学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §20 臨床実地問題 / QJ34P056

理由で解く 柔道整復師

QJ34P056 外科学概論

出典:第34回柔道整復師国家試験(2026)午後 問56
問題
18歳の男子。バイクで転倒し左側胸部を強打した。意識は清明。左側胸部に著明な疼痛があり、呼吸困難を訴えている。胸部単純エックス線検査で左第4・5肋骨骨折と左肺完全虚脱がみられた。まず行うべき治療はどれか。
選択肢
1 外固定
2 開胸手術
3 気管内挿管
4 胸腔ドレナージ
解答
正解4(胸腔ドレナージ)
解説

左肋骨骨折に伴う外傷性気胸で、左肺が完全に虚脱し呼吸困難をきたしている。まず行うべきは胸腔ドレナージで、胸腔内の空気を抜いて肺を再膨張させることである。

側胸部を強打して肋骨が折れると、骨折端が肺を損傷して胸腔内へ空気が漏れる。胸腔内の陰圧が失われると肺は虚脱し、換気とガス交換ができなくなって呼吸困難が生じる。肺の虚脱が高度で呼吸困難を伴う気胸は胸腔ドレナージ(胸腔穿刺・胸腔ドレーン留置と持続吸引)の適応で、脱気すれば肺は再膨張し症状は速やかに改善する。血圧低下・頸静脈怒張・気管の健側偏位・患側呼吸音の消失を伴う場合は緊張性気胸であり、画像を待たずに直ちに脱気する。ドレナージ後も出血量が多い、空気漏れが持続するといった場合に開胸手術の適応を検討する。本問には図が添えられているが、判断に必要な所見(左第4・5肋骨骨折と左肺完全虚脱)は設問文に明記されている。

✓ 4. 正しい
胸腔ドレナージ
虚脱した肺を戻すには、胸腔に漏れた空気を体外へ排出するしかない。呼吸困難を伴う完全虚脱では最優先の処置であり、脱気によって換気とガス交換が回復する。
✗ 1. 誤り
外固定
肋骨骨折の疼痛緩和として胸帯などが用いられることはあるが、虚脱した肺は元に戻らない。胸郭の動きを強く制限する固定はかえって換気を妨げるため、まず気胸への対応を優先する。
✗ 2. 誤り
開胸手術
大量血胸、ドレナージ後も続く出血、気管・気管支の損傷などで検討される二次的な選択肢である。まず胸腔ドレナージを行い、その反応をみて適応を判断する。
✗ 3. 誤り
気管内挿管
本症例は意識清明で自発呼吸があり、この時点では適応にならない。脱気しないまま陽圧換気を行うと胸腔内へ漏れる空気が増え、緊張性気胸を招く危険がある。
ポイント
  • 肋骨骨折+呼吸困難+患側肺の虚脱ときたら外傷性気胸。まず胸腔ドレナージで脱気する。
  • 気胸の本態は胸腔内の陰圧が失われること。空気を抜けば肺は再膨張する。
  • 血圧低下・頸静脈怒張・気管の健側偏位・患側呼吸音消失があれば緊張性気胸。検査を待たず直ちに脱気する。
  • 脱気前の陽圧換気(気管挿管・人工呼吸)は気胸を悪化させうるので、脱気を先に行う。
  • 開胸手術は大量血胸や持続する出血・空気漏れなど、ドレナージへの反応をみて判断する。
比較表
処置この症例での位置づけ
胸腔ドレナージ肺虚脱と呼吸困難を伴う気胸の第一選択。脱気して肺を再膨張させる
外固定(胸帯など)肋骨骨折の疼痛緩和にとどまり、気胸は改善しない。強い固定は換気を妨げる
気管内挿管意識清明で自発呼吸がある本例では適応外。脱気前の陽圧換気は緊張性気胸を助長しうる
開胸手術大量血胸、持続する出血や空気漏れ、気管支損傷などでドレナージ後に検討
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