学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ25P105

理由で解く 柔道整復師

QJ25P105 柔道整復理論

出典:第25回柔道整復師国家試験(2017)午後 問105
問題
45歳の男性。右前腕掌側近位に急激な疼痛が出現し、その3日後から母指と示指が曲がりにくいとの主訴で来所した。母指と示指でマルを作る動作を指示したところ、図のような障害を呈した。考えられるのはどれか。
図
選択肢
1 母指球筋の萎縮
2 方形回内筋の麻痺
3 示指末節部の感覚異常
4 背側骨間筋の萎縮
解答
正解2(方形回内筋の麻痺)
解説

母指と示指できれいな輪(マル)が作れず、指先が伸びたまま接する「涙のしずく型」になるのは前骨間神経麻痺の典型所見で、この神経が支配する方形回内筋の麻痺が起こります。

前骨間神経は、正中神経が肘関節のやや遠位で分かれる純粋な運動枝で、長母指屈筋・示指(および中指)の深指屈筋・方形回内筋の3つを支配します。麻痺すると母指のIP関節と示指のDIP関節を屈曲できなくなり、輪を作らせると両指の末節が曲がりきらず涙滴状になります(ティアドロップサイン、パーフェクトO試験陽性)。感覚枝をもたないため、しびれや感覚障害が出ないことが正中神経本幹の障害との決定的な違いです。本症例のように前腕近位掌側の急な痛みで始まり、数日遅れて運動麻痺が現れる経過は、この麻痺で典型的に語られる発症様式です。徒手検査で運動麻痺の範囲を確認したうえで、神経障害が疑われる以上は医療機関での評価につなげます。

✓ 2. 正しい
方形回内筋の麻痺
方形回内筋は前骨間神経の支配筋で、長母指屈筋・示指深指屈筋とともに麻痺します。肘を屈曲させて円回内筋の関与を減らした状態で回内力を診ると、筋力低下が確認できます。
✗ 1. 誤り
母指球筋の萎縮
短母指外転筋などの母指球筋は正中神経本幹の反回枝が支配し、前骨間神経の支配ではありません。母指球の萎縮(猿手)は手根管症候群など本幹の障害でみられる所見です。
✗ 3. 誤り
示指末節部の感覚異常
前骨間神経は純運動枝で皮膚感覚を担いません。指先の感覚異常があるなら、障害部位は前骨間神経ではなく正中神経本幹を考えます。
✗ 4. 誤り
背側骨間筋の萎縮
背側骨間筋は尺骨神経の支配です。萎縮すれば第1背側骨間筋部の陥凹や鷲手を生じますが、これは尺骨神経麻痺の所見であり本症例とは支配神経が異なります。
ポイント
  • 前骨間神経=正中神経から肘の下で分岐する純粋な運動枝。感覚障害は出ない。
  • 支配筋は長母指屈筋・示指(中指)深指屈筋・方形回内筋の3つ。
  • 母指IP・示指DIPが曲がらず、輪が涙滴状になる(ティアドロップサイン/パーフェクトO試験)。
  • 母指球筋は正中神経本幹(反回枝)、骨間筋は尺骨神経の支配。支配の境界で選択肢を切り分ける。
  • 神経麻痺を疑ったら経過を追いつつ医療機関での評価につなぐ。
比較表
前骨間神経麻痺正中神経本幹の障害
感覚障害なし(純運動枝)あり(母指〜環指橈側)
母指球筋侵されない萎縮しうる(猿手)
特徴的所見ティアドロップサイン母指球萎縮、感覚異常
代表的な支配筋長母指屈筋・示指深指屈筋・方形回内筋前腕屈筋群+母指球筋
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