる」単独屈曲(=他指を伸展位に保持して当該指のPIP関節屈曲だけをみる浅指屈筋テスト)と、PIP関節の屈曲です。掌側の圧痛や皮下出血を伴うこともあります。いずれにせよ責任構造は屈筋側であり、DIP関節の自動伸展が不能という伸展機構の障害はまったく説明できないので該当しません。なおDIP関節の屈曲を担うのは末節骨底に停止する深指屈筋で、こちらが断裂してもDIP関節は「屈曲できない」のであって「伸展できない」にはなりません。
✗ 4. 誤り
正中索断裂
正中索は中節骨底の背側に停止してPIP関節を伸展させます。断裂するとPIP関節の自動伸展が不能となり、側索が掌側へ滑り落ちてPIP関節屈曲・DIP関節過伸展のボタン穴(ボタンホール)変形へ進行します。本例はPIP関節の伸展が可能で、DIP関節が伸ばせない――槌指とはちょうど裏返しの所見なので該当しません。なお正中索損傷は受傷直後には変形がはっきりしないことがあるため、PIP関節の自動伸展の遅れ(伸展ラグ)を必ず確認します。
ポイント
  • 指背腱膜は正中索(中節骨底の背側に停止=PIP伸展)終止腱(末節骨底の背側に停止=DIP伸展)に分かれる。「どの関節が伸ばせないか」で損傷部位が決まる。
  • 槌指=終止腱の損傷:DIP関節の自動伸展不能・他動伸展は可能、PIP関節は正常。終止腱そのものが切れる腱性と、末節骨底背側の裂離骨折を伴う骨性があり、外見や自動運動の所見では区別できないのでX線で分ける。
  • ボタン穴変形=正中索損傷:PIP関節の伸展不能+DIP関節過伸展。槌指と表裏で対にして覚えると混同しない。
  • 屈筋側は浅指屈筋=PIP単独屈曲(DIP関節を伸展位に保ったままのPIP屈曲)、深指屈筋=DIP屈曲。浅指屈筋腱が切れても深指屈筋が代償するためPIP関節の屈曲そのものは不能にならず、単独屈曲の困難と屈曲力の低下として現れる(他指を伸展位に保持する単独テストではじめて分かる)。屈筋腱損傷を「〜が屈曲できない」と断定する選択肢は誤りの型。いずれにせよ伸展障害は起こさないので、伸展障害の鑑別からは外れる。
  • 初期対応の要はDIP関節を伸展位に保ち6〜8週の連続固定(国試で問われるのもDIP関節の肢位。「軽度屈曲位で固定」は誤り)。PIP関節については、側索の緊張を緩める目的で軽度屈曲位に含める固定法を載せる成書もあれば、拘縮予防のため固定に含めず自動運動を行わせる方法もあり一様ではない。途中で外すと再断裂しやすいことを本人に伝える。
  • 疼痛が軽くても、DIP関節を伸展位に保つ固定をせずに競技を続けない。テーピングだけで様子をみず、医療機関で骨折の有無を評価してもらう。骨片が大きいもの・掌側亜脱臼があるものは手術適応の検討が必要。
比較表
損傷責任構造・停止部障害される自動運動特徴的な変形本例との一致
指伸筋腱(終止腱)断裂・付着部裂離=槌指終止腱/末節骨底・背側DIP関節の自動伸展が不能(他動伸展は可能)末節の下垂(槌指変形)一致
正中索断裂正中索/中節骨底・背側PIP関節の自動伸展が不能ボタン穴変形(PIP屈曲+DIP過伸展)不一致(PIPの伸展は保たれ、DIPは過伸展ではなく伸展不能)
浅指屈筋腱断裂浅指屈筋腱/中節骨・掌側DIP関節を伸展位に保ったままのPIP関節屈曲(単独屈曲)が困難/PIP関節の屈曲力が低下。深指屈筋が残るためPIP関節の屈曲自体は可能明らかな変形は乏しい/掌側の腫脹・圧痛不一致(責任構造が屈筋側であり、DIP関節の伸展不能を説明できない)
PIP関節背側脱臼PIP関節そのものの転位(掌側板の損傷を伴う)PIP関節の屈伸(弾発性固定)PIP関節部の階段状変形・腫脹不一致(PIPの屈伸は可能で、写真でもPIP関節部に階段状変形・著明な腫脹がない)
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