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理由で解く 柔道整復師

QJ26A105 病理学概論

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午前 問105
問題
腫瘍マーカーと悪性腫瘍の組合せで誤っているのはどれか。
選択肢
1 癌胎児性抗原-大腸癌
2 α-フェトプロテイン-前立腺癌
3 ヒト絨毛性ゴナドトロピン-絨毛癌
4 CA 19-9-膵癌
解答
正解2(α-フェトプロテイン-前立腺癌)
解説

腫瘍マーカーは「どの細胞が作る物質か」を押さえると、対応する腫瘍が自然に決まります。α-フェトプロテイン(AFP)は肝細胞と卵黄嚢が作る胎児性蛋白で、前立腺癌のマーカーではありません(前立腺癌はPSA)。したがって組合せが誤っているのは 2 です。

腫瘍マーカーは物質の性格から①胎児性抗原(AFP・CEA)/②糖鎖抗原(CA19-9・CA125)/③ホルモン(hCG・カルシトニン)/④酵素・臓器特異蛋白(PSA)の4つに分けると整理できます。①は胎児期にだけ盛んに作られる蛋白が、癌化した細胞で再び作られるようになったもの。②〜④は、その組織が元来作っている糖鎖抗原・ホルモン・臓器特異的な酵素が、腫瘍の増大や組織構造の破綻に伴って血中に多く出てくるものです。AFPは胎生期の肝細胞と卵黄嚢が産生するため、成人では肝細胞癌卵黄嚢腫瘍(胚細胞腫瘍)で上昇します。一方、前立腺の腺上皮が精液を液化させるために分泌するセリンプロテアーゼ(カリクレイン3)がPSA(前立腺特異抗原)で、これは④の酵素・臓器特異蛋白にあたり、癌で腺構造が壊れて血中に漏れ出るため上昇します。つまり2は「肝臓・生殖細胞のマーカー」と「前立腺の腫瘍」を取り違えた組合せです。なお腫瘍マーカーは臓器特異性も感度も完全ではなく、肝炎・肝硬変、前立腺肥大症、膵炎・胆管炎、喫煙などの非腫瘍性病態でも上昇しうるため、確定診断は画像診断と病理組織診断で行い、マーカーは補助診断・治療効果判定・再発モニタリングに用いる、という位置づけで覚えてください。

✗ 1. 組合せは正しい(答えではない)
癌胎児性抗原-大腸癌
癌胎児性抗原(CEA)は胎児期の消化管上皮が産生する糖蛋白で、AFPと同じ胎児性抗原の仲間です。大腸癌をはじめとする消化器系・肺などの腺癌で上昇し、特に大腸癌では術後の再発モニタリングに用いられる代表的マーカーなので、組合せとして適切です。喫煙者や肝硬変などでも軽度上昇するため、単独の値ではなく推移(切除後に下がり、再上昇したら再発を疑う)で読むのがコツです。
✓ 2. 組合せが誤っている(これが答え)
α-フェトプロテイン-前立腺癌
α-フェトプロテイン(AFP)は胎生期の肝細胞と卵黄嚢が作るアルブミン類似の蛋白で、成人では肝細胞癌卵黄嚢腫瘍などの胚細胞腫瘍で高値になります。前立腺癌に対応するマーカーはPSA(前立腺特異抗原)であり、AFPと前立腺癌は結びつきません。前立腺癌は骨転移(造骨性)を起こしやすく、PSAは検診・治療効果判定・再発の指標として使われる、とセットで覚えておきましょう。
✗ 3. 組合せは正しい(答えではない)
ヒト絨毛性ゴナドトロピン-絨毛癌
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)は胎盤の合胞体栄養膜細胞が分泌するホルモンです。絨毛癌はその栄養膜細胞が悪性化した腫瘍なので、hCGが著明高値となり、診断だけでなく化学療法の効果判定や再発チェックにもそのまま使えます。「元の細胞が作るものを腫瘍も作り続ける」という典型例として理解すると忘れません。ここで注意したいのは良性・悪性の線引きで、栄養膜性疾患のうち胞状奇胎(全奇胎・部分奇胎)は良性(絨毛癌に進みうる前癌病変)、子宮筋層へ食い込む侵入奇胎絨毛癌が悪性の絨毛性腫瘍です。正常妊娠でもhCGは高値になるため、値の高さだけで悪性とは判断できません。
✗ 4. 組合せは正しい(答えではない)
CA 19-9-膵癌
CA19-9は膵管・胆管などの上皮が産生するシアル化糖鎖抗原で、膵癌・胆道癌で高値となる代表的マーカーです。組合せとして適切で、膵癌の補助診断と経過観察に広く用いられます。ただしルイス(Lewis)式血液型陰性の人ではこの糖鎖自体を作れず偽陰性となること、膵炎・胆管炎など良性の閉塞・炎症でも上昇することを併せて押さえ、画像所見と合わせて判断する姿勢を持ちましょう。
ポイント
  • AFP=肝細胞癌・卵黄嚢腫瘍前立腺癌=PSA。この2つを入れ替える出題が定番なので、セットで暗記する。
  • 腫瘍マーカーの4分類=胎児性抗原(AFP・CEA)/糖鎖抗原(CA19-9・CA125)/ホルモン(hCG)/酵素・臓器特異蛋白(PSA)。PSAはセリンプロテアーゼであり、ホルモンでも糖鎖抗原でもない。
  • CEA=大腸癌など消化器・肺の腺癌。AFPと同じ「胎児性抗原」の仲間で、術後の再発モニタリングに使う。
  • hCG=絨毛癌・侵入奇胎(悪性の絨毛性腫瘍)。胞状奇胎は良性の栄養膜性疾患で、正常妊娠でもhCGは高値になる。CA19-9=膵癌・胆道癌(膵胆道上皮の糖鎖抗原)。
  • 覚え方の軸は「そのマーカーをどの細胞が作るか」。産生細胞が分かれば対応する腫瘍は自動的に決まる。
  • 腫瘍マーカーは臓器特異性・感度とも不完全で、肝炎・前立腺肥大症・膵炎・喫煙などでも上昇する。確定診断は画像+病理で行い、マーカーは補助診断と経過観察に用いる。
比較表
腫瘍マーカー分類産生する細胞・組織代表的な悪性腫瘍押さえどころ
AFP(α-フェトプロテイン)胎児性抗原胎生期の肝細胞・卵黄嚢肝細胞癌、卵黄嚢腫瘍(胚細胞腫瘍)肝炎・肝硬変、妊娠でも上昇
CEA(癌胎児性抗原)胎児性抗原胎児期の消化管上皮大腸癌など消化器・肺の腺癌術後再発モニタリングの定番。喫煙でも軽度上昇
CA19-9糖鎖抗原膵管・胆管などの上皮膵癌、胆道癌Lewis式血液型陰性では偽陰性。膵炎・胆管炎でも上昇
CA125糖鎖抗原体腔上皮由来の組織卵巣癌子宮内膜症・月経・妊娠でも上昇
hCGホルモン胎盤の合胞体栄養膜細胞絨毛癌、侵入奇胎、精巣・卵巣の胚細胞腫瘍胞状奇胎(良性の栄養膜性疾患)や正常妊娠でも高値。治療効果判定にそのまま使える
PSA(前立腺特異抗原)酵素・臓器特異蛋白前立腺の腺上皮前立腺癌本体はセリンプロテアーゼ。前立腺肥大症・前立腺炎でも上昇
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