学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §23 部位別各論 下腿・足関節 / QJ26P063

理由で解く 柔道整復師

QJ26P063 整形外科学

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午後 問63
問題
下腿コンパートメント症候群の症状でないのはどれか。
選択肢
1 疼痛
2 運動麻痺
3 蒼白
4 皮膚萎縮
解答
正解4(皮膚萎縮)
解説

急性コンパートメント症候群は、閉じた筋区画の内圧が上がって血流と神経が絞めつけられる病態です。症状は5つのP(疼痛・蒼白・知覚異常・運動麻痺・脈拍消失)で示され、皮膚萎縮はここに含まれないため、4が答えになります。

骨折や打撲による出血、再灌流後の浮腫、きついギプスや包帯の圧迫などで区画内圧が上がると、まず壁の薄い静脈がつぶれて還流が滞り、内圧がさらに上がって毛細血管の灌流が止まります。最初に出るのは、損傷の程度に見合わない激しい痛みと、その区画の筋を他動的に伸ばしたときに増強する痛み(passive stretch pain)で、これが最重要のサインです。続いて知覚異常、運動麻痺が現れ、蒼白や脈拍消失は末期の所見なので、これを待って判断すると手遅れになります。下腿には前方・外側・浅後方・深後方の4区画があり、前方区画では深腓骨神経が障害されて足背第1・2趾間の感覚低下と足関節背屈力低下が出ます。疑った時点で全周性の固定・包帯をすべて解除し、患肢は心臓の高さに保って(挙上しすぎると灌流圧が下がる)、ただちに医師へつなぎます。改善しなければ緊急に筋膜切開が行われます。放置すれば筋が壊死して線維化し、不可逆の阻血性拘縮が残ります。下腿では深後方区画の障害から足内在筋や長趾屈筋が拘縮して鉤爪趾(claw toe)や尖足、足底の感覚脱失をきたします(同じ阻血性拘縮が前腕に起こったものが、上腕骨顆上骨折後などでみられるフォルクマン拘縮です)。早期発見が最大の仕事です。

✗ 1. 症状である(答えではない)
疼痛
損傷の程度に不釣り合いな強い痛みと、他動伸展で増強する痛みは、本症をもっとも早く教えてくれるサインです。鎮痛薬で痛みが引かない、時間とともに増していく場合はとくに要注意で、設問が求める「症状でないもの」には当たりません。
✗ 2. 症状である(答えではない)
運動麻痺
区画内を走る神経と筋が虚血に陥るため、足関節や足趾の運動麻痺が生じます(前方区画なら背屈力低下)。5Pの Paralysis にあたり、症状のひとつです。
✗ 3. 症状である(答えではない)
蒼白
灌流が低下することによる Pallor(蒼白)で、5Pに含まれます。ただし脈拍消失とともに比較的遅れて出る所見のため、これが出そろうのを待たずに動くことが大切です。
✓ 4. 症状でない=これが答え
皮膚萎縮
皮膚萎縮は、慢性の循環障害や長期の不動・廃用によって時間をかけて生じる変化であり、数時間単位で進行する急性コンパートメント症候群の症状ではありません。急性期にみられるのはむしろ、区画が張りつめた緊満性の腫脹と、光沢を帯びて緊張した皮膚です。皮膚所見に頼らず、痛みの性質と他動伸展時痛で判断してください。
ポイント
  • 5P=疼痛(Pain)、蒼白(Pallor)、知覚異常(Paresthesia)、運動麻痺(Paralysis)、脈拍消失(Pulselessness)。
  • 最も早く重要なのは、損傷に不釣り合いな激痛と他動伸展時痛。蒼白・脈拍消失は末期のサイン。
  • 皮膚萎縮は慢性の変化。急性期は緊満性腫脹と光沢のある緊張した皮膚。
  • 下腿は前方・外側・浅後方・深後方の4区画。前方区画障害では深腓骨神経(第1・2趾間の感覚、足関節背屈)。
  • 疑ったら全周性の固定・包帯をすべて解除し、患肢は心臓の高さに保って直ちに医師へつなぐ。
  • 後遺症は不可逆の阻血性拘縮。下腿では鉤爪趾(claw toe)・尖足・足底の感覚脱失。前腕に生じた同じ病態がフォルクマン拘縮(上腕骨顆上骨折後などに多い)で、下腿の後遺症名ではない。
比較表
時期みられる所見とるべき行動
早期不釣り合いな激痛、他動伸展時痛、緊満性腫脹この段階で疑い、締めつけを解除して医師へつなぐ
進行期知覚異常(しびれ)、運動麻痺緊急対応。筋膜切開が検討される
末期蒼白、脈拍消失、冷感すでに手遅れになりうる。ここを待たない
後遺阻血性拘縮。下腿では鉤爪趾(claw toe)・尖足・足底の感覚脱失(前腕での同病態=フォルクマン拘縮)不可逆。予防が唯一の対策
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