学習トップ理由で解く 臨床医学各論第11章 ▸ F. 認知症性疾患 / Q1138

理由で解く 臨床医学各論

Q1138 神経疾患

出典:鍼灸 第27回(2019) 問題72
問題
認知症の症状とその原因となる病態の組合せで正しいのはどれか。
選択肢
1 トイレ以外で放尿する ― 失行
2 テレビのリモコンが使えない ― 失認
3 「財布がない」と大騒ぎをする ― 記銘力障害
4 料理ができない ― 見当識障害
解答
正解3(「財布がない」と大騒ぎをする――記銘力障害)
解説
✗ 1. 誤り
トイレ以外で放尿する ― 失行
トイレ以外で放尿するのは場所の見当識障害や前頭葉機能障害による脱抑制が原因であり、失行ではない。失行とは運動機能自体には問題がないのに、学習した意図的な動作が遂行できない状態を指す(例:着衣失行、観念運動失行など)。
✗ 2. 誤り
テレビのリモコンが使えない ― 失認
テレビのリモコンが使えないのは失行(道具の使用の障害=観念失行)に該当し、失認ではない。失認とは感覚機能(視覚・聴覚など)自体には問題がないのに、対象を正しく認識できない状態を指す(例:相貌失認、半側空間無視など)。
✓ 3. 正しい
「財布がない」と大騒ぎをする ― 記銘力障害
「財布がない」と大騒ぎをするのは記銘力障害(近時記憶の障害)が原因である。財布をどこに置いたか記憶できないために見つけられず、「盗まれた」と訴える物盗られ妄想に発展することもある。これはアルツハイマー型認知症の初期にしばしばみられる症状であり、記銘力障害を基盤とした行動・心理症状(BPSD)の一つである。
✗ 4. 誤り
料理ができない ― 見当識障害
料理ができないのは遂行機能障害(実行機能障害)が主な原因である。料理は献立を考え、材料を準備し、手順を計画して実行する複雑な課題であり、前頭葉機能に依存する。見当識障害は時間・場所・人物の認識が障害される状態であり、料理ができないこととは直接的な対応関係にない。
ポイント
  • 認知症の各症状と対応する高次脳機能障害を正確に結びつけて理解する
  • 失行(動作の障害)と失認(認識の障害)を混同しないこと
  • 記銘力障害は物盗られ妄想などのBPSDの基盤となる
  • 重要用語: 記銘力障害, 失行, 失認, 見当識障害, 遂行機能障害 を正確に理解しておくこと。
比較表
高次脳機能障害 定義 具体的な症状例
記銘力障害 新しい情報を記憶できない 物の置き場所を忘れる、物盗られ妄想
失行 運動機能は正常だが意図した動作ができない リモコンが使えない、着衣ができない
失認 感覚は正常だが対象を認識できない 顔がわからない(相貌失認)
見当識障害 時間・場所・人物の認識障害 日時がわからない、迷子になる
遂行機能障害 計画・実行能力の障害 料理ができない、段取りが立てられない
解説画像
鍼灸 第27回(2019) 問題72|認知症の症状とその原因となる病態の組合せで正しいのはどれか。 解説図
鍼灸 第27回(2019) 問題72|認知症の症状とその原因となる病態の組合せで正しいのはどれか。
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