学習トップ理由で解く 解剖学第10章 ▸ H. 体幹の筋 / Q0900

理由で解く 解剖学

Q0900 運動器系

出典:鍼灸 第34回(2026) 問題16
問題
腹部の筋について最も適切なのはどれか。
選択肢
1 内腹斜筋は吸気に働く。
2 腹直筋は腰神経で支配される。
3 腹横筋下端の筋束は精巣挙筋を形成する。
4 外腹斜筋の停止腱膜の肥厚部が鼠径靱帯である。
解答
正解4(外腹斜筋の停止腱膜の肥厚部が鼠径靱帯である。)
解説
✗ 1. 誤り
内腹斜筋は吸気に働く。
内腹斜筋は側腹筋の中層にあり、肋骨の引き下げや体幹の回旋・側屈・前屈、腹圧の上昇に働く。腹壁筋の収縮は横隔膜を挙上させ胸腔を狭めるため、努力性呼気筋として機能するが、吸気には働かない。
✗ 2. 誤り
腹直筋は腰神経で支配される。
腹直筋の支配神経は「肋間神経(第7〜12胸神経)」であり、腰神経ではない。体幹前面の腹筋群(腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋)は主に下位肋間神経と腸骨下腹神経(腰神経叢の一部)により支配されるが、腹直筋自体は腰神経支配ではない。
✗ 3. 誤り
腹横筋下端の筋束は精巣挙筋を形成する。
精巣挙筋は「内腹斜筋」の最下端部の筋束が精索を包み込むように下降して形成される。支配神経も陰部大腿神経で他の内腹斜筋(肋間神経・腸骨下腹神経)と異なる。腹横筋由来ではない。
✓ 4. 正しい
外腹斜筋の停止腱膜の肥厚部が鼠径靱帯である。
鼠径靱帯は外腹斜筋の停止腱膜の下縁が肥厚して靭帯となり、上前腸骨棘と恥骨結節との間に張ったものである。長さ成人で約12〜14cm。鼠径管の底面(下縁)を構成し、大腿輪・血管裂孔・筋裂孔の上縁となる重要な解剖学的指標で、鼠径ヘルニアや大腿ヘルニアの診断・治療の基準となる構造である。
ポイント
  • 鼠径靭帯=外腹斜筋停止腱膜下縁の肥厚部、上前腸骨棘と恥骨結節を結ぶ。
  • 覚え方のコツ: 「鼠径靭帯=外腹斜筋」「精巣挙筋=内腹斜筋」「腹圧と横走=腹横筋」「前屈=腹直筋」とペアで整理。
  • 関連知識: 腹筋の支配神経は下位肋間神経(T7〜T12)と腸骨下腹神経・腸骨鼠径神経(L1)。腹筋の収縮は横隔膜を押し上げて努力性呼気を助ける。腹壁の層構造は外→内が「皮膚・皮下脂肪・スカルパ筋膜・外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋・横筋筋膜・腹膜下組織・壁側腹膜」。
  • よくある間違い: 鼠径靭帯を内腹斜筋由来とする/精巣挙筋を外腹斜筋・腹横筋由来とする/腹直筋を腰神経支配と誤る。
  • 臨床応用: 鼠径靭帯より上方の鼠径管を通るヘルニア=鼠径ヘルニア(男性に多い)、下方の血管裂孔を通るヘルニア=大腿ヘルニア(女性に多い)。手術時の解剖学的指標として極めて重要。
比較表
腹筋 支配神経 主な作用
腹直筋 肋間神経(T7〜12) 体幹前屈
外腹斜筋 肋間神経(T5〜12)、腸骨下腹神経 肋骨下制、体幹前屈・回旋(反対側)
内腹斜筋 肋間神経(T10〜12)、腸骨下腹神経 体幹回旋(同側)・側屈、精巣挙筋の由来
腹横筋 肋間神経(T7〜12)、腸骨下腹神経 腹圧上昇
腰方形筋 腰神経叢 腰椎側屈、第12肋骨下制
解説画像
鍼灸 第34回(2026) 問題16|腹部の筋について最も適切なのはどれか。 解説図
鍼灸 第34回(2026) 問題16|腹部の筋について最も適切なのはどれか。
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