学習トップ / 理由で解く 柔道整復師 / 柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ25P104
理由で解く 柔道整復師
投球動作で1か月かけて出現した肩痛で、熱感はわずか、自動運動の制限はなく、挙上時と外転外旋時に「疼痛+引っかかり感」が出る——これは関節唇の損傷と、肩峰下でのはさみ込み(インピンジメント)を示す所見の組み合わせです。したがって1. SLAP損傷と4. 肩峰下インピンジメント症候群の2つを考えます。
投球のコッキング後期から加速期にかけて、肩関節は最大外転・最大外旋位をとります。この肢位では上腕二頭筋長頭腱の起始部(上方関節唇)にねじれるような牽引力が加わり、上方関節唇が関節窩から剥がれていきます(いわゆる peel-back 機序)。剥がれた関節唇が骨頭と関節窩の間に挟まると、外転外旋のたびに「引っかかる」「コクッと鳴る」という訴えになります。これがSLAP損傷です。一方、腕を挙げていく過程では大結節が烏口肩峰アーチ(肩峰・烏口肩峰靱帯)に近づき、その間にある腱板と肩峰下滑液包が圧迫されます。ここに炎症が起これば挙上の途中(およそ60〜120度)で痛みが出る painful arc となり、これが肩峰下インピンジメント症候群です。投球障害肩では、関節内(関節唇)の問題と関節外(肩峰下)の問題は互いを悪化させる関係にあり、この2つが併存することはむしろ典型的です。本症例の「わずかな熱感」は滑膜・滑液包の軽度な炎症を反映したものです。なお「自動運動の可動域が保たれている」ことは、急性の激痛で発症し可動域が著しく制限される病態から距離を置く手がかりにはなりますが、それ単独で他疾患を切れる決定打ではありません。21歳男性・投球動作の反復という発症背景と、外転外旋時の機械的な引っかかり感という所見を軸に組み立てるのが確実です。
| 疾患 | 好発・背景 | 発症様式 | 主な症状 | 可動域(自動・他動) | 誘発テスト |
|---|---|---|---|---|---|
| SLAP損傷(正答) | 若年の投球・オーバーヘッド動作者 | 反復動作により徐々に | 外転外旋時痛、引っかかり感・クリック | おおむね保たれる | O'Brien、クランク、Speed |
| 肩峰下インピンジメント症候群(正答) | 挙上動作の反復(年齢は幅広い) | 徐々に | 挙上時痛(painful arc 60〜120度)、軽度の熱感 | おおむね保たれる(痛む角度帯あり) | Neer、Hawkins-Kennedy |
| 肩甲上神経麻痺 | 絞扼(肩甲切痕部、棘窩切痕部のガングリオン等)、牽引 | 徐々に | 外旋筋力低下、棘上窩・棘下窩の筋萎縮。肩甲切痕部絞扼では肩後外側の鈍痛を伴うことが多く、棘窩切痕部絞扼では痛みに乏しい | 他動・自動とも保たれる(三角筋が代償)。制限ではなく外旋筋力の低下として現れる | 筋力テスト、筋電図・MRI(医科) |
| 石灰沈着性肩関節周囲炎 | 40〜50歳代の女性に多い | 急性型=夜間などに突然の激痛/亜急性・慢性型=緩徐 | 急性型=強い熱感・腫脹、安静時痛・夜間痛/慢性型=運動時痛が主体 | 急性型は著明に制限(他動も困難)/慢性型は保たれることもある | 単純エックス線で石灰陰影(医科) |
解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。