学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ25P102

理由で解く 柔道整復師

QJ25P102 柔道整復理論

出典:第25回柔道整復師国家試験(2017)午後 問102
問題
75歳の女性。自宅の庭で転倒し受傷した。来所時左肩周辺の疼痛を訴え、上肢の挙上不能であった。なお、骨粗鬆症により円背がみられる。単純エックス線写真(別冊 No. 1)を別に示す。治療方針で適切なのはどれか。2つ選べ。
図
選択肢
1 積極的に徒手整復を行う。
2 4週間程度は患肢を体幹に固定する。
3 ハンギングキャストの適応となる。
4 固定除去後はコッドマン体操が有効である。
解答
正解2(4週間程度は患肢を体幹に固定する。)、4(固定除去後はコッドマン体操が有効である。)
解説

骨粗鬆症のある75歳女性が転倒し、肩周辺の疼痛と挙上不能を示した状況は上腕骨近位端(外科頸)骨折を強く示唆します。方針としては患肢を体幹に保持する固定で安静を保ち(選択肢2)、固定除去後にコッドマン体操で肩の可動域を回復させる(選択肢4)のが適切です。

高齢者の外科頸骨折は骨脆弱性が背景にあるため、強い牽引や反復した整復操作は骨片の粉砕、腋窩神経・後上腕回旋動脈の損傷を招きやすく、積極的な徒手整復は選びません。固定肢位は骨折型により異なり外転型では上腕を体幹に固定し、内転型では腋窩枕子を用いて軽度外転位を保持します。ただしどちらの型でも、患肢を体幹に保持して上肢の重量と回旋の力を骨折部に伝えないという点は共通の原則で、本問が問うているのはその固定期間(およそ3~4週間)です。固定中も手指・手関節・肘の自動運動を毎日行って浮腫と拘縮を防ぎます。円背があるため枕子や固定帯の当て方は前傾した体幹に合わせ、皮膚の圧迫や呼吸のしにくさが出ないよう毎回確認します。この年代は固定期間中に肩関節拘縮を残しやすいので、固定除去後は体幹を前傾させて腕を垂らし、振り子のように動かすコッドマン体操から始め、他動 → 自動介助 → 自動運動へ段階的に進めます。単純エックス線写真(別冊No.1)は骨折の部位・骨折型と転位の程度を確認するためのもので、転位が大きい例や合併症が疑われる例は速やかに医療機関へ紹介します。

✓ 2. 適切
4週間程度は患肢を体幹に固定する。
外科頸骨折の保存療法では、骨折型に応じた肢位(外転型=上腕を体幹に固定/内転型=腋窩枕子で軽度外転位を保持)をとりますが、いずれの型でも患肢を体幹に保持して上肢の重量と回旋の力を骨折部に伝えないという点は共通します。この共通原則からみて、高齢者では3~4週間程度が固定期間の目安であり、選択肢の設定として妥当です。固定中も手指・肘の自動運動を続けて浮腫と拘縮を防ぎます。
✓ 4. 適切
固定除去後はコッドマン体操が有効である。
コッドマン体操(振り子運動)は、体幹を前傾させて上肢を脱力して垂らし、その重みで肩関節を大きな筋活動なしに動かす運動です。骨折部への負担が小さく、固定後の拘縮予防・可動域回復の第一段階として適しています。痛みの範囲内で少しずつ振幅を広げ、他動 → 自動介助 → 自動へ進めます。
✗ 1. 不適切
積極的に徒手整復を行う。
骨粗鬆症のある高齢者では骨が脆く、強い牽引や反復する整復操作は骨片の粉砕や腋窩神経・血管損傷につながるおそれがあります。外科頸骨折は転位が軽度なら整復せずに固定して経過をみることが多く、明らかな転位があって整復を要する場合は医療機関で画像下に評価・処置を受けられるよう紹介するのが適切な対応です。
✗ 3. 不適切
ハンギングキャストの適応となる。
ハンギングキャストは上腕にギプスの重さをぶら下げ、その重量牽引で整復位を得る方法で、主に上腕骨骨幹部の斜骨折・螺旋骨折に用いられます。近位端(外科頸)骨折に用いると牽引が過剰に働いて骨片の離開や遷延治癒を招きやすく、円背のある高齢者では重量の負担や装着中の姿勢維持も難しくなります。この症例の選択肢としては適していません。
ポイント
  • 高齢者+骨粗鬆症+転倒+肩周辺痛・挙上不能 → まず上腕骨外科頸骨折を想起する。
  • 骨脆弱性があるため積極的な徒手整復は行わない。転位が大きければ医療機関へ紹介する。
  • 固定肢位は骨折型で異なる外転型=上腕を体幹に固定内転型=腋窩枕子で軽度外転位を保持。柔整理論の頻出鑑別点。
  • 共通原則は患肢を体幹に保持して上肢の重量と回旋力を骨折部に伝えないこと。期間はいずれも3~4週間が目安で、固定中も手指・手関節・肘の自動運動を続ける。
  • 固定除去後はコッドマン体操(振り子運動)から開始し、他動 → 自動介助 → 自動へ段階的に進める。
  • ハンギングキャストは上腕骨骨幹部骨折向け。近位端骨折・円背の高齢者には適さない。
  • 合併症チェック:腋窩神経(三角筋部の知覚・外転)と末梢循環を初診時と経過中に確認する。
比較表
上腕骨外科頸骨折(本症例)上腕骨骨幹部骨折
典型的な背景高齢者の転倒、骨粗鬆症直達外力、投球など捻転力
整復の考え方転位が軽度なら整復せず固定。強い操作は避ける整復位保持のため重量牽引を利用できる
代表的な固定患肢を体幹に保持して3~4週。肢位は骨折型で異なる(外転型=上腕を体幹に固定/内転型=腋窩枕子で軽度外転位)ハンギングキャスト、機能的装具
注意する合併症腋窩神経麻痺、肩関節拘縮橈骨神経麻痺、偽関節
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