学習トップ理由で解く 柔道整復師リハビリテーション医学 ▸ §7 リハビリテーションの実際 / QJ26P017

理由で解く 柔道整復師

QJ26P017 リハビリテーション医学

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午後 問17
問題
脳卒中に伴う障害で同時性障害はどれか。2つ選べ。
選択肢
1 嚥下障害
2 褥瘡
3 変形性脊椎症
4 失認症
解答
正解1(嚥下障害)、4(失認症)
解説

脳卒中の障害は、脳病変そのものによって発症と同時に現れる「同時性障害」と、その後の経過のなかで二次的に加わる「経時性障害」に分けて整理する。ここでは嚥下障害(1)と失認症(4)が同時性障害にあたる。

同時性障害は、損なわれた脳部位の機能がそのまま失われたもので、片麻痺・感覚障害・失語・失認・失行・嚥下障害などが該当し、発症直後にほぼ出そろう。これに対し経時性障害は、麻痺や臥床・不使用、あるいは加齢変化を土台にして二次的に加わる障害で、褥瘡・関節拘縮・廃用性筋萎縮・起立性低血圧・骨粗鬆症・深部静脈血栓症などが並ぶ(廃用症候群として括られることが多い)。ただし加わる速さは一様ではなく、褥瘡のように圧迫が2時間を超えれば急性期でも生じうるものから、関節拘縮・廃用性筋萎縮のように週〜月単位、変形性脊椎症のように年単位で進むものまで幅がある。要は「時間の長短」ではなく「脳の損傷そのものによるか、二次的に加わったか」で線を引く。両者を区別する意味は、対応の方向がまったく違う点にある。同時性障害には機能回復訓練と代償手段の獲得を組み立て、経時性障害には早期離床・2時間ごとを目安とした体位変換と除圧・関節可動域訓練・良肢位保持といった予防を最優先で進める。選択肢を見たら「脳が壊れたその瞬間に生じたか」「二次的に後から加わったか」で二分するのが最短の解き方である。

✓ 1. 正しい
嚥下障害
延髄の嚥下中枢や皮質延髄路が障害されると、発症と同時に嚥下障害が出現する(球麻痺・偽性球麻痺)。誤嚥性肺炎という重大な合併症に直結するため、急性期から嚥下機能を評価し、食形態の調整や姿勢調整を早期に始める。
✓ 4. 正しい
失認症
失認は頭頂葉を中心とした連合野の損傷で生じる高次脳機能障害で、半側空間無視や身体失認などが代表である。これも脳の損傷そのものによる障害なので発症と同時に存在し、麻痺が軽くてもADLや安全確保に大きく影響するため、早期からの気づきと環境調整が要となる。
✗ 2. 誤り
褥瘡
褥瘡は、麻痺や臥床によって同一部位が持続的に圧迫され、組織が虚血に陥ることで生じる二次的(経時性)障害である。毛細血管圧(約32mmHg)を超える圧迫が2時間を超えて持続すると発生しうるとされ、脳卒中急性期に救急外来や画像検査で同一体位が数時間続いただけでも発赤・びらんが生じ、深部組織損傷として遅れて顕在化することもある。つまり発生は決して遅くはないが、脳の損傷そのものによる障害ではなく発症と同時に存在するものでもないため、本問の答えにはならない。だからこそ急性期から2時間ごとを目安とした体位変換と除圧を行い(体圧分散マットレス使用時はそれより間隔を延長できる)、皮膚の観察と栄養管理を組み合わせて予防する。
✗ 3. 誤り
変形性脊椎症
変形性脊椎症は椎間板・椎間関節の加齢性退行変性が年単位で進む病態で、脳卒中発症と同時に生じるものではない。脳卒中後の姿勢異常や長期の負荷で症状が顕在化することはあるが、位置づけは経時性の問題(あるいは併存疾患)であり、姿勢管理と適切な運動で進行と症状に対処する。
ポイント
  • 同時性障害=脳病変そのものによる障害。片麻痺・感覚障害・失語・失認・失行・嚥下障害など、発症と同時に出そろう。
  • 経時性障害=二次的に加わる障害。褥瘡・関節拘縮・廃用性筋萎縮・起立性低血圧・骨粗鬆症など(廃用症候群)。加わる速さは褥瘡の数時間〜日単位から退行変性の年単位まで幅がある。
  • 褥瘡は圧迫が2時間を超えると発生しうる(毛細血管圧約32mmHgを超える圧迫が持続)。急性期でも同一体位が数時間続けば発赤・びらんが生じるため、急性期から2時間ごとを目安とした体位変換・除圧・皮膚の観察・栄養管理で予防する(体圧分散マットレス使用時は間隔の延長が可能)。
  • 迷ったら「脳が壊れたその瞬間に生じたか/二次的に後から加わったか」で二分する。時間の長短ではなく成り立ちで判定する。加齢性の退行変性(変形性脊椎症など)は同時性ではない。
  • 対応の方向が異なる。同時性障害には機能回復訓練と代償手段、経時性障害には早期離床・2時間ごとを目安とした体位変換・関節可動域訓練という予防を最優先にする。
  • 嚥下障害は誤嚥性肺炎、失認(特に半側空間無視)は転倒・見落としに直結するため、急性期からの評価と環境調整が重要。
比較表
同時性障害(一次性)経時性障害(二次性・廃用)
成り立ち脳の損傷そのものによる機能喪失麻痺・臥床・不使用や加齢変化の積み重ね
出現時期発症と同時(急性期に出そろう)発症後に二次的に加わる(褥瘡は数時間〜日単位、拘縮・廃用は週〜月、退行変性は年単位)
代表例片麻痺、感覚障害、失語、失認、失行、嚥下障害褥瘡、関節拘縮、廃用性筋萎縮、起立性低血圧、骨粗鬆症、深部静脈血栓症
主な対応機能回復訓練、代償手段・自助具の獲得、環境調整早期離床、2時間ごとを目安とした体位変換・除圧、関節可動域訓練、良肢位保持
予防の可否発症そのものの予防が中心(再発予防・危険因子管理)ケアで大きく予防できる=予防が最優先
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