学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §14 疾患別各論 神経・筋疾患 / QJ24P064

理由で解く 柔道整復師

QJ24P064 整形外科学

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午後 問64
問題
ファーレンテスト陽性の際に筋力が低下するのはどれか。
選択肢
1 深指屈筋
2 長母指屈筋
3 橈側手根屈筋
4 短母指外転筋
解答
正解4(短母指外転筋)
解説

ファーレンテスト陽性は手根管症候群を示唆する。障害されるのは手根管を出た先で正中神経反回枝に支配される母指球筋であり、短母指外転筋が該当する。正答は4。

ファーレン(Phalen)テストは手関節を最大掌屈させて保持し、手根管の内圧上昇によって母指から環指橈側にしびれが誘発されるかをみるもの。手根管を通るのは正中神経と屈筋腱であり、正中神経は手根管を出た直後に反回枝(母指球枝)を分岐して母指球筋(短母指外転筋、短母指屈筋浅頭、母指対立筋)を支配する。つまり手根管での圧迫で筋力が落ちるのは、手根管より遠位で分岐する枝が支配する筋に限られ、前腕で分岐する枝の支配筋は保たれる。短母指外転筋の筋力は、母指を手掌面から垂直に持ち上げる掌側外転に抵抗を加えて確認する。母指球の萎縮(猿手)やつまみ動作の困難が固定してしまう前に、医療機関での評価につなぐことが大切である。

✓ 4. 正しい
短母指外転筋
正中神経が手根管を出た直後に分かれる反回枝の支配を受けるため、手根管内の圧迫の影響を直接受ける。筋力低下は母指の掌側外転力の低下として現れ、進行すると母指球の萎縮(猿手変形)をきたす。
✗ 1. 誤り
深指屈筋
橈側半は正中神経の枝である前骨間神経、尺側半は尺骨神経の支配で、いずれの枝も前腕で分岐しており手根管より近位である。手根管を通るのはこの筋の腱だけなので、手根管の圧迫で筋力は低下しない。
✗ 2. 誤り
長母指屈筋
前骨間神経の支配で、分岐部位は前腕近位すなわち手根管より上流である。母指IP関節の屈曲力が落ちるのは前骨間神経麻痺(母指と示指で丸をつくれず涙のしずく型になる)であって、手根管症候群の所見ではない。
✗ 3. 誤り
橈側手根屈筋
正中神経の支配だが、枝が出るのは前腕近位であり手根管の圧迫では障害されない。加えてこの筋の腱は手根管の内部ではなく、その橈側にある独立した腱溝を通るという点でも手根管の病変とは切り離して考えられる。
ポイント
  • ファーレンテスト(手関節掌屈位の保持)陽性は手根管症候群を示唆する
  • 筋力低下が出るのは手根管より遠位で分岐する反回枝支配の母指球筋のみ
  • 短母指外転筋の筋力低下、母指球の萎縮(猿手)、母指〜環指橈側のしびれが三本柱
  • 前腕で分岐する枝(前骨間神経、橈側手根屈筋枝など)の支配筋は保たれる
  • 掌側皮枝は手根管の外を通るため母指球部の皮膚感覚は保たれる。萎縮が固定する前に医療機関へつなぐ
比較表
支配神経(枝)分岐部位手根管症候群での筋力
短母指外転筋正中神経 反回枝手根管より遠位低下する
深指屈筋前骨間神経/尺骨神経前腕(近位)保たれる
長母指屈筋前骨間神経前腕(近位)保たれる
橈側手根屈筋正中神経 本幹の枝前腕(近位)保たれる
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