学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §25 臨床実地問題 / QJ25P065

理由で解く 柔道整復師

QJ25P065 整形外科学

出典:第25回柔道整復師国家試験(2017)午後 問65
問題
63歳の女性。特に誘因なく3週前から腰痛が出現したため受診した。単純エックス線写真で第1腰椎の圧迫骨折を認め、骨密度を計測したところ、 T値(若年成人の平均値:YAM 値)に対する比率は74%であった。誤っているのはどれか。
選択肢
1 定期的な骨密度の測定を行う。
2 骨密度の数値から骨粗鬆症と診断する。
3 適度な運動を指導する。
4 選択的エストロゲン受容体調整薬の適応となる。
解答
正解2(骨密度の数値から骨粗鬆症と診断する。)
解説

この症例は、明らかな誘因なく生じた第1腰椎の圧迫骨折、すなわち椎体の脆弱性骨折があります。原発性骨粗鬆症の診断基準では、椎体または大腿骨近位部の脆弱性骨折があれば骨密度の値にかかわらず骨粗鬆症と診断するため、診断の根拠は骨折であって骨密度の数値ではありません。

本問が出題された第25回当時に用いられていた原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版)では、椎体骨折または大腿骨近位部骨折があれば骨密度を問わず骨粗鬆症、それ以外の部位の脆弱性骨折があれば骨密度が若年成人平均値(YAM)の80%未満で骨粗鬆症、脆弱性骨折がなければ骨密度がYAMの70%以下(または−2.5SD以下)で骨粗鬆症、と定められています。本例の骨密度はYAMの74%で、70%以下という基準は満たさず、骨折がなければ「骨量減少」に相当する数値です。それでも骨粗鬆症と診断できるのは、椎体の脆弱性骨折という決定的な所見があるからです。数値だけを根拠にすると、この患者を治療対象から外してしまいかねません。ひとたび椎体骨折を起こすと次の骨折の危険が大きく高まるため、薬物療法とあわせて、荷重のかかる運動と背筋の強化、転倒しにくい住環境づくり、栄養(カルシウム・ビタミンD・蛋白質)の指導を組み合わせ、治療効果を骨密度測定で追っていく流れになります。

✓ 2. これが誤り(正答)
骨密度の数値から骨粗鬆症と診断する。
YAMの74%という値は、脆弱性骨折がない場合の診断基準(70%以下)を満たさず、数値だけでは骨量減少の段階です。本例が骨粗鬆症と診断されるのは、椎体(第1腰椎)の脆弱性骨折があるからであり、根拠を骨密度に置く点が誤っています。診断の順序は「まず脆弱性骨折の有無、次に骨密度」と覚えると取り違えません。
✗ 1. 適切な対応(答えではない)
定期的な骨密度の測定を行う。
骨密度は治療効果の判定と経過観察の指標になるため、同一の測定部位・機器でおおむね半年から1年ごとに繰り返し測定します。数値の推移を追うことで、薬剤の効果や服薬の継続状況を評価できます。
✗ 3. 適切な対応(答えではない)
適度な運動を指導する。
荷重のかかる歩行などの運動と背筋の強化は、骨量の維持だけでなく、バランス能力の向上を通じて転倒・骨折の予防にも役立ちます。急性期の疼痛が強い時期は無理をせず、疼痛の軽減に合わせて段階的に活動量を増やしていきます。
✗ 4. 適切な対応(答えではない)
選択的エストロゲン受容体調整薬の適応となる。
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)は、骨ではエストロゲン様に働いて骨吸収を抑え、閉経後骨粗鬆症で椎体骨折を抑制する薬剤です。63歳の閉経後女性で椎体骨折を有する本例は、薬物療法の対象として妥当な選択肢に含まれます。
ポイント
  • 椎体骨折または大腿骨近位部骨折の脆弱性骨折があれば、骨密度の値によらず骨粗鬆症と診断する。
  • その他の部位の脆弱性骨折があるときは、骨密度がYAMの80%未満で骨粗鬆症。
  • 脆弱性骨折がないときは、骨密度がYAMの70%以下(または−2.5SD以下)で骨粗鬆症。
  • 本例はYAM 74%で数値上は骨量減少域だが、椎体骨折があるため骨粗鬆症と診断される。
  • 治療は薬物療法(SERM、ビスホスホネートなど)に加え、荷重運動・背筋強化・転倒予防・栄養指導を組み合わせ、骨密度で効果を追う。
比較表
条件判定
椎体骨折または大腿骨近位部骨折(脆弱性骨折)がある骨密度にかかわらず骨粗鬆症
その他の部位の脆弱性骨折があり、骨密度がYAMの80%未満骨粗鬆症
脆弱性骨折がなく、骨密度がYAMの70%以下(または−2.5SD以下)骨粗鬆症
脆弱性骨折がなく、骨密度がYAMの70%超80%未満骨量減少
本症例(第1腰椎の圧迫骨折あり、YAM 74%)骨折を根拠に骨粗鬆症
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