学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §3 外科的感染症 / QJ24P046

理由で解く 柔道整復師

QJ24P046 外科学概論

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午後 問46
問題
犬に手の甲を約2cm長咬まれた。適切でない処置はどれか。
選択肢
1 生理食塩水での洗浄
2 デブリドマン
3 一次縫合
4 抗菌薬投与
解答
正解3(一次縫合)
解説

設問は「適切でない処置」を選ぶ否定形。動物咬傷は見た目より深く細菌が押し込まれた汚染創で、受傷直後にそのまま閉じる一次縫合は原則行わない。

イヌ・ネコの口腔内にはPasteurella multocida(パスツレラ)、連鎖球菌、ブドウ球菌、嫌気性菌などが常在し、咬創では歯が組織を貫くときにこれらを深部へ運び込む。ここで創を縫い閉じると膿の逃げ道がなくなり嫌気環境ができるため、膿瘍・腱鞘炎・化膿性関節炎に進みやすい。とくに手の甲や手指は皮下組織が薄く腱鞘・関節に近いので感染が波及しやすい部位である。したがって処置は、大量の生理食塩水による洗浄で細菌と異物を洗い流し、挫滅・壊死組織をデブリドマンで除去し、創は開放のまま管理して抗菌薬を投与する、という流れになる。感染がないことを確認したうえで数日後に閉じる遅延一次縫合、あるいは二次治癒を待つ。あわせて破傷風トキソイド追加接種の要否、咬んだ動物の狂犬病予防接種歴と飼育状況を確認し、必要なら医療機関・保健所へ連絡する。

✓ 3. これが答え(適切でない処置)
一次縫合
一次縫合は受傷直後に創縁を寄せて閉鎖する処置。咬創は細菌が深部に入り込んだ汚染創であり、閉じると排出路を失って深部感染を起こしやすい。開放創として管理し、遅延一次縫合または二次治癒を選ぶのが原則。顔面のように整容が問題になる部位では十分な洗浄・デブリドマンと抗菌薬投与のうえで閉鎖が検討されることもあるが、手背の咬創ではまず開放管理が選ばれる。
✗ 1. 適切な処置(答えではない)
生理食塩水での洗浄
大量の生理食塩水による洗浄は咬創処置の第一歩。創内の細菌数を物理的に減らし、歯の破片や被毛などの異物を除去する。感染予防の効果が最も確実な手技であり、「よく洗う」ことが治療の土台になる。
✗ 2. 適切な処置(答えではない)
デブリドマン
挫滅・壊死した組織は血流がなく細菌の培地となり、抗菌薬も届かない。デブリドマンで除去して健常組織を露出させることが、感染の防止と創治癒の促進に直結する。
✗ 4. 適切な処置(答えではない)
抗菌薬投与
咬創は感染率が高く、とくに手の受傷では高率とされる。パスツレラや口腔内嫌気性菌をカバーする抗菌薬(アモキシシリン・クラブラン酸など)の投与が行われる。あわせて破傷風予防、狂犬病のリスク評価も検討される。
ポイント
  • 咬創=汚染創。歯が細菌を深部に押し込むため、見た目の傷の大きさで軽く見ない
  • 処置の柱:大量洗浄 → デブリドマン → 開放管理 → 抗菌薬投与
  • 一次縫合は原則行わない。遅延一次縫合または二次治癒で閉じる
  • イヌ・ネコ咬傷の代表菌はPasteurella multocida。手の受傷は腱鞘・関節へ波及しやすく要注意
  • 破傷風トキソイド追加の要否、咬んだ動物の狂犬病予防接種歴の確認まで含めて対応する
比較表
咬創(汚染創)清潔な切創
細菌汚染高度(深部まで押し込まれる)軽度
創の形穿通性で深い、挫滅を伴う創縁が整い浅い
縫合原則しない(遅延一次縫合/二次治癒)受傷後早期に一次縫合
抗菌薬予防投与を行う通常は不要
主な合併症膿瘍、腱鞘炎、化膿性関節炎、破傷風まれ
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