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理由で解く 柔道整復師

QJ24P022 一般臨床医学

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午後 問22
問題
腰椎椎間板ヘルニアでみられる坐骨神経痛による姿勢の特徴はどれか。
選択肢
1 身体をエビのように折り曲げた姿勢
2 下肢は痙性となり足が足底側に屈曲した姿勢
3 患側に体幹を曲げ脊柱が弓状に背屈した姿勢
4 健側に体幹を曲げ軽く股関節を屈曲した姿勢
解答
正解4(健側に体幹を曲げ軽く股関節を屈曲した姿勢)
解説

腰椎椎間板ヘルニアでは、圧迫された神経根の緊張を少しでもゆるめようとして体幹が側方へ傾き、股関節・膝関節を軽く曲げた姿勢になる。これが疼痛性側弯(坐骨神経痛性側弯)で、正解は4である。

まず経路を押さえておきたい。坐骨神経は、椎間孔を出た神経根がそのまま束ねられたものではない。椎間孔を出た第4腰神経〜第3仙骨神経(L4〜S3)の前枝がまず仙骨神経叢(腰仙骨神経叢)をつくり、そこから分かれ出た坐骨神経が殿部を通って下肢の後面を下っていく。腰椎椎間板ヘルニアの好発高位であるL4/5・L5/S1で圧迫されるのはL5・S1神経根であり、これらはまさにこの叢を構成する神経にあたる。だからこそ、腰の一点の障害が坐骨神経の走行に沿った下肢後面の放散痛、すなわち坐骨神経痛として現れる。そして体幹をまっすぐ立てて膝を伸ばすと、神経根から仙骨神経叢を経て坐骨神経へと続くこの経路が引き伸ばされ、ヘルニア塊に押された部位の痛みが強まる。そこで患者は無意識に、神経の張りが減る方向へ体を逃がす。具体的には体幹を側方へ倒して椎間孔側の圧を逃がし、腰椎の生理的前弯を消して腰を平らにし、さらに股関節と膝を軽く曲げて坐骨神経の走行距離を短くする。SLR(下肢伸展挙上)テストで痛みが誘発されるのと、ちょうど裏返しの関係にある姿勢である。傾く向きはヘルニアと神経根の位置関係によって変わりうるが、国家試験で問われる典型像は「健側へ体幹を倒し、下肢は軽度屈曲」である。施術の場では、この姿勢の患者に無理に姿勢を正させるのではなく、まず神経症状(下肢の筋力低下、感覚障害、膀胱直腸障害)の有無を確認し、疑わしければ医療機関への受診を勧める。

✓ 4. 正しい
健側に体幹を曲げ軽く股関節を屈曲した姿勢
疼痛性側弯(坐骨神経痛性側弯)そのものの記載である。ヘルニアが神経根の外側にある肩型では、健側へ体幹を倒すと患側の椎間孔が相対的に広がり、神経根の圧迫と伸張が減る。傾く向き自体は腋窩型では逆になりうるが、体幹の側方傾斜に加えて股関節・膝関節の軽度屈曲(坐骨神経をたるませる)と腰椎前弯の消失を伴うという組合せは、疼痛性側弯の記載として本肢だけが満たしている。立位でも臥位でも、この肢位が最も楽になる。
✗ 1. 誤り
身体をエビのように折り曲げた姿勢
体を前に丸めてうずくまる、いわゆるエビ様の姿勢は急性膵炎で典型的で、前屈位(胸膝位)をとると後腹膜にある膵への圧迫・伸展が減って痛みが和らぐ。腹膜炎では膝を曲げて動かずにいる。なお尿路結石や胆石の疝痛は、どの体位をとっても痛みが軽くならず、じっとしていられずのたうち回る(転輾反側)のが特徴で、姿勢によって楽になる急性膵炎とは対照的である。いずれにせよ腰椎椎間板ヘルニアの姿勢は前後の丸まりではなく側方への傾きが主体で、性質が異なる。
✗ 2. 誤り
下肢は痙性となり足が足底側に屈曲した姿勢
下肢の痙性と尖足(足の底屈位固定)は錐体路が障害されたとき、すなわち脳卒中後の片麻痺などの中枢性麻痺でみられる所見である。腰椎椎間板ヘルニアが侵すのは神経根という末梢の要素なので、麻痺が出るとしても弛緩性で、腱反射はむしろ低下・消失する。痙性がみられる場合は、より上位の脊髄病変を疑って医療機関につなぐ判断材料になる。
✗ 3. 誤り
患側に体幹を曲げ脊柱が弓状に背屈した姿勢
脊柱が弓なりに反り返る姿勢は後弓反張と呼ばれ、破傷風や重症の髄膜炎で問題になるもので、椎間板ヘルニアの像ではない。ヘルニアでは腰椎の前弯はむしろ減って平坦になる。なお側弯の凸の向きはヘルニア塊と神経根の位置関係で変わりうるため、この肢は傾く向きよりも「弓状に背屈」という点で典型像から外れる。
ポイント
  • 坐骨神経はL4〜S3の前枝が仙骨神経叢(腰仙骨神経叢)をつくったのち分枝する。好発高位L4/5・L5/S1のL5・S1神経根がこの叢の構成神経にあたるため、坐骨神経痛として現れる。
  • 疼痛性側弯(坐骨神経痛性側弯)は、神経根の緊張を減らすための逃避姿勢である。
  • 典型は健側へ体幹を傾け、股関節・膝関節を軽度屈曲し、腰椎前弯は平坦化する。
  • SLRテストが陽性になるのと同じ理屈の裏返しで、神経を伸ばす肢位を避けている。
  • 神経根障害は末梢性なので弛緩性麻痺・腱反射低下。痙性や病的反射があれば中枢性・脊髄性を疑う。
  • 姿勢の対比:急性膵炎=前屈位(エビ様)で軽快、腹膜炎=膝を曲げて不動、尿路結石・胆石=どの体位でも軽快せず転げ回る(転輾反側)、後弓反張=破傷風・重症髄膜炎。
  • 下肢の筋力低下、鞍状部の感覚障害、膀胱直腸障害があれば緊急性が高く、速やかに医療機関へ紹介する。
比較表
特徴的な姿勢代表的な病態そうなる理由
健側へ体幹を傾け股・膝を軽度屈曲腰椎椎間板ヘルニア(坐骨神経痛)神経根から仙骨神経叢・坐骨神経へ続く経路の伸張・圧迫を減らす
体を前に丸めうずくまる(エビ様)急性膵炎(腹膜炎では膝を曲げて不動)前屈位で後腹膜にある膵への圧迫・伸展が減る
どの体位でも楽にならず、じっとしていられない(転輾反側)尿路結石・胆石発作などの疝痛管腔臓器の攣縮による痛みで、体位では変わらない
下肢が痙性で足は底屈位(尖足)錐体路障害(脳卒中後片麻痺など)上位運動ニューロン障害で筋緊張が亢進する
脊柱が弓なりに反り返る(後弓反張)破傷風・重症髄膜炎全身の筋強直や髄膜刺激により体幹が伸展する
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