学習トップ理由で解く 作業療法士第11章 ▸ 実地 / QO56P008

理由で解く 作業療法士

QO56P008 作業療法評価学

出典:第56回作業療法士国家試験(2021)午後 問8
問題
72歳の女性。転倒し、左手をついた。左手関節部に疼痛と腫脹が生じ、近くの病院を受診し徒手整復後ギプス固定を受けた。骨癒合後の画像を図に示す。手関節尺屈により尺骨頭部の疼痛とクリック音がする。手指の機能障害はない。生じている合併症で考えられるのはどれか。
図
選択肢
1 反射性交感神経性ジストロフィー
2 尺骨突き上げ症候群
3 長母指伸筋腱断裂
4 正中神経損傷
5 月状骨脱臼
解答
正解2(尺骨突き上げ症候群)
解説

橈骨遠位端骨折が短縮して治癒すると尺骨が相対的に長くなり(尺骨プラス変異)、尺屈で尺骨頭が手根骨に衝突して尺側部痛とクリックを生じる=尺骨突き上げ症候群。

画像は左手関節の単純X線2方向像で、遠位橈骨に骨折治癒後の変形・仮骨・皮質不整を認め、側面像では背側凸の変形(dinner fork様)を伴う。橈骨が短縮して治癒した結果、尺骨頭が橈骨関節面より相対的に遠位へ突出する尺骨プラス変異の状態となっている。この状態では手関節を尺屈すると突出した尺骨頭が手根骨(月状骨・三角骨)や三角線維軟骨複合体(TFCC)に衝突し、尺側部痛とクリック音を生じる。これが尺骨突き上げ(尺骨インパクション/アバットメント)症候群であり、橈骨遠位端骨折後の典型的合併症である。設問の「尺屈で尺骨頭部の疼痛とクリック」「手指機能障害はない」という所見はこの病態と一致し、正答は選択肢2となる。長母指伸筋腱断裂や正中神経損傷も橈骨遠位端骨折の合併症だが手指の運動・感覚障害を伴い設問と合わず、CRPSはびまん性の骨萎縮を、月状骨脱臼は側面像での手根骨転位を示すはずで、いずれも本画像・症状と整合しない。

✗ 1. 誤り
反射性交感神経性ジストロフィー
画像の主所見は遠位橈骨の骨折治癒後変形であり、CRPSに典型的な手根骨〜中手骨のびまん性・斑状の骨萎縮は目立たない。局所的な尺骨頭部痛・クリックという症状とも一致しない
✓ 2. 正しい
尺骨突き上げ症候群
遠位橈骨骨折が短縮を伴って治癒し、橈骨に対して尺骨頭が相対的に遠位へ突出(尺骨プラス変異/positive ulnar variance)した外観が読み取れる。尺屈時に尺骨頭が手根骨(月状骨・三角骨)に衝突して疼痛とクリック音を生じる病態に合致する
✗ 3. 誤り
長母指伸筋腱断裂
橈骨遠位端骨折の遅発合併症ではあるが母指伸展不能(母指落下)を来し、「手指の機能障害はない」という設問記載と矛盾する。X線でも腱は評価できず該当所見はない
✗ 4. 誤り
正中神経損傷
手根管部での正中神経障害は母指球〜正中神経支配域の感覚・運動障害を来すもので、尺側のクリック音・尺骨頭部痛とは一致しない。X線でも神経は描出されない
✗ 5. 誤り
月状骨脱臼
側面像で月状骨の掌側/背側への転位所見(spilled teacup徴候等)を認めるはずだが、本画像では月状骨の脱臼・整列異常は指摘できず、主所見は橈骨の骨折治癒後変形である
ポイント
  • 橈骨遠位端骨折の変形治癒→橈骨短縮→尺骨プラスバリアンス
  • 尺屈時の尺骨頭部痛・クリック=尺骨突き上げ症候群
  • 手指機能正常なら腱断裂・神経損傷は否定的
比較表
橈骨遠位端骨折の主な合併症
合併症特徴的所見
尺骨突き上げ症候群尺屈時の尺骨頭部痛・クリック
長母指伸筋腱断裂母指IP伸展不能
正中神経損傷(手根管)橈側指しびれ・母指球萎縮
CRPS(RSD)難治性疼痛・腫脹・皮膚変化
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。

この問題をアプリで理由で解く 作業療法士
App Store入手