学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ26P108

理由で解く 柔道整復師

QJ26P108 柔道整復理論

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午後 問108
問題
46歳の女性。右手で瓶の蓋を回し開けようとした時、突然、示指が屈曲位となった。MP 関節は 30度屈曲位をとり、その位置からの屈曲は可能であるが伸展は不能であった。MP 関節に明瞭な腫脹や熱感はなく、PIP 関節の屈伸障害もみられない。この患者の圧痛部は図で示す部位のどれか。
図
選択肢
1 a
2 b
3 c
4 d
解答
正解2
解説

瓶の蓋を回した瞬間に示指がMP関節30度屈曲位でロックし、そこからの屈曲はできるのに伸展だけができない。MP関節ロッキングであり、引っかかりを起こしている中手骨頭のふくらみの上=図のbが圧痛部になる。

まず図の読み方から確かめる。図は3枚組で、どれも示指の付け根(MP関節のまわり)を別の角度から描いたものである。左上は手を軽く握って手背・橈側から見た斜位像で、示指の付け根に×が2つ並び、指先側(遠位)が a、手首側(近位)が b。右上は同じ部位を手掌側から見た絵で、示指の基部横紋のすぐ手前(近位)に c。下は手背側から母指と示指の間を見た絵で、第1指間の水かきに接する示指基部に d が打たれている。つまり a〜d の4点はいずれも示指MP関節のすぐ近くに集まっており、違うのは「手背側か掌側か」「MP関節線より遠位か近位か」「示指側か母指側か」だけである。この問題が問うているのは責任病巣の高さではなく、同じMP関節のまわりのどこを押すかである。

次に病態。本例はMP関節ロッキングで、中手骨頭(とくに橈側)にできた骨性の隆起や骨棘に、側副靱帯の一部である副側副靱帯や掌側板が乗り上げ、そこから戻れなくなった状態である。中年の女性に多く示指に好発し、瓶の蓋を回すような強い把持と回旋を伴う動作が引き金になる。屈曲方向にはさらに動くのに伸展だけができないのは、乗り上げた靱帯が伸展方向では隆起を越えられないためで、「関節が壊れている」のではなく「途中で引っかかっている」ことを表す。関節内の炎症ではないので腫脹・熱感を欠き、PIP関節は病巣の外にあるので屈伸は自由である。そして引っかかっている場所そのものが痛むので、圧痛は中手骨頭のふくらみの上、すなわちMP関節線より手首側(近位)に限局する。図でその位置に一致するのは b だけである。

✓ 2. 正しい
b
左上の図で示指の付け根に並ぶ2点のうち、手首側(近位)の点。MP関節線より近位、第2中手骨頭のふくらみの上にあたる。引っかかりを起こしているのは中手骨頭側の骨性隆起なので、圧痛はまさにここへ集まる。①MP関節だけが屈曲位で固定されている、②屈曲は可能で伸展のみ不能、③MP関節に腫脹・熱感がない、④PIP関節は正常、という4つの所見がそろえば、押すべき場所は中手骨頭部に絞り込める。
✗ 1. 誤り
a
同じ左上の図で、b と並ぶ2点のうち指先側(遠位)の点。手背側という面は b と同じだが、MP関節の裂隙を越えて基節骨底の高さに寄っている。ここは側副靱帯や掌側板が「つく先」であって、伸展を妨げている骨性隆起がある側ではない。基節骨底そのものに病変(基節骨底の骨折や靱帯付着部の裂離)があるなら腫脹や変形を伴い、他動運動でも痛みが出るはずで、腫脹・熱感がなく屈曲だけは自由という本例の所見と合わない。
✗ 3. 誤り
c
右上の図の、手掌側から見た示指基部の点。示指の基部横紋のすぐ近位で、屈筋腱が靱帯性腱鞘(A1)をくぐる場所にあたる。ここに限局した圧痛と結節を触れるのはばね指(弾発指)で、指を曲げ伸ばしすると引っかかりを越えた瞬間にカクンと動く弾発現象を示し、他動的には伸展させられることが多い。本例は屈曲位から伸展がまったくできない固定であり、弾発現象の記載もない。掌側の腱の通過障害ではなく関節の外側で靱帯が乗り上げている状態なので、圧痛は掌側のこの点には出ない。
✗ 4. 誤り
d
下の図の、手背側から母指と示指の間を見た点で、第1指間の水かきに接する示指基部にあたる。手背側という面は b と同じでも、中手骨頭のふくらみの真上からは母指側へ外れている。ここを占めるのは水かきの皮膚と第1背側骨間筋・母指内転筋で、強い把持で母指側の筋が疲労したときや第1指間・母指MP関節の損傷では圧痛が出うる。しかし本例で動かなくなっているのは示指のMP関節であり、その引っかかりの主座を押さえる点にはならない。
ポイント
  • MP関節ロッキング=中手骨頭(とくに橈側)の骨性隆起に副側副靱帯や掌側板が乗り上げ、伸展方向へ戻れなくなった状態。関節そのものは壊れていない。
  • 所見の型:MP関節が30〜60度屈曲位で固定、そこからの屈曲は可能で伸展のみ不能、PIP・DIP関節は自由、MP関節に腫脹・熱感がない。
  • 中年(40〜50代)の女性、示指に好発。瓶の蓋を回す、雑巾を絞るなど強い把持と回旋を伴う動作が誘因。
  • 圧痛は引っかかっている場所=中手骨頭部に限局する。MP関節線より遠位の基節骨底や、母指側の第1指間ではない。
  • ばね指との鑑別:ばね指は掌側の靱帯性腱鞘(A1)部=中手骨頭の掌側に限局圧痛と結節があり、弾発現象を示して他動的には伸展できる。押す面が掌側か中手骨頭の上かで分ける。
  • 関節内の炎症(関節リウマチ・痛風・化膿性関節炎)は腫脹・熱感を伴い、他動運動でも制限される点で除外できる。
  • 対応:無理に伸展方向へ引っ張ると引っかかりが深くなるので行わない。MP関節を屈曲させたまま軽く牽引し、掌側から中手骨頭を押し上げるように解除を試みる。解除できないとき・繰り返すときは画像評価と手外科への紹介を行う。
比較表
図の点図での位置そこにある構造ここが圧痛点なら考えるもの本例
a手背側の斜位像。b より指先側(遠位)MP関節裂隙〜基節骨底の背側。側副靱帯・掌側板の付着側、伸筋腱基節骨底の骨折・裂離、MP関節の外傷(腫脹・変形を伴う)×
b手背側の斜位像。a より手首側(近位)=中手骨頭のふくらみの上第2中手骨頭と、そこから起こる側副靱帯・副側副靱帯MP関節ロッキング
c手掌側の像。示指の基部横紋のすぐ近位屈筋腱と靱帯性腱鞘(A1)=中手骨頭の掌側ばね指(弾発指)。弾発現象と結節を伴う×
d手背側の像。第1指間の水かきに接する示指基部水かきの皮膚、第1背側骨間筋・母指内転筋母指側の筋・腱の障害、第1指間の損傷×
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