学習トップ理由で解く 柔道整復師病理学概論 ▸ §3 病因 / QJ24A104

理由で解く 柔道整復師

QJ24A104 病理学概論

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午前 問104
問題
偽膜性大腸炎の原因菌はどれか。
選択肢
1 黄色ブドウ球菌
2 クロストリジウム・ディフィシル菌
3 スピロヘータ
4 らい菌
解答
正解2(クロストリジウム・ディフィシル菌)
解説

偽膜性大腸炎は、抗菌薬の投与で腸内細菌叢のバランスが崩れた後にクロストリジウム・ディフィシル菌が異常増殖し、その毒素で大腸粘膜に黄白色の偽膜がつくられる病態です。したがって正解は2。

クロストリジウム・ディフィシル菌は芽胞をつくる嫌気性のグラム陽性桿菌で、広域抗菌薬(クリンダマイシン、セフェム系、ニューキノロン系など)によって常在菌が抑えられた腸管内で優位に増えます(菌交代現象)。産生されるトキシンA(腸管毒)とトキシンB(細胞毒)が大腸上皮の細胞骨格を破壊し、上皮の壊死と好中球浸潤を招きます。壊死した上皮・フィブリン・粘液・好中球が粘膜表面に付着したものが「偽膜」で、内視鏡では数mm大の黄白色斑が点在して見えます。病理学的にみると、この偽膜性炎は滲出性炎(線維素性炎)の一型です。滲出したフィブリンが壊死物や白血球とともに粘膜表面に張りつき、膜のように見えているだけで、上皮がつくった本物の膜ではありません。下層の粘膜と一体化しておらず表面に張りついているだけなので、はがれると壊死・びらん面が露出します——だから「」膜と呼ばれます。同じ偽膜性炎のもう一つの代表が、咽頭に灰白色の偽膜をつくるジフテリアです。「線維素性炎ー偽膜性炎(ジフテリア・偽膜性大腸炎)」とセットで覚えておくと、炎症の分類を問う出題にも対応できます。臨床像は抗菌薬使用後に生じる水様性下痢・発熱・腹痛・白血球増多が典型で、重症例では中毒性巨大結腸症に至ります。対応は原因となった抗菌薬の中止とバンコマイシン内服などの標的治療が基本です。芽胞にはアルコール手指消毒が効きにくいため手指は流水と石けんで物理的に洗い流し、環境は芽胞にも有効な次亜塩素酸ナトリウムを選んで清拭します。

✓ 2. 正しい
クロストリジウム・ディフィシル菌
抗菌薬関連腸炎の代表であり、偽膜性大腸炎の原因菌そのものです。芽胞は抗菌薬やアルコール系消毒薬に抵抗して腸管や環境に長く残り、常在菌が減った隙に発芽・増殖してトキシンA/Bを出します。ただし芽胞にも有効な次亜塩素酸ナトリウムであれば不活化できるので、環境清拭にはこちらを用います——「消毒薬全般が効かない」のではなく「薬剤を選べば効く」と押さえてください。「抗菌薬を使ったあとの下痢=ディフィシル菌を疑う」と結びつけて覚えると、臨床でも試験でも迷いません。
✗ 1. 誤り
黄色ブドウ球菌
グラム陽性の球菌で、癤・膿痂疹などの化膿性炎や、エンテロトキシンによる毒素型食中毒(潜伏1〜6時間の嘔吐が主体)を起こす菌です。MRSAが菌交代現象で腸炎を起こすことも知られていますが、MRSA腸炎は手術後などに急激な大量の水様性下痢で発症し、内視鏡でも粘膜のびまん性の発赤・浮腫が主体で偽膜はつくりません。同じ菌交代性腸炎でも、黄白色の偽膜という形態所見があるかどうかで両者を分ける、と押さえておきましょう。
✗ 3. 誤り
スピロヘータ
らせん状の形態をもつ細菌群の総称で、梅毒トレポネーマ(梅毒)、レプトスピラ(ワイル病)、ボレリア(ライム病・回帰熱)などが含まれます。いずれも全身感染や皮膚・神経の病変が中心で、抗菌薬使用後に大腸へ偽膜をつくる菌ではありません。
✗ 4. 誤り
らい菌
抗酸菌の一種で、ハンセン病の原因菌です(らい菌=Mycobacterium leprae)。皮膚と末梢神経を主な場とし、知覚麻痺や皮膚病変を起こします。人工培地で培養できず増殖が極めて遅いのが特徴で、組織像は類上皮細胞を主体とする慢性の肉芽腫性炎です。急性の滲出性炎(線維素性炎)である大腸の偽膜性炎とは、炎症の型そのものが異なります。
ポイント
  • 偽膜性大腸炎=抗菌薬関連腸炎の代表。原因菌はクロストリジウム・ディフィシル菌(現在の学名は Clostridioides difficile)。
  • キーワードは菌交代現象。広域抗菌薬で常在菌が減り、生き残った菌が一気に増えるという流れで理解する。
  • 病態の主役はトキシンA(腸管毒)とトキシンB(細胞毒)。診断は便中トキシン・GDH抗原検査と、内視鏡での黄白色の偽膜。
  • 偽膜性炎は滲出性炎(線維素性炎)の一型。偽膜は壊死物+フィブリン+好中球が粘膜表面に張りついたもので、上皮がつくった本物の膜ではないので「偽」膜。もう一つの代表はジフテリアの咽頭偽膜。
  • 芽胞形成菌なので抗菌薬やアルコール手指消毒が効きにくい。手指は流水と石けんで洗い流し、環境は芽胞にも有効な次亜塩素酸ナトリウムで清拭して接触予防策をとる(消毒薬は「効く薬剤を選ぶ」のがポイント)。
  • 治療の第一歩は原因抗菌薬の中止。腸管運動を止める止瀉薬は毒素を腸内に留めるため避け、医師の管理下でバンコマイシン内服などの治療を行う。
比較表
選択肢の菌分類・特徴代表的な疾患(炎症の型)
クロストリジウム・ディフィシル菌嫌気性グラム陽性桿菌/芽胞をつくる偽膜性大腸炎(滲出性炎=線維素性炎)・抗菌薬関連下痢症
黄色ブドウ球菌グラム陽性球菌/ブドウの房状に配列化膿性炎、毒素型食中毒、MRSA腸炎(発赤・浮腫が主体で偽膜なし)
スピロヘータらせん状の細菌の総称梅毒、レプトスピラ症、ライム病・回帰熱
らい菌(Mycobacterium leprae抗酸菌/人工培地で培養できないハンセン病(皮膚と末梢神経の慢性肉芽腫性炎)
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