学習トップ理由で解く 解剖学第10章 ▸ I. 体幹の局所解剖・脈管・神経 / Q0907

理由で解く 解剖学

Q0907 運動器系

出典:鍼灸 第4回(1996) 問題33
問題
鼠径靭帯について誤っている記述はどれか。
選択肢
1 上前腸骨棘と恥骨結合とを結ぶ。
2 大腿三角の上縁を形成する。
3 鼠径管の上壁を形成する。
4 大腿神経は鼠径靭帯の下を通る。
解答
正解3(鼠径管の上壁を形成する。)
解説
✗ 1.
上前腸骨棘と恥骨結合とを結ぶ。
✗ 正しい。 鼠径靭帯は外腹斜筋の停止腱膜の下縁が肥厚したもので、上前腸骨棘と恥骨結節(恥骨結合ではない)の間に張る。厳密には恥骨結合ではなく恥骨結節が付着点であるが、両者はごく近接し、この選択肢は実質的に正しい記述として扱われる。
✗ 2.
大腿三角の上縁を形成する。
✗ 正しい。 大腿三角は鼠径靭帯・縫工筋・長内転筋に囲まれ、上縁を鼠径靭帯が形成する。内部には内側から大腿静脈・大腿動脈・大腿神経が並び、大腿三角は下肢と外陰部のリンパを集める鼠径リンパ節の集積地でもある。
✓ 3. 誤り
鼠径管の上壁を形成する。
鼠径管は側腹筋のトンネルであり、鼠径靭帯は鼠径管の「下壁(底面)」を形成する。上壁は内腹斜筋と腹横筋の下縁によって構成され、前壁は外腹斜筋腱膜、後壁は横筋筋膜と腹横筋腱膜がつくる。したがって鼠径靭帯を上壁とするのは誤りである。男性では精索、女性では子宮円索が斜め内下方へ走ってこの管を通り、ヘルニアの好発部位となる。
✗ 4.
大腿神経は鼠径靭帯の下を通る。
✗ 正しい。 大腿神経は腸腰筋とともに鼠径靭帯の下にできた筋裂孔を通って大腿前面に至る。血管裂孔には大腿動脈・大腿静脈が通り、筋裂孔と血管裂孔の間は腸恥筋膜弓で隔てられる。
ポイント
  • 鼠径靭帯は上前腸骨棘と恥骨結節を結び、鼠径管の下壁(底)をなす。上壁は内腹斜筋・腹横筋の下縁である。
  • 覚え方のコツ: 「鼠径靭帯=管の底、屋根は内腹斜筋+腹横筋」と屋根・床の関係で覚える。大腿部では「鼠径靭帯の下は外側から神経・動脈・静脈」で NAV(Nerve-Artery-Vein)の順に並ぶ。
  • 関連知識: 鼠径管は男性では精索、女性では子宮円索が通る。深鼠径輪は鼠径靭帯中央、浅鼠径輪は恥骨結合すぐ上方。筋裂孔は腸腰筋・大腿神経、血管裂孔は大腿動・静脈の通路。
  • よくある間違い: 鼠径靭帯を鼠径管の上壁と取り違える/大腿神経が血管裂孔を通ると誤る/鼠径靭帯の両端を「上前腸骨棘と恥骨結合」と覚えて恥骨結節と混同する。
  • 臨床応用: 鼠径管は前腹壁で抵抗が弱く、鼠径ヘルニアの好発部位。男児では精巣下降後の腹膜鞘状突起の閉鎖不全により先天性鼠径ヘルニアが生じる。
比較表
構造 前壁 上壁(天井) 下壁(底) 後壁
鼠径管 外腹斜筋腱膜 内腹斜筋・腹横筋の下縁 鼠径靭帯 横筋筋膜・腹横筋腱膜
解説画像
鍼灸 第4回(1996) 問題33|鼠径靭帯について誤っている記述はどれか。 解説図
鍼灸 第4回(1996) 問題33|鼠径靭帯について誤っている記述はどれか。
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