学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ25P103

理由で解く 柔道整復師

QJ25P103 柔道整復理論

出典:第25回柔道整復師国家試験(2017)午後 問103
問題
45歳の男性。2か月前に右手を衝き転倒した。前腕部の脱臼骨折に対してギプス固定にて加療された。その後、痛みや感覚の障害はないが、指が伸びないと来所した。MP 関節は伸展できないが、手関節は背屈可能であった。考えられるのはどれか。
選択肢
1 円回内筋による前骨間神経障害
2 尺骨神経障害による鷲手変形
3 ギプスによる手指屈曲拘縮
4 橈骨頭による後骨間神経障害
解答
正解4(橈骨頭による後骨間神経障害)
解説

感覚障害がなく、手関節の背屈はできるのにMP関節が伸展できない。これは後骨間神経(橈骨神経深枝)という純運動枝だけが障害された像であり、正答は4。

橈骨神経は肘の外側で浅枝(感覚枝)と深枝に分かれ、深枝は回外筋の二頭の間(フローゼのアーケード)を通って後骨間神経となり、総指伸筋・小指伸筋・尺側手根伸筋・長母指外転筋・長短母指伸筋などを支配する。感覚枝を含まないため、障害されても痛みやしびれは出ない。また、長橈側手根伸筋への枝は分岐部より近位で出るので、後骨間神経麻痺でも手関節の背屈は可能(ただし橈側に偏る)である点が最大の鑑別点になる。前腕近位部の脱臼骨折、とくに橈骨頭が脱臼を残した状態や、その後の橈骨頭の位置異常・仮骨・固定による圧迫が原因となりうる。MP関節が伸展できない下垂指の状態に対しては、伸展補助装具で指を伸展位に保って二次的な拘縮を防ぎつつ、原因(橈骨頭の整復状態)を評価してもらうため整形外科での再診につなぐ。

✓ 4. 正しい(考えられる)
橈骨頭による後骨間神経障害
感覚障害がないこと、手関節背屈は可能でMP関節伸展のみができないこと、前腕近位部の脱臼骨折の既往があることの3点がそろい、橈骨頭に関連した後骨間神経の障害としてよく説明できる。
✗ 1. 考えにくい
円回内筋による前骨間神経障害
前骨間神経は正中神経の運動枝で、長母指屈筋・深指屈筋の橈側半・方形回内筋を支配する。障害されると母指IP関節と示指DIP関節が「曲がらない」のであって、本例の「伸びない」とは逆の所見になる。
✗ 2. 考えにくい
尺骨神経障害による鷲手変形
鷲手変形は環指・小指のMP関節過伸展とIP関節屈曲を示すもので、骨間筋・虫様筋の麻痺による。手内在筋の萎縮に加え、尺骨神経は感覚枝をもつため小指側の感覚障害を伴うのが通常である。感覚障害がない本例とは合致しない。
✗ 3. 考えにくい
ギプスによる手指屈曲拘縮
拘縮であれば他動的にも伸展が制限され、手指全体の可動域低下として現れることが多い。MP伸展だけが自動的にできないという選択的なパターンは、拘縮より伸筋を動かす神経の障害を示唆する。自動と他動の可動域を比較することが鑑別の要点である。
ポイント
  • 後骨間神経は純運動枝。麻痺しても感覚障害が出ないのが最大の特徴。
  • 長橈側手根伸筋への枝は分岐より近位で出るため、手関節背屈は可能(橈側偏位を伴う)。
  • MP関節が伸展できない下垂指(drop finger)が主症状。手関節が落ちる下垂手とは区別する。
  • 前腕近位部の脱臼骨折(橈骨頭脱臼を伴うもの)に続発しうる。
  • 伸展補助装具で拘縮を防ぎつつ、原因評価のため整形外科での再診につなぐ。
比較表
障害される神経運動障害感覚障害
後骨間神経(橈骨神経深枝)MP関節伸展不能(下垂指)。手関節背屈は可能なし
橈骨神経本幹(上腕中央部)下垂手(手関節背屈も不能)手背橈側にあり
前骨間神経(正中神経の運動枝)母指IP・示指DIPの屈曲不能なし
尺骨神経鷲手変形、手内在筋の萎縮小指・環指尺側にあり
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