学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §12 心肺蘇生法(救急法) / QJ32P054

理由で解く 柔道整復師

QJ32P054 外科学概論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問54
問題
成人に対する胸骨圧迫心臓マッサージで誤っているのはどれか。
選択肢
1 肘をまっすぐに伸ばして圧迫する。
2 胸骨圧迫の深さは5cm以上で押す。
3 1分間に80回のテンポで行う。
4 胸の真ん中を圧迫する。
解答
正解3(1分間に80回のテンポで行う。)
解説

成人の胸骨圧迫のテンポは1分間に100〜120回です。80回では拍出が不足するため、誤っているのは3です。

胸骨圧迫は、心臓を直接圧迫する力と胸腔内圧の変動を利用して血液を送り出す代替ポンプで、冠動脈灌流圧と脳血流は「圧迫の深さ・テンポ・中断の少なさ・完全な胸壁の戻り」で決まります。本問が出題された時点で用いられていたJRC蘇生ガイドライン2020では、成人に対し胸骨の下半分(胸の真ん中)を、少なくとも約5cm沈む深さ(ただし6cmを超えない)で、100〜120回/分のテンポで圧迫するとされています。テンポが遅すぎると単位時間あたりの拍出量が足りず、逆に速すぎると圧迫の合間に心臓へ血液が戻りきらないため、上下いずれにも外れない範囲が設定されています。姿勢としては両肘をまっすぐ伸ばし、肩が手の真上に来るようにして体重を垂直にかけると、必要な深さを保ちながら疲労を抑えられます。1回ごとに胸を完全に元へ戻し(リコイル)、圧迫の中断は10秒以内にとどめ、質を保つために2分(約5サイクル)ごとに交代します。

✗ 1. 正しい記述(答えではない)
肘をまっすぐに伸ばして圧迫する。
肘を伸ばし、肩・肘・手首を一直線にして肩が手の真上に来る姿勢をとると、腕の力ではなく上半身の体重が垂直に伝わります。これにより十分な深さを安定して出せ、術者の疲労も抑えられます。
✗ 2. 正しい記述(答えではない)
胸骨圧迫の深さは5cm以上で押す。
成人では約5cm沈むまで圧迫するのが基準で、これより浅いと有効な血流が生まれません。なお実施上は6cmを超えないことも併せて意識し、5cmを目安に深さを保ちます。圧迫のたびに胸壁を完全に元の位置まで戻すことも忘れないようにします。
✓ 3. これが誤り(正答)
1分間に80回のテンポで行う。
正しくは100〜120回/分です。80回/分では単位時間あたりの拍出が不足し、冠動脈灌流圧と脳血流を維持できません。実施時はテンポの目安になる曲や口頭カウントを使って100〜120回/分を保ち、深さを犠牲にしない範囲で速さを維持します。
✗ 4. 正しい記述(答えではない)
胸の真ん中を圧迫する。
圧迫部位は胸骨の下半分で、これが「胸の真ん中」という表現に当たります。剣状突起や左右の肋骨にずれると内臓損傷や肋骨骨折を招きやすいため、手掌基部を胸骨の下半分に置き、もう一方の手を重ねて指を組み、指が胸壁に触れないようにして圧迫します。
ポイント
  • 成人の胸骨圧迫の要点は4つ:部位は胸骨の下半分(胸の真ん中)、深さは約5cm(6cmを超えない)、テンポは100〜120回/分、1回ごとに完全に胸を戻す。
  • 圧迫の中断は10秒以内にとどめる。中断が長いほど冠動脈灌流圧が下がり、再開後に元の圧まで戻すのに時間がかかる。
  • 両肘を伸ばし肩を手の真上に置いて体重で垂直に押すと、深さが安定し術者の疲労も減る。
  • 圧迫と人工呼吸の比は30:2。質の低下を防ぐため約2分(5サイクル)ごとに交代する。
  • 反応がなく、呼吸がないか死戦期呼吸を認めたら、応援要請とAED手配を行い、ただちに胸骨圧迫を開始する。
比較表
対象圧迫部位手の使い方深さテンポ
成人胸骨の下半分両手を重ねる約5cm(6cmを超えない)100〜120回/分
小児(1歳〜思春期)胸骨の下半分片手または両手胸の厚みの約1/3(およそ5cm)100〜120回/分
乳児(1歳未満)胸骨の下半分指2本(2人法では胸郭包み込み両母指法)胸の厚みの約1/3(およそ4cm)100〜120回/分
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