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理由で解く 臨床医学各論

Q27H076 代謝・栄養疾患

出典:鍼灸 第27回(2019) 問題76
問題
「50歳の男性。主訴は体重減少。口渇、下肢の感覚鈍麻を認める。BMI30。空腹時血糖180mg/dl、HbA1c8.9%。」本疾患について正しいのはどれか。
選択肢
1 免疫機能は亢進する。
2 HbA1c は過去2 週間の平均血糖値を反映する。
3 急性合併症には昏睡がある。
4 大血管障害には腎症がある。
解答
正解3(急性合併症には昏睡がある。)
解説

同じ症例(50歳男性、口渇・体重減少・下肢の感覚鈍麻、BMI30、空腹時血糖180mg/dl、HbA1c8.9%)をもとに、糖尿病そのものの理解を問う問題です。著しい高血糖は意識障害から昏睡に至るため、急性合併症として昏睡が挙がります。

糖尿病の合併症は「急性」と「慢性」に分けて整理すると迷いません。急性合併症は、血糖の異常が短時間で命に関わる状態をつくるもので、著しい高血糖による糖尿病ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖状態が代表です。いずれも強い脱水と意識障害を生じ、進行すれば昏睡になります。治療中に起こる低血糖も、冷汗・動悸・手指振戦などの交感神経症状に続いてけいれん・意識障害・昏睡へ進むため、急性の危険として同じ枠で覚えます。一方、慢性合併症は長期の高血糖が血管を傷めることで起こり、細い血管が傷む細小血管障害(網膜症・腎症・神経障害)と、動脈硬化が進む大血管障害(心筋梗塞・脳梗塞・閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患:PAD)など)に分かれます。本症例の下肢の感覚鈍麻は、この細小血管障害の側に位置づけられる神経障害です。

✗ 1. 誤り
免疫機能は亢進する。
糖尿病は、悪性腫瘍や免疫抑制薬の使用などと並んで生体防御機構を低下させる代表的な要因で、患者は易感染性宿主として扱われます。高血糖では口渇・多飲・多尿・体重減少・易疲労感とともに易感染がみられます。したがって免疫機能は亢進ではなく低下し、施術では使い捨て鍼・刺鍼部位の消毒・手指衛生の徹底が求められます。
✗ 2. 誤り
HbA1c は過去2 週間の平均血糖値を反映する。
HbA1cは赤血球のヘモグロビンにブドウ糖が結びついた割合を示す指標で、赤血球の寿命に沿っておおむね過去1〜2か月の平均血糖の状態を映すとされ、2週間という短い期間ではありません。1回の採血で得られる血糖値が食事や運動で大きく動くのに対し、HbA1cは日々の変動をならして血糖管理の状況を示します。なお、約2週間の平均血糖を映すのはグリコアルブミンで、本肢の「2週間」はその指標に当たる期間です。本症例のHbA1c8.9%も、直前だけでなく高血糖が続いてきたことを示す値として読みます。
✓ 3. 正しい
急性合併症には昏睡がある。
著しい高血糖では糖尿病ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖状態となり、強い脱水と悪心・嘔吐、意識障害を生じ、昏睡に至ります。治療中の低血糖でも、けいれんや意識障害から昏睡に進みます。どちらも急性合併症であり、施術中に意識障害をみたら施術を中止して直ちに救急要請します(意識障害があるときはブドウ糖の経口投与は誤嚥の危険があるため行いません)。
✗ 4. 誤り
大血管障害には腎症がある。
腎症は、網膜症・神経障害とともに細い血管が傷むことで生じる細小血管障害に属します。大血管障害は動脈硬化の促進によって起こるもので、心筋梗塞・脳梗塞・閉塞性動脈硬化症などを指します。腎症を大血管障害に分類している点が誤りで、「細小血管障害=網膜症・腎症・神経障害」と対にして覚えると混同しません。
ポイント
  • 糖尿病の合併症は急性と慢性に二分する。急性=糖尿病ケトアシドーシス・高浸透圧高血糖状態・低血糖で、いずれも意識障害から昏睡に至る。
  • 慢性合併症は細小血管障害(網膜症・腎症・神経障害)と大血管障害(動脈硬化による心筋梗塞・脳梗塞・閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患:PAD))に分ける。
  • 高血糖の症状は口渇・多飲・多尿・体重減少・易疲労感・易感染。糖尿病患者は易感染性宿主であり、免疫機能は低下する。
  • HbA1cはおおむね過去1〜2か月の平均血糖を反映する(2週間ではない)。約2週間を映すのはグリコアルブミン。
  • 施術では易感染性と感覚低下を前提に、消毒と手指衛生を徹底し熱傷を避ける。意識障害があれば施術を中止して救急要請する。
  • 重要用語: 糖尿病ケトアシドーシス, 高浸透圧高血糖状態, 細小血管障害, 大血管障害, HbA1c を正確に理解しておくこと。
比較表
区分含まれるもの成り立ち
急性合併症糖尿病ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖状態、低血糖血糖の急激な異常。強い脱水や中枢神経のブドウ糖不足により意識障害・昏睡に至る
慢性合併症(細小血管障害)網膜症、腎症、神経障害長期の高血糖で細い血管が傷む
慢性合併症(大血管障害)心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患:PAD)動脈硬化が促進され、太い血管が詰まる
感染に関する変化易感染(易感染性宿主)生体防御機構が低下し、感染しやすく治りにくい
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