学習トップ理由で解く 柔道整復師一般臨床医学 ▸ §21 臨床実地問題 / QJ25P042

理由で解く 柔道整復師

QJ25P042 一般臨床医学

出典:第25回柔道整復師国家試験(2017)午後 問42
問題
70歳の女性。5日前から右背部に違和感があり、今朝から火照るような痛みになった。衣服を着替える時に、右胸から側胸部を通って背中まで身体の右半周に赤い発疹と水疱が出ていることに気付いた。考えられる疾患はどれか。
選択肢
1 肝硬変
2 帯状疱疹
3 単純性疱疹
4 全身性エリテマトーデス
解答
正解2(帯状疱疹)
解説

痛みが皮疹に数日先行し、片側だけに帯状に並ぶ紅斑と水疱――この2点がそろえば帯状疱疹である。「身体の右半周」という広がりは、この症例で侵された肋間神経の支配領域(胸髄デルマトーム)そのものを表している。

帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化で起こる。初感染では水痘(みずぼうそう)を発症し、治癒後もウイルスは脊髄後根神経節や脳神経節に潜伏し続ける。加齢・疲労・悪性腫瘍・免疫抑制などで細胞性免疫が下がると再活性化し、潜んでいた神経に沿って下りてきて、その神経の皮膚支配領域に発疹をつくる。まず神経内で炎症が起こるため、違和感・灼熱感・そう痒感・ピリピリした痛み(知覚過敏)といった前駆症状が皮疹より数日早く現れるのが典型で、本例の「5日前から違和感、今朝から火照るような痛み」はこの前駆期に一致する。皮疹は障害された神経のデルマトームに一致し、正中線を越えない片側性の帯状分布をとる。本例のような胸髄デルマトーム(肋間神経領域)は体幹を背中から前へ回り込むように走るため、「右背部→右側胸部→右前胸部」と片側半周に帯状に並ぶ。ただし半周状になるのは体幹に出た場合の話で、四肢のデルマトームは長軸(縦)方向の帯、顔面では三叉神経枝ごとの区画となり、帯の形は部位によって変わる。共通して問うべきは「片側性か」「正中を越えていないか」「デルマトームに一致するか」の3点である。抗ウイルス薬は発疹出現から72時間以内の開始が望ましく、高齢者では帯状疱疹後神経痛(PHN)を残しやすいので、施術は行わず速やかに皮膚科受診を勧めるのが取るべき対応である。水疱内容にはウイルスが含まれ、水痘未罹患者や免疫が低下している人に接触感染で水痘をうつしうるため、患部を衣服やガーゼで覆うよう伝え、施術所内での接触を避ける配慮も併せて行う。

✓ 2. 正しい
帯状疱疹
片側性・帯状(デルマトームに一致し正中を越えない)・有痛性の紅斑と小水疱、そして皮疹に先行する神経痛という4つの特徴がすべてそろっている。70歳という年齢も、加齢による細胞性免疫低下で再活性化しやすい典型的な背景である。
✗ 1. 誤り
肝硬変
肝硬変でみられる皮膚所見は、クモ状血管腫・手掌紅斑・黄疸・出血斑(紫斑)・女性化乳房などで、いずれも水疱はつくらない。分布もデルマトームに一致した片側性の帯状にはならず、痛みが先行することもない。
✗ 3. 誤り
単純性疱疹
単純ヘルペスウイルス(HSV)による水疱症で、口唇周囲や陰部など決まった一か所に小水疱が集まって出る(集簇性)。同じ場所に何度も再発するのが特徴で、神経1本分の支配領域(デルマトーム)に沿って帯状に広がることはなく、本例のように体幹の片側半周に及ぶこともない。分布の広さと帯状の配列が鑑別点になる。
✗ 4. 誤り
全身性エリテマトーデス
若年〜中年女性に好発する自己免疫疾患で、皮膚症状は両側性・左右対称の蝶形紅斑、円板状皮疹、日光過敏などである。発熱・関節痛・腎障害など全身症状を伴い、片側だけの帯状水疱という形はとらない。発症年齢も本例と合わない。
ポイント
  • 帯状疱疹=水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化。初感染は水痘で、治癒後は脊髄後根神経節・脳神経節に潜伏する。
  • 皮疹のキーワードは「片側性・正中を越えない・デルマトーム(神経の皮膚支配領域)に一致」の3点。この3点が診断の軸になる。
  • 帯の形は出た部位で変わる。体幹(肋間神経領域)なら片側半周を回る帯になるが、四肢では長軸方向の帯、顔面では三叉神経枝ごとの区画となる。「半周でなければ帯状疱疹ではない」と覚えないこと。
  • 神経痛・違和感・灼熱感・そう痒感が皮疹に数日先行する。この前駆症状を肋間神経痛や胆石発作などと誤らないこと。
  • 高齢者・免疫低下時に多く、治癒後も痛みが残る帯状疱疹後神経痛(PHN)が問題になる。
  • 特殊型として、三叉神経第1枝領域の眼部帯状疱疹(角膜炎・視力障害)、顔面神経膝神経節のラムゼイ・ハント症候群(末梢性顔面神経麻痺+耳介の水疱+難聴・めまい)を押さえる。いずれも半周状にはならない、部位で形が変わる好例である。
  • 柔道整復師の対応は、患部への施術を行わず、患部を覆うよう指導したうえで早期の医療機関(皮膚科)受診を勧めること。抗ウイルス薬は早期開始ほど有効である。
比較表
比べる点帯状疱疹単純性疱疹(単純ヘルペス)
原因ウイルス水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化単純ヘルペスウイルス(HSV-1・HSV-2)
皮疹の分布デルマトームに一致した帯状(体幹なら片側半周に及ぶ/四肢では長軸方向の帯)口唇・鼻孔周囲・陰部など一か所に限局
正中を越えるか越えない(片側性)もともと局所なので判断材料にならない
先行症状数日前からの神経痛・違和感・灼熱感が典型ピリピリ感は短時間。強い先行痛は乏しい
再発原則1回(免疫低下時に再発しうる)同じ部位に繰り返し再発
後遺症帯状疱疹後神経痛(高齢者で多い)通常残らない
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