学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ25P107

理由で解く 柔道整復師

QJ25P107 柔道整復理論

出典:第25回柔道整復師国家試験(2017)午後 問107
問題
40歳の女性。3か月前からマラソン大会に向けランニングを始めた。1週前からランニング中に右膝関節部に疼痛を感じるようになった。特に腫脹はみられず、図のように大腿骨外顆やや近位を圧迫しながら膝関節を伸展させると疼痛が誘発された。考えられるのはどれか。
図
選択肢
1 ジャンパー膝
2 腸脛靱帯炎
3 半月板損傷
4 膝外側側副靱帯損傷
解答
正解2(腸脛靱帯炎)
解説

ランニング量を増やしてから生じ、大腿骨外顆のやや近位を圧迫しながら膝を伸展させると誘発される疼痛は、腸脛靱帯炎(いわゆるランナー膝)の典型像です。

腸脛靱帯は大腿筋膜張筋と大殿筋から続き、大腿外側を下って脛骨のGerdy結節に付きます。膝を曲げ伸ばしすると腸脛靱帯が大腿骨外側上顆の上を前後に乗り越えるように動くため、走行を繰り返すとこの部位で摩擦が生じて炎症を起こします。摩擦が最も強くなるのは膝屈曲30度付近で、着地衝撃を何万回と繰り返す長距離走で発症しやすい理由がここにあります。本症例は3か月前にランニングを始め、1週前から右膝関節部に疼痛が出現し、腫脹はなく、大腿骨外顆やや近位の圧迫+膝伸展で疼痛が誘発された、という経過です。この誘発手技は腸脛靱帯を外側上顆に押しつけて摩擦を再現するもので、腫脹を伴わない点も関節内病変ではなく靱帯と骨の摩擦による障害であることを支持します。誘発テストは2つが並んで教科書に載ります。グラスピングテストは外側上顆の近位で腸脛靱帯を母指で把持・圧迫しながら膝を伸展させる手技、ノーブル(圧迫)テストは大腿骨外側上顆部を圧迫しながら膝を屈伸させ屈曲30度付近で疼痛をみる手技で、圧迫する部位と手の使い方が異なります。同じものとしてまとめて覚えないでください。対応は、走行距離の急な増加・路面の傾斜・シューズの摩耗・O脚傾向といった負荷因子を見直したうえで、大腿筋膜張筋と腸脛靱帯のストレッチ、股関節外転筋の強化を行い、痛みの出ない範囲から段階的に走行量を戻していきます。

✓ 2. 正しい
腸脛靱帯炎
ランニング量の増加に伴って生じる代表的な使い過ぎ障害です。大腿骨外側上顆やや近位の圧迫と膝伸展で疼痛が誘発され、腫脹を伴わないという本症例の所見にそのまま合致します。
✗ 1. 誤り
ジャンパー膝
膝蓋腱の使い過ぎによる障害で、ジャンプの踏み切り・着地や急な切り返しの反復で生じます。圧痛は膝蓋骨下極から膝蓋腱、すなわち膝の前面にあり、本症例の誘発部位(大腿骨外顆やや近位=外側)と一致しません。
✗ 3. 誤り
半月板損傷
荷重した膝をひねるという明確な受傷機転で起こることが多く、関節裂隙の圧痛、引っかかり感やロッキング、マックマレーテスト陽性などがみられます。関節内病変のため腫脹(関節水腫・血症)を伴いやすく、腫脹のない本症例とは合いません。
✗ 4. 誤り
膝外側側副靱帯損傷
膝に内反を強制する外力が加わって生じる外傷で、内反ストレステストで疼痛・動揺を認めます。単発の外力による損傷であり、明確な外傷歴のない走り込みの経過とは成り立ちが異なります。
ポイント
  • 腸脛靱帯炎=腸脛靱帯と大腿骨外側上顆の摩擦による使い過ぎ障害。ランナー膝の代表。
  • 摩擦が最大になるのは膝屈曲30度付近。長距離走・下り坂・傾斜路面で悪化しやすい。
  • 圧痛は関節裂隙ではなく外側上顆(やや近位)。腫脹を伴わないことが多い。
  • 誘発テストは2つ。グラスピングテスト=外側上顆近位で腸脛靱帯を把持・圧迫しながら膝を伸展。ノーブル(圧迫)テスト=外側上顆部を圧迫しながら膝を屈伸し、屈曲30度付近で疼痛。圧迫部位と手技が異なる別のテストで、同義語ではない。
  • 対応は走行量・路面・シューズの見直し、大腿筋膜張筋のストレッチ、股関節外転筋の強化、段階的な復帰。
  • 膝外側の痛みでも、外傷歴があれば外側側副靱帯損傷や半月板損傷を鑑別する。
比較表
疾患痛みの部位成り立ち誘発テスト
腸脛靱帯炎膝外側(大腿骨外側上顆〜その近位)走行の反復(使い過ぎ)グラスピングテスト/ノーブル(圧迫)テスト
ジャンパー膝膝前面(膝蓋骨下極〜膝蓋腱)ジャンプ動作の反復膝蓋腱の圧痛、抵抗下伸展痛
半月板損傷関節裂隙荷重+回旋の外傷が多いマックマレーテスト
膝外側側副靱帯損傷膝外側(靱帯走行部)内反を強制する外力内反ストレステスト
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