学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §23 部位別各論 下腿・足関節 / QJ25P064

理由で解く 柔道整復師

QJ25P064 整形外科学

出典:第25回柔道整復師国家試験(2017)午後 問64
問題
アキレス腱周囲炎の所見で誤っているのはどれか。
選択肢
1 背屈制限が存在する。
2 背屈するとアキレス腱部に礫音が生じる。
3 アキレス腱の付着部に圧痛と腫脹が存在する。
4 足部は回内変形している。
解答
正解3(アキレス腱の付着部に圧痛と腫脹が存在する。)
解説

アキレス腱周囲炎は、腱そのものを包む結合組織(パラテノン)が繰り返す摩擦で炎症を起こす障害です。痛みと腫脹が出るのは踵骨付着部ではなく、そこより数センチ近位の腱周囲であるという点が、他の踵部痛と区別する鍵になります。

アキレス腱には腱鞘がなく、代わりにパラテノンという疎な結合組織が腱を包み、滑走を助けています。ランニングや跳躍の反復、硬い路面、急な練習量の増加といった負荷が加わると、この層が腱と擦れて炎症・肥厚を起こし、運動時痛と圧痛、そして腱を動かしたときの軋轢音(捻髪音)が生じます。下腿三頭筋の柔軟性低下があると足関節の背屈が制限され、走行のたびに腱へのストレスが増すため、背屈制限は所見であると同時に増悪因子でもあります。足部の過回内など下肢アライメントの偏りも腱に捻れの力を加えて発症を後押しします。したがって対応は、患部の負荷を減らしつつ下腿三頭筋のストレッチで背屈可動域を取り戻し、足部アライメントに応じた靴や足底挿板を検討し、練習量を段階的に戻すという流れになります。痛みの部位が付着部そのものであれば付着部症や滑液包炎など別の病態を考え、腱に陥凹を触れる、つま先立ちができないといった所見があれば断裂を疑って医療機関へつなぎます。

✓ 3. これが誤り(正答)
アキレス腱の付着部に圧痛と腫脹が存在する。
腱周囲炎で圧痛と腫脹が出るのは、踵骨付着部より近位の腱周囲(腱の中央部あたり)です。付着部そのものに圧痛と腫脹が集まる場合は、アキレス腱付着部症や踵骨後部滑液包炎、ハグルンド変形などを考えます。痛みの中心がどこかを丁寧に触診で確かめることが、病態を見分ける最初の一歩になります。
✗ 1. 当てはまる(答えではない)
背屈制限が存在する。
下腿三頭筋の柔軟性低下や炎症による疼痛のため、足関節の背屈が制限されます。背屈制限があると走行や着地のたびに腱への負担が増すので、ストレッチによる可動域の改善は治療の柱になります。
✗ 2. 当てはまる(答えではない)
背屈するとアキレス腱部に礫音が生じる。
炎症で肥厚したパラテノンと腱が擦れ合うため、足関節を動かすと軋轢音(捻髪音)を触知・聴取できます。腱の周囲が問題になっていることを示す、本症らしい所見です。
✗ 4. 当てはまる(答えではない)
足部は回内変形している。
過度の回内(オーバープロネーション)は着地のたびに腱へ捻れの力を加えるため、本症の代表的な誘因として挙げられます。靴の選択や足底挿板でアライメントを整えることが再発予防につながります。
ポイント
  • アキレス腱には腱鞘がなくパラテノンが包む。ここが炎症を起こすのがアキレス腱周囲炎。
  • 圧痛・腫脹の中心は付着部ではなく、その近位の腱周囲。付着部が痛ければ付着部症や滑液包炎を考える。
  • 足関節を動かしたときの軋轢音(捻髪音)が特徴的所見。
  • 背屈制限と足部の過回内は、所見であると同時に発症・増悪の要因でもある。
  • 対応は負荷の調整、下腿三頭筋のストレッチ、靴・足底挿板の見直し、段階的な復帰。断裂を疑う所見があれば医療機関へ。
比較表
病態圧痛の中心特徴的な所見
アキレス腱周囲炎付着部より近位の腱周囲運動時痛、軋轢音、背屈制限、過回内などのアライメント異常
アキレス腱付着部症踵骨付着部そのもの付着部の骨棘形成、靴の踵での圧迫で増悪
踵骨後部滑液包炎アキレス腱と踵骨のあいだ局所の腫脹、ハグルンド変形を伴うことがある
アキレス腱断裂付着部の数cm上方に陥凹を触知トンプソン試験陽性、つま先立ち不能、受傷時の断裂音
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