学習トップ / 理由で解く 臨床医学各論 / 第7章 ▸ A. 糖代謝異常 / Q27H075

理由で解く 臨床医学各論

Q27H075 代謝・栄養疾患

出典:鍼灸 第27回(2019) 問題75
問題
「50歳の男性。主訴は体重減少。口渇、下肢の感覚鈍麻を認める。BMI30。空腹時血糖180mg/dl、HbA1c8.9%。」本症例の神経学的所見で正しいのはどれか。
選択肢
1 感覚障害は左右非対称である。
2 振動覚は正常である。
3 アキレス腱反射は亢進する。
4 発汗異常を認める。
解答
正解4(発汗異常を認める。)
解説

高血糖が長く続いた状態で下肢の感覚鈍麻が出ている症例で、糖尿病性末梢神経障害の所見を選ぶ問題です。この神経障害は感覚・運動だけでなく自律神経も侵すため、発汗異常が起こります。

糖尿病性末梢神経障害は、代謝障害と細小血管障害によって末梢神経が広い範囲で侵される多発性神経障害です。四肢の遠位ほど障害が強く、感覚障害は下肢の先から左右対称に広がる「手袋足袋型」の分布をとり、早期には両側内果(うちくるぶし)の振動覚低下が現れます。障害されるのは末梢神経(下位運動ニューロン側)なので麻痺は弛緩性で、深部腱反射は低下・消失します。さらに自律神経線維も侵されるため、皮膚の循環障害・発汗障害・起立性低血圧が加わります。本症例の口渇と体重減少は高血糖の症状です。空腹時血糖180mg/dl(126以上)とHbA1c8.9%(6.5%以上)はどちらも糖尿病型で、同じ採血で両方を満たすので糖尿病と診断できます。BMI30の肥満は2型糖尿病の背景として読み、すでに下肢の感覚鈍麻(神経障害)が出ていることから、高血糖が長い期間続いてきたと推定します。

✗ 1. 誤り
感覚障害は左右非対称である。
糖尿病の神経障害の中心は、末梢神経の広い範囲が侵される左右対称の多発性神経障害で、本症例のような下肢遠位の感覚鈍麻はこの型で説明します。左右非対称の感覚障害は、単一の神経や神経根が局所的に障害されたときを示唆する所見で、本症例で問われている典型像には当てはまりません。
✗ 2. 誤り
振動覚は正常である。
振動覚は糖尿病性末梢神経障害で早期から低下し、両側内果の振動覚低下は特徴的な所見として挙げられます。末梢神経障害の評価では、痛覚・温覚・触覚・2点識別覚とともに振動覚を調べます。下肢の感覚鈍麻を訴える本症例では振動覚も低下していると考えるのが妥当で、「正常」とする本肢は誤りです。
✗ 3. 誤り
アキレス腱反射は亢進する。
腱反射が亢進するのは、錐体路(上位運動ニューロン)が障害されて痙性麻痺を示すときの特徴です。末梢神経が障害された場合の麻痺は弛緩性で、筋緊張が低下し腱反射は低下・消失します。糖尿病性末梢神経障害でもアキレス腱反射は低下・消失し、両側アキレス腱反射の低下は両側内果の振動覚低下と並ぶ代表的な所見です。
✓ 4. 正しい
発汗異常を認める。
末梢神経障害の評価では、感覚障害・運動障害と並んで自律神経障害(皮膚の循環障害・発汗障害)をみます。糖尿病性末梢神経障害でも自律神経線維が侵されるため、発汗異常が現れます。足の発汗が減ると皮膚が乾燥して亀裂ができやすく、感覚鈍麻と重なって足病変の下地になるので、足の観察が欠かせません。
ポイント
  • 糖尿病性末梢神経障害は多発性神経障害。四肢遠位ほど強く、左右対称の手袋足袋型に広がる。
  • 早期の特徴的所見は両側内果の振動覚低下と両側アキレス腱反射の低下。感覚は痛覚・温覚・触覚・2点識別覚・振動覚を調べる。
  • 末梢神経障害の麻痺は弛緩性で腱反射は低下・消失。腱反射の亢進は錐体路(中枢)障害の所見。
  • 自律神経も侵されるため、発汗障害・皮膚の循環障害・起立性低血圧が起こる。
  • 感覚が鈍く発汗も減っているため、熱さの訴えに頼れない。感覚が低下した部位への施灸や温熱刺激は避けるか、ごく控えめにして皮膚の状態をこまめに確かめ、熱傷を防ぐ。あわせて、毎日の足の観察・深爪の回避・適切な靴といったフットケアを指導する。
  • 重要用語: 多発性神経障害, 手袋足袋型の感覚障害, 振動覚, 自律神経障害(発汗障害), 弛緩性麻痺 を正確に理解しておくこと。
比較表
項目末梢神経の障害(弛緩性麻痺)錐体路の障害(痙性麻痺)
筋緊張低下、またはまったくみられない亢進
腱反射低下・消失亢進
感覚障害四肢遠位優位。多発性神経障害では左右対称の手袋足袋型錐体路は運動の下行路であり、その障害だけでは感覚障害は生じない(感覚は別の伝導路が担う)
自律神経症状皮膚の循環障害・発汗障害を伴う末梢の発汗障害は主徴ではない
糖尿病での位置づけ代謝性の多発性神経障害として当てはまる当てはまらない
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。

この問題をアプリで理由で解く 臨床医学各論
App Store入手