学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §19 腹部外傷(救急法) / QJ32P055

理由で解く 柔道整復師

QJ32P055 外科学概論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問55
問題
交通外傷後、緊急CT 検査で後腹膜腔に著明な血腫がみられる場合、考えられる損傷臓器はどれか。
選択肢
1 脾臓
2 膵臓
3 肝臓
4 空腸
解答
正解2(膵臓)
解説

後腹膜腔に血腫をつくる実質臓器は膵臓です。脾臓・肝臓・空腸はいずれも腹腔内(腹膜内)臓器で、損傷すれば腹腔内出血になります。

腹部臓器は腹膜との位置関係で腹腔内臓器と後腹膜臓器に分けられ、どこに血液がたまるかで損傷臓器を絞り込めます。後腹膜には膵臓(尾部を除く大部分)、十二指腸の大部分、腎臓・副腎・尿管、腹部大動脈と下大静脈、上行結腸と下行結腸が並びます。膵体部は第1〜2腰椎の前面を横切って走るため、ハンドルやシートベルトによる上腹部への圧迫で脊柱に押しつけられ、断裂や挫滅を起こしやすい位置にあります。出血や漏れ出た膵液は後腹膜腔に広がるので、設問文に示された後腹膜腔の著明な血腫という所見と合致します。後腹膜血腫は腹腔内出血に比べて腹膜刺激症状が出にくく、初期には症状が乏しいことが特徴です。膵損傷では受傷直後に血清アミラーゼが上昇しないこともあるため、時間をおいた再検査と画像の再評価が欠かせません。

✗ 1. 当てはまらない
脾臓
左季肋部にある腹腔内臓器です。鈍的腹部外傷で損傷しやすい実質臓器の代表ですが、被膜が破れれば血液は腹腔内にたまり、後腹膜血腫にはなりません。左肩への放散痛(ケール徴候)を伴うことがあります。
✓ 2. これが正答
膵臓
膵臓は後腹膜臓器で、体部が第1〜2腰椎の前面を横切ります。上腹部への強い圧迫で脊柱に押しつけられて損傷し、出血と膵液の漏出が後腹膜腔に広がるため、設問文の「後腹膜腔に著明な血腫」という所見によく合致します。症状が出にくく発見が遅れやすいので、経過観察と再評価が重要です。
✗ 3. 当てはまらない
肝臓
右季肋部を占める腹腔内臓器で、体積が大きく鈍的外傷で損傷しやすい臓器です。ただし損傷しても出血は腹腔内に広がるため、後腹膜腔の血腫という所見とは合いません。
✗ 4. 当てはまらない
空 腸
腸間膜をもち腹腔内を自由に動く腹腔内臓器です。損傷すると腹腔内への出血や腸内容の漏出による腹膜炎(腹膜刺激症状、遊離ガス)が問題になり、後腹膜腔の血腫という所見にはつながりません。
ポイント
  • 血腫の場所(腹腔内か後腹膜か)から損傷臓器を絞り込む。
  • 後腹膜臓器:膵臓(尾部を除く)、十二指腸の大部分、腎臓・副腎・尿管、腹部大動脈・下大静脈、上行結腸・下行結腸。
  • 腹腔内臓器:肝臓、脾臓、胃、空腸・回腸、横行結腸、S状結腸。
  • 膵体部は第1〜2腰椎の前面を横切るため、上腹部の圧迫(ハンドル外傷、シートベルト外傷)で脊柱に挟まれて損傷しやすい。
  • 後腹膜血腫は腹膜刺激症状に乏しく発見が遅れやすい。膵損傷ではアミラーゼが初期に上がらないこともあり、時間をおいた再評価が必要。
比較表
区分おもな臓器損傷したときの出血のたまる場所
腹腔内(腹膜内)臓器肝臓、脾臓、胃、空腸・回腸、横行結腸、S状結腸腹腔内(腹膜刺激症状が出やすい)
後腹膜臓器膵臓、十二指腸の大部分、腎臓・副腎・尿管、腹部大動脈・下大静脈、上行結腸・下行結腸後腹膜腔(症状に乏しく発見が遅れやすい)
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。