学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §3 外科的感染症 / QJ25P044

理由で解く 柔道整復師

QJ25P044 外科学概論

出典:第25回柔道整復師国家試験(2017)午後 問44
問題
感染症で誤っているのはどれか。
選択肢
1 猫咬傷では一次縫合を行う。
2 肺アスペルギルス症では菌球形成がみられる。
3 破傷風による感染では開口障害がみられる。
4 真菌のIVHカテーテル感染では抗真菌薬の全身投与を行う。
解答
正解1(猫咬傷では一次縫合を行う。)
解説

誤っているのは1。猫の咬傷は見た目の傷が小さくても深部まで菌が押し込まれた汚染創であり、原則として一次縫合(受傷直後に閉じること)は行いません。

猫の歯は細く鋭いため、皮膚の入口は針で刺したように小さいのに、腱鞘や関節包など深い層まで到達します。つまり「洗いにくい深部に菌が置き去りになる」構造の傷です。猫の口腔内にはパスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)が高率に常在し、受傷から数時間〜24時間という短さで強い発赤・腫脹・拍動痛が出るのが特徴です。ここで創を縫って閉じると、菌と壊死組織を皮下に密閉することになり、膿瘍・腱鞘炎・化膿性関節炎へ進みやすくなります。実際に行うのは、大量の生理食塩水による圧洗浄、汚染・挫滅組織の切除(デブリドマン)、創は開放のままとするか腫脹が引いてからの遅延一次閉鎖、アモキシシリン・クラブラン酸などによる予防投与、そして破傷風の予防接種歴の確認です。

✓ 1. これが誤り(=答え)
猫咬傷では一次縫合を行う。
咬傷は感染率の高い汚染創で、なかでも猫咬傷は深部到達性とパスツレラの存在から最も感染しやすい部類です。閉鎖創にすると排膿路がなくなるため、洗浄・デブリドマン後は開放創として経過をみ、抗菌薬投与と破傷風対策を併せて行うのが標準的な扱いです。
✗ 2. 正しい記述(答えではない)
肺アスペルギルス症では菌球形成がみられる。
結核治癒後の空洞や気管支拡張などの「既存の空洞」に Aspergillus fumigatus が定着して増殖し、菌糸と壊死物の塊である菌球(アスペルギローマ、fungus ball)をつくります。空洞内に腫瘤影と三日月状の空気像がみられ、体位で塊が動くのが特徴です。喀血が問題になるため外科的切除が検討されます。
✗ 3. 正しい記述(答えではない)
破傷風による感染では開口障害がみられる。
Clostridium tetani が創内の嫌気性環境で産生する破傷風毒素(テタノスパスミン)が、脊髄・脳幹の抑制性介在ニューロンの伝達を遮断し、筋が抑制を失って持続収縮します。咀嚼筋が早期に侵されるため、第1期症状として開口障害(牙関緊急)が現れ、続いて痙笑・頸部硬直・後弓反張へ進みます。開口しにくいという訴えは早期発見の手がかりになります。
✗ 4. 正しい記述(答えではない)
真菌のIVHカテーテル感染では抗真菌薬の全身投与を行う。
中心静脈栄養(IVH)カテーテルのカンジダ感染では、菌がカテーテル表面にバイオフィルムを形成するため、薬剤だけでは到達しにくくなります。したがって原則はカテーテル抜去と抗真菌薬の全身投与の併用で、血流感染として眼内炎などの播種病変の有無も確認します。
ポイント
  • 咬傷は汚染創。原則は洗浄・デブリドマン+開放創(または遅延一次閉鎖)で、一次縫合は避ける。
  • 猫咬傷の主役はパスツレラ・ムルトシダ。受傷後数時間〜24時間で急激に腫れるのが典型。
  • 咬傷を診たら破傷風の予防接種歴を必ず確認する。
  • アスペルギローマ=既存空洞に生じる菌球。喀血に注意。
  • 破傷風の初発は開口障害(牙関緊急)→痙笑→後弓反張の順。
  • カテーテル真菌感染はバイオフィルムのためカテーテル抜去+抗真菌薬全身投与が基本。
比較表
咬傷主な起因菌傷の性状創閉鎖の考え方
ネコパスツレラ・ムルトシダ細く深い刺創。洗浄が届きにくい一次縫合は行わず開放創。感染率が最も高い
イヌパスツレラ、ブドウ球菌、カプノサイトファーガ挫滅・裂創が主体原則は開放。顔面など整容上の必要時は十分洗浄後に慎重に判断
ヒト連鎖球菌、嫌気性菌、エイケネラ手のMP関節部(拳打)で関節に達しやすい開放創とし関節・腱の損傷を評価
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