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理由で解く 柔道整復師

QJ26A106 病理学概論

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午前 問106
問題
正しいのはどれか。
選択肢
1 我が国の男性の悪性腫瘍部位別年齢調整死亡率の第一位は胃癌である。
2 我が国の男性の悪性腫瘍罹患率の第一位は肺癌である。
3 我が国で大腸癌の発生の多い部位は直腸、S状結腸である。
4 子宮頸癌はエプスタイン・バーウイルス感染により発症する。
解答
正解3(我が国で大腸癌の発生の多い部位は直腸、S状結腸である。)
解説

大腸癌は肛門に近い側、すなわち直腸とS状結腸に多く発生する。したがって正しいのは3である。

大腸は盲腸・上行結腸(右側)から横行結腸を経て下行結腸・S状結腸・直腸(左側)へと続くが、癌の発生には左側への偏りがある。右側から左側へ進むにつれて便から水分が吸収されて内容が濃縮され、発癌に関与するとされる二次胆汁酸などの物質が粘膜と長く強く接するためと説明される。第26回国家試験が行われた2018年前後に公表されていた統計でも、大腸癌の部位別発生はS状結腸と直腸で全体の半数以上を占めていた。なお左側大腸癌は便の通過障害が起きやすく血便が出やすいのに対し、右側大腸癌は内容が液状なので通過障害が起きにくく、貧血や腹部腫瘤として気づかれやすいという違いもある。統計を扱う選択肢は、その年の最新値ではなく出題年時点で公表されていた値で判断するのが原則である。また、同じ「がんの順位」でも死亡率(粗死亡率・年齢調整死亡率)と罹患率は別の指標なので、選択肢がどの指標を問うているかを必ず確認してから正誤を決める。

✓ 3. 正しい
我が国で大腸癌の発生の多い部位は直腸、S状結腸である。
便が濃縮され粘膜との接触時間が長くなる左側大腸に癌が多く、直腸とS状結腸で大腸癌の半数以上を占める。血便・便柱狭小・便通異常といった症状は、痔核などの良性疾患と紛らわしいので、自己判断せず大腸内視鏡などの精査につなげることが大切である。
✗ 1. 誤り
我が国の男性の悪性腫瘍部位別年齢調整死亡率の第一位は胃癌である。
出題当時、男性の悪性新生物の年齢調整死亡率の第1位は肺癌であり、胃癌ではない。設問が問うている年齢調整死亡率という指標そのもので、胃癌は第1位ではない。粗死亡数でみても男性の癌死亡の第1位は肺癌である。かつては胃癌が男性の癌死亡の第1位であったが、冷蔵技術の普及による塩蔵食品の減少とヘリコバクター・ピロリ感染率の低下を背景に、罹患・死亡とも長期の減少傾向をたどり、人口の高齢化の影響を除いた年齢調整死亡率ではとりわけ大きく低下した。
✗ 2. 誤り
我が国の男性の悪性腫瘍罹患率の第一位は肺癌である。
死亡率と罹患率を分けて考える必要がある。肺癌は予後が悪いため死亡順位が高くなるが、かかる人数でみた順位は別で、出題当時に用いられていたがん登録の統計では男性の罹患第1位は胃癌とされていた(その後、前立腺癌・大腸癌の増加により順位は変動していく)。いずれにせよ肺癌が第1位ではない。
✗ 4. 誤り
子宮頸癌はエプスタイン・バーウイルス感染により発症する。
子宮頸癌の主因はヒトパピローマウイルス(HPV)、とくに16型・18型など高リスク型の持続感染である。エプスタイン・バーウイルス(EBV)はバーキットリンパ腫・上咽頭癌・伝染性単核症などに関連する別のウイルスである。子宮頸癌は検診による前癌病変の発見とHPVワクチンで予防しうる癌として位置づけられている。
ポイント
  • 大腸癌は直腸・S状結腸に多い。左側は便が濃縮され、粘膜との接触時間が長いため。
  • 右側大腸癌は貧血・腹部腫瘤で、左側大腸癌は血便・通過障害で気づかれやすい。
  • 死亡率と罹患率は別物。さらに死亡率にも粗死亡率と年齢調整死亡率があり、選択肢がどの指標を問うているかを見極める。
  • 出題(2018年前後)時点で、男性の癌死亡は粗死亡数でも年齢調整死亡率でも第1位が肺癌、罹患第1位は胃癌とされていた。
  • ウイルスと癌:HPV→子宮頸癌、EBV→バーキットリンパ腫・上咽頭癌、HBV/HCV→肝細胞癌、HTLV-1→成人T細胞白血病、ピロリ菌(細菌)→胃癌。
比較表
病原体関連する悪性腫瘍
ヒトパピローマウイルス(HPV)子宮頸癌、中咽頭癌、肛門癌
エプスタイン・バーウイルス(EBV)バーキットリンパ腫、上咽頭癌、ホジキンリンパ腫の一部
B型・C型肝炎ウイルス肝細胞癌
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)成人T細胞白血病/リンパ腫
ヘリコバクター・ピロリ(細菌)胃癌、胃MALTリンパ腫

※統計の指標の使い分け:罹患率=新たにかかった人の割合、粗死亡率=人口あたりの実際の死亡数、年齢調整死亡率=基準人口に合わせて年齢構成の違いを取り除いた死亡率(高齢化の影響を除いた真の増減をみる指標)。出題当時、男性では罹患第1位が胃癌、死亡は粗・年齢調整のいずれでも第1位が肺癌であった。

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