学習トップ理由で解く 柔道整復師必修問題 ▸ §45 柔道整復理論 / QJ24A025

理由で解く 柔道整復師

QJ24A025 必修問題

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午前 問25
問題
上腕骨顆上伸展型骨折で正しいのはどれか。
選択肢
1 肘関節前方脱臼と外観が類似する。
2 軋轢音を触知する。
3 上肢長は延長する。
4 ヒューター三角が乱れる。
解答
正解2(軋轢音を触知する。)
解説

上腕骨顆上伸展型骨折は骨折ですから、骨折の固有症状である軋轢音(骨折端がこすれ合う音・感覚)が触知されます。外観は肘関節後方脱臼に酷似しますが、ヒューター三角が保たれる点で鑑別できます。

顆上部は上腕骨遠位の骨幹から骨端へ移る部分で、前後に扁平で細く、力学的に弱い場所です。学童期に手をついて転倒し、肘が過伸展されると遠位骨片が後上方へ転位する伸展型となり、これが顆上骨折の大部分を占めます。遠位骨片が後方へ上がるため、肘頭が後方に突出し、上腕は短く見え、外観は肘関節後方脱臼と紛らわしくなります。しかし骨折線はヒューター三角を構成する3点(上腕骨内側上顆・外側上顆・肘頭)よりも近位にあるため、3点そのものは転位せず、位置関係は正常のまま保たれます。ここで注意したいのは、三角が乱れるのは肘関節脱臼だけではないという点です。3点そのものがずれる上顆骨折(内側上顆骨折・外側顆骨折)や顆部(顆間)骨折でも三角は乱れます。「乱れる=脱臼」と丸暗記するのではなく、「骨折線が3点より近位にとどまるか、3点そのものが動くか」で判断してください。加えて骨折であるがゆえに異常可動性と軋轢音があり、これも脱臼との違いになります。前方を走る上腕動脈・正中神経の損傷やフォルクマン拘縮の危険が高い骨折なので、橈骨動脈の拍動、手指の色調・感覚・自動運動を必ず確認し、異常があれば固定を緩めて肢位を整え、直ちに医師へ紹介します。

✓ 2. 正しい
軋轢音を触知する。
骨折端どうしが接触してこすれるため、軋轢音(クレピタス)が生じます。異常可動性・転位や変形とともに骨折の固有症状であり、脱臼では認められないため鑑別に役立ちます。ただし確認のために繰り返し動かすと血管・神経損傷や転位の増悪を招くので、触診で偶然得られた情報にとどめ、確認できたら直ちに副子などで固定して医師へつなぎます。
✗ 1. 誤り
肘関節前方脱臼と外観が類似する。
外観が類似するのは肘関節「後方」脱臼です。伸展型では遠位骨片が後上方へ転位して肘頭が後方に突出するため、後方脱臼と見誤りやすくなります。肘関節前方脱臼はまれで、肘頭部の陥凹や前腕の延長を示すため外観が異なります。なお、遠位骨片が前方へ転位するのは屈曲型顆上骨折です。
✗ 3. 誤り
上肢長は延長する。
延長ではなく短縮します。遠位骨片が後上方へ転位して骨折部で重なるため上腕長が短縮し、前腕長は変わらないので、上肢全体としても延びることはありません。前腕が短くみえるのは肘関節後方脱臼のほうで、この「上腕が短いか、前腕が短いか」も両者の見分けどころになります。
✗ 4. 誤り
ヒューター三角が乱れる。
乱れるのではなく、保たれます。理由は単純で、骨折線が内側上顆・外側上顆・肘頭という3点よりも近位にあるため、3点そのものは転位せず、三角形(および肘伸展位でのヒューター線)の関係が変わらないからです。ここで「三角が乱れる=肘関節脱臼」と短絡して覚えないでください。乱れるのは後方脱臼だけではありません。3点そのものがずれる上顆骨折(内側上顆骨折・外側顆骨折)や顆部(顆間)骨折でも三角は乱れます。つまり「骨折線が3点より近位にあるから位置関係が変わらない=保たれる(顆上骨折)」「3点そのものが動く=乱れる(肘関節脱臼・上顆骨折・顆部骨折)」と理由で整理しておけば、どの病態が出題されても判断できます。
ポイント
  • 伸展型顆上骨折は学童期に多く、手をついた転倒で肘が過伸展され、遠位骨片が後上方へ転位して生じる(顆上骨折の大部分)。
  • 骨折の固有症状(軋轢音・異常可動性・転位や変形)がみられ、軋轢音は脱臼との鑑別点になる。
  • ヒューター三角・ヒューター線が保たれる側=顆上骨折。骨折線が3点(内側上顆・外側上顆・肘頭)より近位にあり、3点そのものが動かないため。外観が酷似する肘関節後方脱臼との決め手になる。
  • ヒューター三角が乱れる側=肘関節脱臼だけではない。3点そのものが転位する上顆骨折(内側上顆骨折・外側顆骨折)や顆部(顆間)骨折でも乱れる。「乱れる=脱臼」と丸暗記しない。
  • 上腕長は短縮し、前腕長は正常。後方脱臼では前腕が短くみえる。
  • 上腕動脈・正中神経損傷やフォルクマン拘縮の危険があるため、橈骨動脈拍動・手指の色調・感覚・自動運動を確認し、疑わしければ固定して直ちに医師へ紹介する。
比較表
比較項目上腕骨顆上骨折(伸展型)肘関節後方脱臼上顆骨折・顆部(顆間)骨折
好発年齢学童期(小児)青壮年内側上顆骨折・外側顆骨折は小児、顆間骨折は成人〜高齢者
受傷機転手をついた転倒+肘の過伸展手をついた転倒+肘の過伸展肘への外反・内反力や筋の牽引力、肘頭部への直達外力
ヒューター三角・線保たれる(骨折線が3点より近位)乱れる(肘頭が後上方へ移動)乱れる(三角を構成する3点そのものが転位)
軋轢音・異常可動性ありなしあり
弾発性固定なしありなし
長さの変化上腕長が短縮、前腕長は正常前腕が短くみえる上顆骨折では目立たない。顆間骨折では上腕長が短縮しうる
肘頭の位置後方へ突出(骨片ごと後上方転位)後上方へ突出骨片の転位に従って偏位(顆間骨折では肘部が横に広がる)
合併症で注意上腕動脈・正中神経損傷、フォルクマン拘縮尺骨神経損傷、内側側副靱帯損傷、骨折の合併内側上顆骨折は尺骨神経損傷、外側顆骨折は偽関節・外反肘・遅発性尺骨神経麻痺
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