学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §20 臨床実地問題 / QJ24P054

理由で解く 柔道整復師

QJ24P054 外科学概論

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午後 問54
問題
16歳の男子。柔道練習中、畳に激しく頭をぶつけて 10秒間の意識消失を起こした。1時間後には神経症状もなく、頭痛もなかった。正しいのはどれか。
選択肢
1 2度脳しんとうに相当する。
2 意識が改善すれば神経学的検査は必要ない。
3 翌日の練習を許可する。
4 セカンドインパクトシンドロームに注意する。
解答
正解4(セカンドインパクトシンドロームに注意する。)
解説

意識消失を伴った脳しんとうでは、症状が消えても当日・翌日の競技復帰はさせない。回復しきる前の再受傷は、セカンドインパクトシンドロームという致死的な脳腫脹を招きうる。

脳しんとうは頭部への衝撃で一過性に脳機能が障害される病態で、CTやMRIでは異常を認めないことが多い。しかし症状が消えても脳の代謝やエネルギー需給は数日から数週にわたって不安定な状態が続き、この時期に二度目の衝撃を受けると脳血管の自動調節能が破綻して急激な脳腫脹を起こすことがある。これがセカンドインパクトシンドロームで、若年者に多く致死率が高い。したがって受傷当日は競技に戻さず、医療機関で神経学的評価を受け、症状が完全に消失してから安静 → 軽い有酸素運動 → 競技特異的訓練 → 接触を伴わない練習 → 接触練習 → 試合と段階を追って復帰する。柔道では投げ技による後頭部の打撲から急性硬膜下血腫を生じた重篤例が報告されており、増悪する頭痛、繰り返す嘔吐、意識レベルの低下、けいれん、片麻痺、瞳孔不同がみられればただちに救急搬送する。

✓ 4. 正しい
セカンドインパクトシンドロームに注意する。
本例は10秒間の意識消失があり、1時間後に症状がなくても脳が回復途上である可能性が残る。この時期に再び頭部へ衝撃を受けると急激な脳腫脹をきたしうるため、当日の復帰を認めず、段階的競技復帰のプロトコルに沿って経過を追うことが必要になる。本人・指導者・保護者に危険性と復帰手順を共有しておくことが最大の予防策である。
✗ 1. 誤り
2度脳しんとうに相当する。
脳しんとうの重症度分類は複数あり、Cantu分類では意識消失5分未満は2度とされるが、本問が前提とする意識消失の有無で段階を分ける分類(Colorado分類・AAN分類)では、意識消失があれば最も重い3度である。いずれの分類でも当日の競技復帰を認めない点は共通しており、本問で問われているのは4の再受傷リスクである。分類の段階そのものより「意識消失があった」という事実を重く扱う姿勢が実際の対応につながる。
✗ 2. 誤り
意識が改善すれば神経学的検査は必要ない。
脳しんとうは画像で異常が出ないことが多いからこそ、意識レベル、瞳孔、四肢の麻痺、平衡機能、記憶(逆行性・前向性健忘)、認知機能といった神経学的評価が診断と復帰判断の柱になる。さらに急性硬膜外血腫では意識清明期を経て急変することがあるため、意識が戻った後こそ継続的な観察と再評価が要る。
✗ 3. 誤り
翌日の練習を許可する。
症状が消えていても翌日の練習は許可しない。脳しんとう後は段階的競技復帰を行い、各段階を24時間以上あけて症状が再燃しないことを確認しながら次へ進める。意識消失を伴った例では医師の診察と復帰許可を得る。途中で頭痛や集中困難が出れば一段階戻して再開する。
ポイント
  • 脳しんとう=頭部外傷による一過性の脳機能障害。CT・MRIで異常を認めないことが多い
  • 重症度分類は複数ある:Colorado分類・AAN分類では意識消失があれば3度、Cantu分類では意識消失5分未満は2度。段階の付け方が異なる点に注意
  • どの分類でも、意識消失があれば当日の競技復帰は認めない
  • セカンドインパクトシンドローム=回復前の再受傷による急激な脳腫脹。若年者に多く致死率が高い
  • 復帰は段階的に。各段階24時間以上あけ、症状の再燃がないことを確認して次へ進む
  • 危険な徴候(増悪する頭痛、繰り返す嘔吐、意識低下、けいれん、片麻痺、瞳孔不同)→ ただちに救急搬送
比較表
脳しんとう急性硬膜外血腫急性硬膜下血腫
病態一過性の脳機能障害頭蓋骨と硬膜の間の出血(多くは中硬膜動脈)硬膜と脳の間の出血(架橋静脈・脳挫傷)
画像異常を認めないことが多い凸レンズ型の高吸収域三日月型の高吸収域
経過症状は短時間で改善意識清明期の後に急速に悪化しうる受傷直後から意識障害が続くことが多い
脳損傷の程度器質的損傷は目立たない合併が少なく予後は比較的良い脳挫傷を伴い予後不良のことが多い
対応安静と経過観察、段階的復帰血腫除去術(緊急)血腫除去術(緊急)
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