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理由で解く 作業療法士

QO56P013 作業療法評価学

出典:第56回作業療法士国家試験(2021)午後 問13
問題
58歳の男性。両手の母指と示指で紙をつまみ、左右に引っ張ったときの写真を図に示す。考えられる末梢神経障害はどれか。
図
選択肢
1 右Guyon管症候群
2 右後骨間神経麻痺
3 左前骨間神経麻痺
4 右手根管症候群
5 左肘部管症候群
解答
正解5(左肘部管症候群)
解説

Froment徴候陽性=尺骨神経麻痺(母指内転筋の代わりに長母指屈筋で母指IPを屈曲し代償)。選択肢1右Guyon管と5左肘部管はどちらも尺骨神経障害でFroment陽性となり得るため、写真では『どちらの手の母指が屈曲=陽性か(左右)』で判別する。陽性が左手→左肘部管症候群。

写真(別冊No.3)は、両手の母指と示指で1枚の紙を挟み左右に引き合う母指内転筋の筋力テスト=Froment(フローマン)徴候である。正常であれば尺骨神経支配の母指内転筋が働き母指を伸展位のまま紙を挟めるが、尺骨神経麻痺があると母指内転筋が働かず紙が抜けそうになるため、正中神経支配の長母指屈筋で母指IP関節を屈曲させて代償する。この『母指IPが屈曲する』側が陽性(患側)である。写真では左手の母指がIP関節で屈曲位となっており左Froment徴候陽性=左尺骨神経麻痺と読み取れる。尺骨神経の絞扼部位には肘部の肘部管(肘部管症候群)と手関節尺側のGuyon管(Guyon管症候群)があり、いずれもFroment徴候が陽性化し得るため、選択肢1(右Guyon管)と選択肢5(左肘部管)はともに尺骨神経障害である。両者を分けるのは陽性を示す手の左右のみで、陽性が左手であることから左の尺骨神経障害=5の左肘部管症候群が該当する。選択肢2(後骨間神経=橈骨神経系→下垂指)、3(前骨間神経=正中神経系→tear drop徴候)、4(手根管=正中神経→猿手)はいずれもFroment徴候を呈さず不適。よって公式正答[5]と整合する。

✗ 1. 誤り
右Guyon管症候群
Guyon管は手関節尺側の尺骨神経絞扼で、母指内転筋麻痺によりFroment徴候は陽性化し得る。しかし本写真で陽性なのは左手であり、『右』では患側の左右が逆
✗ 2. 誤り
右後骨間神経麻痺
後骨間神経は橈骨神経の枝で手指伸展筋を支配し、障害されると手指を伸ばせない下垂指(drop finger)を呈する。母指内転筋を評価するFroment徴候とは無関係
✗ 3. 誤り
左前骨間神経麻痺
前骨間神経は正中神経の枝で長母指屈筋・示指の深指屈筋などを支配し、母指IPと示指DIPを屈曲できずtear drop徴候(OKサイン不能)を呈す。母指IPを屈曲するFroment徴候とは所見が逆
✗ 4. 誤り
右手根管症候群
手関節部での正中神経絞扼で母指球萎縮(猿手)や橈側3指半のしびれを来す。尺骨神経支配の母指内転筋を評価するFroment徴候とは無関係
✓ 5. 正しい
左肘部管症候群
肘部管は肘部での尺骨神経絞扼。母指内転筋が麻痺し紙を強く挟めないため長母指屈筋で母指IPを屈曲して代償する=左Froment徴候陽性の写真に一致する尺骨神経麻痺
ポイント
  • Froment徴候=母指内転筋(尺骨神経)麻痺の代償で母指IP屈曲
  • 肘部管症候群・Guyon管症候群は尺骨神経障害
  • 前骨間神経麻痺はOKサイン不能(機序が逆)
比較表
上肢末梢神経障害と特徴的所見
絞扼部位神経特徴的徴候
肘部管尺骨神経Froment徴候・鷲手・環小指のしびれ
Guyon管尺骨神経(手関節)深枝麻痺・骨間筋萎縮
手根管正中神経母指球萎縮・正中領域のしびれ
前骨間神経正中神経枝OKサイン不能(涙滴徴候)
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