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理由で解く 柔道整復師

QJ24P021 リハビリテーション医学

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午後 問21
問題
50歳の男性。高所作業中に転落し、胸髄損傷をきたし6か月が経過している。完全麻痺症状があるが、上肢機能は正常で、車いすを利用した外出も可能な機能まで回復している。膀胱直腸機能障害があり、尿道カテーテルがはずせない。今後の方針で最も適切なのはどれか。
選択肢
1 尿道カテーテル留置を続ける。
2 用手排尿法を指導する。
3 自己間歇導尿法を指導する。
4 膀胱瘻を造設する。
解答
正解3(自己間歇導尿法を指導する。)
解説

脊髄ショックを脱した慢性期の脊髄損傷では、膀胱を低い圧のまま溜め、確実に空にすることが排尿管理の目標です。上肢機能が正常で車いす自立まで回復している本例は清潔間欠自己導尿のよい適応で、これが答えです。

胸髄損傷は排尿の反射中枢(仙髄S2〜S4)より上位の障害なので、核上型(上位運動ニューロン型)の神経因性膀胱になります。受傷直後の脊髄ショック期は排尿筋が収縮せず尿閉となるため一時的に尿道カテーテルを留置しますが、ショックを脱する数週〜数か月後には排尿筋過活動と排尿筋・外尿道括約筋協調不全(DSD)が現れ、「膀胱は強く収縮しているのに出口が締まって出ない」状態になります。ここで本当に問題なのは尿が出ないことよりも膀胱内が高圧になることで、高圧が続くと膀胱尿管逆流から水腎症・腎盂腎炎をきたし、腎機能の悪化が脊髄損傷者の生命予後を左右します。そこで慢性期の管理は、膀胱を低圧の貯留槽として使い(必要に応じて抗コリン薬などを併用)、1日数回のカテーテル挿入で残尿を残さず出す、という組み立てになります。受傷から6か月が経過して全身状態が安定し、車いすでの外出も可能な今は、留置カテーテルから離脱して自己導尿へ移行を図るべき時期です。

