学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ26P107

理由で解く 柔道整復師

QJ26P107 柔道整復理論

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午後 問107
問題
22歳の女性。事務職員をしている。1週前からパソコン作業をしていると右上肢に鈍痛と冷感を自覚するようになった。その後、通勤時に電車のつり革を握っていると上肢がだるく、鈍痛や冷感の症状が悪化することに気付き来所した。女性はなで肩である。陽性となる検査法はどれか。2つ選べ。
選択肢
1 ドロップアームテスト
2 ルーステスト
3 スパーリングテスト
4 エデンテスト
解答
正解2(ルーステスト)、4(エデンテスト)
解説

なで肩の若い女性に、上肢を挙げる姿勢(つり革)で悪化する鈍痛・だるさ・冷感が出ている。胸郭出口症候群であり、陽性となるのはルーステストとエデンテストの2つ。

胸郭出口症候群は、鎖骨下動脈・鎖骨下静脈と腕神経叢が首から腋窩へ向かう途中の狭い場所で圧迫あるいは牽引されて起こる。関門は3か所ある。前斜角筋と中斜角筋にはさまれた斜角筋三角、鎖骨と第1肋骨の間の肋鎖間隙、小胸筋と烏口突起の下(過外転の際に狭くなる)である。なで肩は肩甲帯を吊り上げる筋の支持が弱く鎖骨が下がるため、肋鎖間隙が狭くなり、同時に腕神経叢が下方へ引き伸ばされる。つり革を握る=上肢を挙げた姿勢でさらに間隙が狭まり症状が悪化する。冷感は動脈側の血流低下、鈍痛やだるさは神経・静脈側の要素を反映している。検査法は暗記ではなく「どの関門を狭めて再現する手技か」で結びつけると取り違えない。

✓ 2. 正しい
ルーステスト
両肩を90度外転・外旋し肘を90度屈曲した「万歳」に近い肢位を保たせ、3分間手指の開閉を続けさせる。上肢のだるさ・しびれ・蒼白・脱力で3分続けられなければ陽性。特定の関門に限らず胸郭出口全体の負荷試験であり、しかもつり革を握る肢位そのものを再現するので本例では陽性になる。
✓ 4. 正しい
エデンテスト
座位で胸を張らせ、両肩を後ろ下方へ強く引かせる(気をつけの姿勢を誇張した肢位)。橈骨動脈の拍動が弱まる・消えるか、症状が誘発されれば陽性。この肢位は鎖骨を第1肋骨に近づけて肋鎖間隙を意図的に狭める。なで肩でもともと肋鎖間隙が狭い本例では陽性になりやすい。
✗ 1. 誤り
ドロップアームテスト
他動的に外転させた上肢をゆっくり下ろさせ、途中で保持できずに落ちるかをみる腱板(主に棘上筋)断裂の検査。みているのは肩の外転保持力であり、血管・神経の圧迫とは無関係。本例は肩の挙上力低下ではなく、上肢全体の鈍痛と冷感が主訴なので陽性にはならない。
✗ 3. 誤り
スパーリングテスト
頸部を患側へ側屈・伸展させて頭頂部から圧迫し、椎間孔を狭めて上肢への放散痛を誘発する検査で、頸椎症性神経根症をみる。圧迫の場所が頸椎の椎間孔であり、胸郭出口の3関門とは別。本例の症状は上肢の肢位で変動しており、頸部の運動で誘発される放散痛ではない。
ポイント
  • 胸郭出口の3関門と検査:斜角筋三角→アドソンテスト、モーリーテスト/肋鎖間隙→エデンテスト/小胸筋下→ライト(過外転)テスト/全体の負荷→ルーステスト。
  • なで肩の若い女性、上肢を挙げる・重い物を持つと悪化する鈍痛・だるさ・冷感は胸郭出口症候群を疑う典型。
  • ドロップアームは腱板、スパーリングは頸椎神経根。同じ「上肢の症状」でも出どころが違う。
  • 橈骨動脈の拍動減弱は健常者でも起こりうるので、1つの検査の陽性だけで決めず複数を組み合わせ、症状の再現を重視する。
  • 対応:僧帽筋上部・肩甲挙筋など肩甲帯を挙上する筋を鍛え、姿勢と作業環境(画面・机の高さ)を整える。荷物を患側に掛けない、上肢挙上作業に休憩をはさむなど日常動作の指導を行う。
比較表
検査法狙う部位手技の要点本例
ルーステスト胸郭出口全体両肩90度外転・外旋、肘90度屈曲で3分間の手指開閉陽性
エデンテスト肋鎖間隙胸を張り両肩を後下方へ引く。橈骨動脈拍動の減弱陽性
アドソンテスト斜角筋三角頸部を患側へ回旋・伸展し深呼吸。拍動の減弱—(選択肢外)
ライトテスト小胸筋下・烏口突起下肩を過外転・外旋。拍動の減弱—(選択肢外)
ドロップアームテスト腱板(棘上筋)外転位から下ろさせ保持できるか陰性
スパーリングテスト頸椎椎間孔頸部側屈・伸展+頭部圧迫で放散痛陰性
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