学習トップ / 理由で解く 柔道整復師 / 柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ25P106
理由で解く 柔道整復師
小児期の肘の骨折後に残った外反肘を土台として、肘部管で尺骨神経が障害された遅発性尺骨神経麻痺と考えられます。したがって現れるのは尺骨神経支配領域の所見、すなわちフローマン徴候陽性です。
小児の上腕骨外顆骨折は骨片が回転して転位しやすく、偽関節や変形治癒を残して外反肘となることがあります。尺骨神経は上腕骨内側上顆の後方にある肘部管を通るため、外反肘では神経が常に引き伸ばされ、さらに肘を屈曲するたびに肘部管が狭くなって圧迫と摩擦を受けます。この負担が積み重なり、受傷から数年〜数十年を経て麻痺が現れるものを遅発性尺骨神経麻痺と呼びます。ここで整理しておきたいのが感覚の支配範囲です。尺骨神経は前腕には皮枝を出さず、その皮膚支配は掌側枝・背側枝による手部、すなわち手掌と手背の尺側・小指全体・環指尺側半に限られます。前腕内側(尺側)の皮膚を支配するのは内側神経束から分かれる内側前腕皮神経です。本例が訴える「肘内側部から前腕尺側にかけてのしびれ」は、肘部管で絞扼された神経幹そのものが刺激されて生じる自覚症状であり、皮膚支配領域の感覚脱失とは区別して考えます。運動面では骨間筋・母指内転筋・小指球筋といった手内在筋の筋力低下が起こり、握力やつまみ動作の低下として自覚されます。本例は「肘屈曲で誘発・悪化するしびれ」「肘内側から尺側に広がる症状分布」「外反肘変形」「握力低下」がそろって肘部管部での尺骨神経障害を指しており、筋萎縮が進む例では除圧の要否を判断する必要があるため、所見を記録したうえで整形外科への受診を勧め、肘を深く曲げたままの姿勢を長く続けない・肘の内側を机などで圧迫しないといった生活指導を併せて行います。
| 障害神経 | 感覚が鈍る部位(皮膚支配) | 変形(麻痺手) | 代表的な徴候 |
|---|---|---|---|
| 尺骨神経 | 手掌・手背の尺側、小指全体、環指尺側半(前腕には皮枝を出さない) | 鷲手 | フローマン徴候陽性、指の交叉不能、第1背側骨間筋の萎縮 |
| 正中神経 | 手掌橈側・母指〜環指橈側半 | 猿手 | 母指球筋の萎縮、母指対立不能、涙のしずくサイン |
| 橈骨神経 | 手背橈側(母指・示指基部) | 下垂手 | 手関節・手指の伸展不能、母指の伸展不能 |
| 内側前腕皮神経 | 前腕内側(尺側)の皮膚 | — | 単独障害はまれ。前腕尺側の感覚を担う点を尺骨神経と区別する |
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