✓ 3. 最も適切
自己間歇導尿法を指導する。
清潔操作で自分でカテーテルを挿入し、1日およそ4〜6回、1回の導尿量が400〜500mLを超えないように水分摂取と回数を調整します。上肢機能が正常で座位バランスも保てる本例なら手技の習得は十分可能で、日中はカテーテルもバッグも身につけずに済むため、外出・就労といった社会参加にも直結します。導入時は排尿日誌をつけ、残尿量・尿路感染の有無・腎機能を定期的に確認しながら進めます。
✗ 1. 適切でない
尿道カテーテル留置を続ける。
急性期には必要な方法ですが、長期化するとカテーテル関連尿路感染、膀胱結石・腎結石、尿道びらんや尿道皮膚瘻、精巣上体炎、膀胱の萎縮(低コンプライアンス化)といった合併症が積み重なります。上肢が使える本例では、留置を漫然と続けるより自己導尿へ切り替えるほうが尿路の保護にもQOLにも有利で、離脱に向けた指導を開始するのが望ましい対応です。
✗ 2. 適切でない
用手排尿法を指導する。
用手排尿法とは、下腹部を手で圧迫して膀胱を外から絞り出すクレーデ法や、怒責して腹圧をかける腹圧排尿のことで、いずれも膀胱を他動的に圧迫して尿を押し出す方法です。適応は、核下型(弛緩性膀胱)で外尿道括約筋の抵抗が低く残尿がごく少ない一部の例に限られます。本例のような核上型ではDSDのため押し出そうとしても外尿道括約筋が同時に締まって出し切れず、加えた力がそのまま高い膀胱内圧となって上部尿路へ逆流し、水腎症や腎機能障害を招きます。なお、下腹部(恥骨上部)の叩打による排尿誘発は用手排尿法とは機序の異なる別の手技で、膀胱を圧迫するのではなく仙髄の反射弓を刺激して排尿筋の反射収縮を起こさせるものです。反射が残る核上型で試みられることはありますが、DSDがあると高圧排尿・多量残尿となるため本例では推奨されません。
本例で取るべき対応は、留置カテーテルから清潔間欠自己導尿へ移行し、必要に応じて抗コリン薬などで膀胱を低圧化したうえで、残尿量と上部尿路(腎機能・腎超音波)を定期的に評価していくことです。
✗ 4. 適切でない
膀胱瘻を造設する。
下腹部から膀胱へ直接カテーテルを通す方法で、尿道への負担を避けられる利点はある一方、手術侵襲があり、カテーテルを入れたままにする点は留置と同じなので感染・結石の問題は残ります。手指が使えず自己導尿ができない頸髄損傷例、尿道狭窄・尿道損傷がある場合、介助での導尿が続けられない場合などに検討する選択肢です。本例ではまず自己間欠導尿の指導を行い、手技が習得できない場合や、尿道びらん・尿道皮膚瘻などの尿道合併症が生じた場合、介助での導尿継続が困難になった段階で、あらためて膀胱瘻を検討します。
ポイント
  • 胸髄損傷は仙髄の排尿中枢より上位の障害=核上型神経因性膀胱。慢性期は排尿筋過活動+排尿筋・括約筋協調不全(DSD)で高圧・残尿となる。
  • 慢性期の排尿管理の第一選択は清潔間欠(自己)導尿。ねらいは「低圧で溜めて、確実に空にする」=腎を守ること。
  • 自己導尿の可否は損傷レベルそのものではなく上肢・手指機能と座位バランスで決まる。胸髄損傷は自立可能。頸髄損傷でもC6〜C7ではテノデーシス把持や自助具(カテーテルホルダーなど)を用いて自立できる例があり、手指機能が不十分な高位頸髄損傷では介助導尿や膀胱瘻を検討する。
  • 実施の目安は1日4〜6回、1回導尿量400〜500mLを超えないよう水分と回数を調整。排尿日誌と定期的な腎機能・尿路の確認をセットにする。
  • 用手排尿法(クレーデ法・腹圧排尿)は膀胱を他動的に圧迫する手技で、適応は核下型(弛緩性膀胱)の一部。DSDのある核上型では高圧をつくり、膀胱尿管逆流→水腎症→腎障害の引き金になる。叩打誘発は仙髄反射弓を介して排尿筋収縮を起こさせる別機序の手技だが、DSDがあれば同じく高圧・残尿となり不適。留置カテーテルは急性期の一時的手段と割り切る。
比較表
排尿管理法仕組み主な利点主な問題点主な適応
自己間欠導尿(CIC)1日数回、自分でカテーテルを挿入して排出膀胱を低圧に保てる/普段は器具を装着しない/外出・就労しやすい手技の習得と継続が必要上肢・手指機能が保たれた脊髄損傷慢性期(本例)
尿道カテーテル留置尿道から膀胱へ入れたまま持続的に排出急性期・全身管理中に確実尿路感染・結石・尿道びらん/尿道皮膚瘻・膀胱萎縮脊髄ショック期など一時的な使用
用手排尿法(クレーデ法・腹圧排尿)用手圧迫や怒責による腹圧で、膀胱を他動的に圧迫して押し出す器具が不要高圧排尿→膀胱尿管逆流・水腎症・腎障害核下型(弛緩性膀胱)で括約筋抵抗が低く残尿の少ない一部の例
(参考)叩打による排尿誘発恥骨上部の叩打で仙髄反射弓を刺激し、排尿筋の反射収縮を誘発する(膀胱を圧迫する手技ではない)器具が不要/反射が残っていれば誘発できるDSDがあると高圧排尿・多量残尿となり腎障害の危険反射が残る核上型で試みられることがあるが、DSDのある本例では推奨されない
膀胱瘻下腹部から膀胱へ直接カテーテルを留置尿道への負担を避けられる手術侵襲/留置に伴う感染・結石は残る手指機能が不十分で自己導尿が困難な例、尿道狭窄・尿道損傷、介助導尿の継続が困難な例
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